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講談社 アフタヌーン新書
オタク成金 /あかほりさとる・天野由貴

かつて一時代を築いた あかほりさとる の栄光と転落の軌跡と、作家論やオタク業界への想いを綴った新書。栄光と転落の軌跡を纏めてみると、以下の通り。

  • 『タイムボカン』等の脚本をやっていた小山高生に弟子入り(1986年)
  • もともとアニメの脚本家志望だったが、企画&営業職として業界入り
  • 『アイドル伝説えり子』の企画がはじめてのアニメ関連の仕事(1987年)
  • たくさんの企画書を書いていたが、企画書では金にならないので、小説を書くことを思いつく
  • エニックスへ一般応募。ゲームブックの『ジーザス』が作家としてのデビュー作(1989年)
  • 『ガルフォース』のノベライズが成功してるのをみて、『シュラト』のノベライズを提案し成功(1989年)。
  • 『シュラト』後、積極的にノベライズ中心に活躍。特に、『ラムネ』(1990-1991年放送)で、小説、漫画、ラジオドラマと幅広く手がける
  • “三爆シリーズ”で、今までの経験を生かして、初のオリジナル&メディアミックス展開(1993年)
  • しかし、“三爆シリーズ”に続く『セイバー~』(1995-1996年放送) 後は、全て失敗し没落
  • 一応、あかほりは、長いスランプの末、『かしまし』(2006年放送)で復活したとの認識している
  • 今までの累計の売上は、150冊、2,200万部

やはり、作家としてよりも、メディアミックスの売り方を確立した手腕と、その企画力がずば抜けて凄いよなぁ。……それにしても、『かしまし』は蛇足なんだけど、“三爆シリーズ”&『セイバー』で天下を取ったあと、ぱったり人気がなくなった悩みについても、多少なりと本人から語られているのが、非常に興味深かったです。

そして、本書の後半はラノベ&オタク業界へに対して危惧を語る流れへ。あかほりの主張を、私的に纏めてみると、以下の通り。

  • ラノベは本を読まない人にも読みやすいのが特徴だったのに、今は普通の小説になってしまった。本なんて40人中5人しか読まないようなものなので、普通の小説になったら売れるわけがない
  • それでも以前は、アニメ化すればそれが宣伝になってまだ売れたが、深夜アニメ中心になってからは宣伝効果も薄くなり売れなくなってしまった
  • そもそも深夜アニメ自体が不振。漫画雑誌も売れず、ネットもオタクの中で閉じているので、新しくオタクコンテンツへ入る人が少なくなっている
  • 最近のラノベは、アイデア重視な作品が多い。アイデア重視だとエンタメ的に肝心なキャラが弱くなってしまい、また、作家生命も短くなり、先行きがない
  • 今は、人気作家でも年収600万程度。この年収だと、オタク以外の作家志望者が現れず、業界は縮小する一方

つまりは、「オタク向けだとジリ貧なので、これからは一般人にも訴求するような努力をしなければいけない」という話になっていくんだけど、そもそも、あかほりの「売れている」とみなす基準がやたら高くて、90年代と比べれば、そりゃ、衰退してるようにも見えるだけだよなぁ。

[ 2009.05.12 ]