好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! - 2017年2月


2017 2 1

ライトノベルは中学生の読み物みたいに言う人がいますが、調べてみると、出版社側が中学生を対象読者に入れることってあまりないです。基本的にターゲットは高校生以上としてる場合が多い。つまり、中学生から見るとライトノベルって「お兄さんお姉さんの読む本」、場合によっては「おじさんおばさんの本」となるわけです。

もちろん、時代やレーベルによって狙うターゲットは異なります。それぞれの年代の代表的なレーベルが、その当時どういう年齢層をターゲットにしてたかをざっくり書くと以下の通り。

  • 1980年代 ソノラマ文庫: 高校生
  • 1990年代 富士見ファンタジア文庫: 小学生高学年~高校生
  • 2000年代 電撃文庫: 高校生、大学生
  • 2010年代 なろう系: 30代以上

電撃文庫は、少なくても2000年代の初めの頃には、高校生や大学生をメインターゲットとしてる旨の記載がみつかります。最近のなろう系、特に四六版などの単行本を扱っているレーベルでは、ターゲットは30代や大人であると謳ってることが多いです。いや、20代社会人をターゲットにしているライト文芸でさえ「高いと買ってくれない」と安い文庫サイズにしてるのに、なろう系は単行本ですよ、単行本。30代だったら主任か課長ぐらいにはなっていて金も持ってるだろうと、余裕で1,000円越えの価格設定。10冊買うと、軽く1万円を超えますよっ。それでもきちんとビジネスとして成功しているので、既存の文庫レーベルまで、次々と文庫よりも単価の高いノベルズや単行本に参入しているのが、最近のライトノベルの状況です。

ただ、1980年代後半から1990年代にかけては、富士見ファンタジア文庫に限らず様々なレーベルが、中学生どころか小学生高学年までターゲットにいれる時代がありました。花井愛子やあかほりさとるの著作でも述べられていますが、戦略的に読書初心者を狙った、漫画のように読める軽い小説が登場し、それにより、読書に興味がなかった高校生だけでなく、中学生や小学生高学年まで広く読まれるようになります。「ライトノベル」という呼び名がパソコン通信「NIFTY-Serve」で生まれたのもちょうどこの頃です。しかし、1990年代後半にはそのブームも落ち着き、そうすると、年々読者の年齢は上昇、それに伴い出版社側も想定するターゲット層を試行錯誤しながら上げていって今に至るという形です。

ちなみに、今、「ライトノベル」と呼ばれているのも、この読者の年齢上昇によるものです。「ライトノベル」という名称が広く定着したのは2000年代前半。それまでは、「ヤングアダルト小説」「ジュブナイル小説」「ジュニア小説」「ティーンズノベル」と主に10代向けの小説を意味する名前で呼ばれていたのですが、読者層の上昇に伴いこれらの10代向けを表す呼び方は廃れ、少しづつ「ライトノベル」という名前を聞く機会が増えていきました。当時いろいろあった呼び方の中で「ライトノベル」だけが唯一年齢層を表さない呼び方だったんですよね。そして、2004年に日経から刊行された『ライトノベル完全読本』がおそらく決定打となって、「ライトノベル」という名称が広く世の中に認知されることになります。

読者の年齢が上昇したので「ライトノベル」と呼ばれるようになったのに、いまだに「ライトノベルは中学生の読み物」という人がいるのは不思議です。それだけ、1990年代前半の『スレイヤーズ』やあかほりさとるが活躍した時代の印象が強いということだと思いますが。

[ ライトノベルは中学生ではなくおじさんおばさんの本 ]


2017 2 4

小学館 ガガガ文庫
やがて恋するヴィヴィ・レイン 2 /犬村小六

皇帝の私生児ジェミニ、登場。ルカの子供の頃の兄貴分だったジェミニとの運命の再開、ジェミニの策略でルカが反体制派の首謀者に担ぎ出されるという展開なんだけど、うーん、犬村小六らしいあざとさが感じられず、むしろ行き当たりばったりな感じ。一巻の期待度に比べると、がっかり感が強いなー。

まあ、この二巻は、まだまだ、今後の物語に向けての仕込みという感じで、物語的に物足りないのは仕方ないか。早く、一巻を読んだときに期待した、ルカとファニアの悲劇とそれを乗り越える展開が読みたいのだけど<をい、むちゃくちゃ寄り道する気満々の構成だよな。そもそもアステルのカウントダウンまで残り7年もあるし、どんだけ長編シリーズを想定してるのよ。

[ やがて恋するヴィヴィ・レイン ]


2017 2 17

KADOKAWA 富士見ファンタジア文庫
織田信奈の野望 全国版17 /春日みかげ

十兵衛ちゃんのシーンは、思わず泣きそうになるほど感動的だったけれど、でも、雑すぎる~。えっと、明智光秀の裏切りをどう回避するかが、このシリーズの最大の見せ場になるのかと思ったのだけど、あまりにちょっと雑すぎるだろぉぉっっっ!!

