あの素晴らしい小泉まりえとティーンズハート

#自分の人生においてトップ10に入るラノベをあげてけ まとめ - Togetterまとめ というのがあったので、私も好きな作品について語っていこうと思ったら、はじめの『あたしのこと好きだよね?』だけで、そこそこ長くなったしまったので、語るのは『あたしのこと好きだよね?』だけでやめときます。<をい。

一応、好きな作品を10挙げておくと、『あたしのこと好きだよね?』『私と月につきあって』『DADDYFACE』『星くず英雄伝』『ユミナ戦記』『ROOM NO.1301』『なばかり少年探偵団』『半分の月がのぼる空』『月と貴方に花束を』『女帝・龍凰院麟音の初恋』という感じかしら。こういうオールタイムベストは、最近の作品はなかなか入れにくくて、どうしても、古い作品中心になっちゃうよね。『DADDYFACE』はいつになったら続きが出るのだろう。

で、以下、小泉まりえ『あたしのこと好きだよね?』というか、講談社X文庫ティーンズハートについて。

1990年前後、講談社X文庫ティーンズハートに代表される少女小説が文庫市場を席巻した時代がありました。ピンク色の装丁で少女マンガの可愛らしいイラストを使ったパッケージ。改行だらけで「下半分がメモ帳」と揶揄される文章。基本的に1巻読みきりで、中学生か高校生のごく普通の恋愛を描くそのストーリーもほぼ一緒。どれも似たような内容にもかかわらず月に何十冊も出て、しかも、無名の作家でも、出せば何万部も売れるような時代があったのです。

このティーンズハートのブームですが、これが、偶然ではなく、花井愛子が狙ってプロモートしたという事実が恐ろしい。ティーンズハートの出る前、1980年代の少女小説は集英社コバルト文庫が絶対的な地位を得ていました。そのコバルト文庫はSFやファンタジーもあり、文学好きのハイティーンの間で読まれていたのですが、花井愛子は自分がオリジナルの小説を出すにあたり、このコバルト文庫との競争を避けるために、本を読んだことのないローティーンを狙い、やがてティーンズハートというレーベル自体をブランド化していきます。本を読まない女の子にも手に取ってもらえるように、テーマを恋愛に絞り、イラストに人気少女漫画家・かわちゆかりを指定し、デザインにも口を出し、32ページの読みきり少女マンガのように軽く一気に読める内容。あの改行だらけの文章も、官能小説なんかも参考にしながら、漫画でページをめくるのと同じような感覚で読めることを意識したものです。

この花井愛子の狙いは非常に当たり、花井愛子は数年で2000万部を売り上げ、次々と類似のレーベルが誕生し、花井愛子を継ぐ何百人もの作家を生み出しました。小泉まりえもその中の一人で、ティーンズハートを代表する作家の一人です。小泉まりえがどんな感じの作品を書いていたかというと、小泉まりえの作品のタイトルは、そのまんま内容を表しているので、いくつかタイトルを並べると、

  • 彼を思うと涙がでるの
  • 彼の気持ち知りたいの
  • あたしを好きって本当ですか?
  • あたしを好きになって!
  • 好きになってもいいの?
  • 好きになっちゃだめ!
  • 好きになってゴメンね…
  • 大好きだけど告白できない!
  • 彼は友達の好きな人
  • 好きになった人は友達だから…
  • あの子を好きにならないで!
  • 好きって気持ち知ってるくせに!

と、まあ、登場人物の名前が違うだけで内容は同じような恋愛小説を50冊以上も出していました。

ティーンズハートの作品は一般に評価が低いと聞きますが、ただ、評価を低く見ている人は、数百人ものプロの作家が、ほぼ同じような内容で競い合っていた凄みをおそらく理解していない。小泉まりえの作品も、ほとんど同じ内容にもかかわらず、その中でも飛び抜けて光る作品があって、『あたしのこと好きだよね?』も、そういう光る作品のひとつです。『あたしのこと好きだよね?』の内容は、タイトルからわかるとおり、初めての彼氏の様子が最近おかしく、「あたしのこと好きだよね?」と不安に思う女の子の話。あらすじにしちゃうと他愛もないよくある少女漫画のような感じで、擬音語を多用した短い文章の連続も他の作品と同じはずなのだけど、この『あたしのこと好きだよね?』は、その少女の想いを綴った詩的な文が非常にせつなくハマっていて、とにかく素晴らしいです。読むと、どっきんハートがジャンプしちゃいますよっ!!

[ 2015.06.08 ]

  このエントリーをはてなブックマークに追加