いや、本能寺の変を回避したと思ったら、その十兵衛ちゃんが、関ケ原での小早川秀秋役を演じるというまさかの展開に、ただただ素晴らしいと感心しきりだったのだけど、……おい、ちゃんと行けよ、松尾山。ここまで舞台を整えてからスルーするとか、正直、ありえない。バカなの?

そもそも、富士見ファンタジア文庫に移籍してからというもの、どうにもクオリティの低下が酷い。エピソードの取捨選択や重要度を考えずに、何でも描こうとしてシーンの緩急も強弱もないし、期待度だけ高めて、結局、グダグダな展開も多いんだよなぁ。今巻だって、途中までは、織田信奈最大のピンチ、相良良晴絶体絶命みたいな展開かと思わせておいて、なんかなし崩し的に、いつの間にか武田側が悲壮感漂う状況になっちゃってて、良晴が敵将をどうにかして救おうと画策する展開。せっかくのオールスター武将勢ぞろいでの夢の関ケ原の合戦が、こんなんで盛り上がると思うの? バカなの?

いよいよシリーズもクライマックスで、舞台は最高に整ってるんだから、ぜひとも素晴らしい物語を魅せてほしいなぁ。

[ 織田信奈の野望 ]


2017 2 19

KADOKAWA 電撃文庫
魔法科高校の劣等生(21) 動乱の序章編<上> /佐島勤

タイトルにあるように序章も序章。まだ物語はぜんぜん動いてない。達也と深雪は三年生になり最高学年での学園生活がはじまる一方、国際情勢に動きが……。と、今度の敵は、昭和世代には懐かしいソ連か。一応、達也にも対応が難しい敵のような描写がみられるけど、どうせ戦えば瞬殺だ。<をい

まあ、新ソ連はともかく、反魔法主義に関する動きは、うーん、チープな展開で今後についても不安しかない。正直、この作品はリアリティレベルが低くて、少なくても作者が考えてるほど高くなくて、こういう政治的な駆け引きが絡む展開は、あんまり期待できないんだよなぁ。なにか間違って深雪アイドル化計画のような展開になったら脱帽するしかないけどさー。あと、新キャラの詩奈と待郎というか、つかささんのほうは、むしろ、いかにも『魔法科高校の劣等生』らしい展開になりそうで、そちらは凄く楽しみすぎるなっ!!

[ 魔法科高校の劣等生 ]


2017 2 21

SBクリエイティブ GA文庫
りゅうおうのおしごと! 5 /白鳥士郎

最高傑作。最強の名人を挑戦者に迎えての竜王防衛戦。挫折、そして周りの人々に支えられての復活と、もう、ベタすぎるほどベタな熱い展開なのだけど、だからこそ、完成度も高く、めちゃくちゃ素晴らしいっっっ!! もう、すべてを出し切った最終巻に相応しい熱い物語に仕上がって、って、続くんかいっ!!

ハワイでの対局からはじまる竜王戦七番勝負。神とも呼ばれる名人との闘いで、八一は追い込まれていく……。と、なんという熱量っ、素晴らしい素晴らしい。精神的に追い詰められていく八一。あいと天衣、桂香さんのマイナビ本戦一回戦。そして、運命の第四局。桂香さんの対局、八一を想う優しさも素晴らしいのだけど、やはり熱いのは第四局。いかにもラストバトルといった風の互いに最善手をつないでいく究極の闘い。すげぇぇぇぇぇっっっ!! 第四局での あい も素晴らしかったのだけど、死闘のあとの余韻を感じさせるラストの構成と演出も、また、素晴らしい。私、[漫画]『修羅の門』が好きなんですが、その『修羅の門』のラストを感じさせる構成で、こういうのマジたまらんな。伝説はまだ終わらない……。

八一に関しては、物語としてはすべて書ききっていて、あとがきを読むとここで完結の予定だったみたいだけど、どう続けるつもりだ? 「あいと天衣」とか、タイトルと主役交代でもしないと、なかなか続けるの難しいように思えるのだけど。今回、姉弟子は割を食った感じなので、銀子にもうちょっと華を持たせてほしいところ。あとは、鵠さんに期待。

[ りゅうおうのおしごと! ]


サイトをスマホ対応してみました。いや、以前からスマホ対応はしていたのだけど、Googleが推奨する対応方法に近づけてみたり。12月ぐらいから、なぜか「あなたのページはモバイルフレンドリーではありません」と Google検索で警告が出るようになってたんすよね。Googleのモバイルフレンドリーテストではきちんと合格点をもらえてるにもかかわらず。わけがわからん。

で、Googleの推奨と違ってた部分、具体的には、viewportを 固定幅 → width=device-width、mediaクエリーを max-device-width → max-width に変更。「width=device-width」を指定すると、ちゃんとスマホ用に見た目も調整する必要があって、めんどくさいことこの上ない。そもそも、viewportで「width=device-width」を指定しろって話なら、viewportなんて仕様は作らずにブラウザの標準動作をそうしろって話ですよ。誰だ、ここら辺の仕様を作った奴はっ!!! ……なので、スマホで見ると、以前と多少見た目が変わってます。所々、おかしいところもあるかも。


2017 2 22

KADOKAWA 富士見ファンタジア文庫
ラノベのプロ! 年収2500万円のアニメ化ラノベ作家 /望公太

「メインヒロインが眼鏡だと売れないから、外しましょう」 うーん。

タイトル通り、アニメ化ラノベ作家の日常を描いた作品なのだけど、微妙。ネタ重視の作品で、確かに、ラノベネタは満載なんだけど、そのネタをストーリーに絡ませているわけではないので、ネタに深みも広がりもなくて面白味に欠ける。日常系なのでストーリーが薄いのも仕方ないのだけど、そうは言ったって、もうちょっとフックや作品を牽引するなにかは欲しいし、肝心の日常パートもそこまで面白いわけではないので、なんだかなー。

設定や内容を見ると、平坂読の『妹さえいればいい。』と似ているので、つい比較したくなるのだけど、『妹さえいればいい。』に比べ、ぶっちゃけ勝ってる要素がなにもない。後発でこれはさすがにつらいなー。なぜ、編集部はこれでGoしたのか疑問に感じるレベル。ラストの展開とかは好きなんだけど、ラノベ業界モノではなく、ラブコメとして勝負すべきだったんじゃね?

[ ラノベのプロ! ]


2017 2 25

KADOKAWA スニーカー文庫
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #EX /枯野瑛

短編集。6編収録されているけど、その中でそこそこ長いのは、リーリァの『亡国の姫勇者』とクトリの『青空の黄金妖精』か。

クトリのほうはいつものクトリなんだけど、本編ではあまり書かれなかった、在りし日のリーリァを描いた短編のほうは、まだ、大人になりきってないヴィレムが登場したりして楽しい。や、ヴィレム15歳、リーリァ14歳かよっ。リーリァの淡い想いを丁寧に描いているのだけど、そこがやっぱり素晴らしいな。滅びる前の世界での正規/準勇者の扱いに関する描写も楽しい。そりゃ、そこまで規格外だと、そういう扱いになるわなー。

[ 終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? ]


2017 2 26

KADOKAWA MF文庫J
ゼロの使い魔22 ゼロの神話 /ヤマグチノボル

『ゼロ魔』完結っ!! 大団円っっっ!! いやぁ~、ほんとに綺麗に終わった。作者が亡くなり未完のままになると思われた作品が、こうやって完結したことは、作者も作品もほんとに愛されていたのだと思う。そんな優しい想いがにじみ出るような最終巻で、ただただ素晴らしいっ!!

六千年前の真実と繰り返されようとする悲劇。リーヴスラシルのルーンに生命を蝕まれ死期が迫る中、教皇の企てを止めようとする才人。しかし、たとえ才人の意図に反しようとも、才人を救おうとルイズは……。と、明かされる六千年前、始祖ブリミルと使い魔サーシャの悲劇。死が迫る才人。アンリエッタやルイズの葛藤。何も聞かずに寄り添うシエスタ。いやぁ、今までの展開を収束させた、きちんと綺麗な最終巻に仕立ててるなっ。素晴らしいっ!!

正直言えば、この最終巻はちょっと駆け足で、もっとページをかけてルイズと才人のいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃを描くべきだったと思うのだけど、そこはむしろ同人誌とかに期待するところか。<をい。とにかく、綺麗なラストに、ありがとうございました。

[ ゼロの使い魔 ]


2017 2 27

KADOKAWA 電撃文庫
ソードアート・オンライン19 ムーン・クレイドル /川原礫

やりたい放題すぎるだろっっっ!!

この「ムーン・クレイドル」は、アリシゼーション編の後日談なのか。アンダーワールドに閉じ込められたキリトとアスナの200年の一部を語るような物語だと思うのだけど、キリト先輩が自由にめちゃくちゃ楽しみまくって、生き生きしすぎっ。一応、閉じ込められて悲劇的な状況のハズなのだけど、キリトはこのままアンダーワールドにいたほうが、絶対幸せだろっ。そして、心意技を自由自在に使いまくっていて、『アクセル・ワールド』で培ってきた心意技のイメージが崩壊しそうな勢いなんですがっ。なんか、いろいろヤベー。

物語のほうも、システム的に不可能なハズの殺人事件の謎を追うという展開で、なにもかもが自由な内容だよな。そして、キリトに恋心を抱くロニエ視点で紡がれてるのが、たまらく素晴らしい。いやー、こんなに楽しいのに、この後日談は次巻で終わりなのか。番外編的な内容なので仕方ないとはいえ、もったいないなー。200年分もネタがあるのだから、いくらでも話を作れると思うのだけど。<をい

[ ソードアート・オンライン ]


2017 2 28

来月の新刊チェック。ライトノベル発売日一覧 から。
  • 03/14 [文庫] ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeリュー /大森藤ノ
  • 03/18 [文庫] ゲーマーズ!7 ゲーマーズと口づけデッドエンド /葵せきな
最近、読書量自体が減ってるのだけど、それにしたって追ってるシリーズ自体が少なくなってる……。