キマイラ吼シリーズ


朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ9 玄象変 /夢枕獏

『スレイヤーズ』が1990年代を代表するライトノベルだとすれば、この『キマイラ・吼』は1980年代を代表するそれです。先日、『スレイヤーズ』を一気読みした際に、『キマイラ・吼』を調べてみたら、未読の巻が三冊も出てるのに気づいた(汗;。いや、ソノラマ文庫で出てた時はちゃんとチェックしてたのだけど、ソノラマ文庫がなくなってからは、よくわからなくなってたのよね。

で、この『キマイラ9』、ソノラマ文庫で数えると17冊目になるんですが、ああ、玄造のおっさんが、まだ、昔語りをしてるのか。いままで敵と思っていた久鬼玄造が、実は大鳳の伯父であり、ずっとキマイラの謎を追っていたと九十九と吐月に語る話の途中。玄造が過去を回想する中で、さらに、その過去の中で手に入れた手記をその手記の書き手の視点で描くという入れ子の構成になっていて、どうにもややこしい。こんなことを13巻ぐらいからずっとやってるんだぜ……。

その昔語りも、玄造が、そして玄造の妹で麗一と大鳳の母にあたる智恵子が、梶井の夢を引き継ぎ、西域に向かうところで話は終わる。長かった、とにかく長い昔語りだった……。

そして、物語は現代へ。麗一の居場所がわかり、一行は、南アルプスへ向かう。おおう、龍王院弘がでてきたぁぁぁぁっっっ!! いや、龍王院弘は好きだな。研ぎ澄まされた美しさがある。まあ、復活前なので、ボロボロでいまは美しさもなにもないのだけど(^^;。で、いよいよ、キマイラ化した久鬼麗一が、九十九、玄造、典善、吐月、そして菊地の前へ。ようやく動き始めた物語に、続きも楽しみすぎるなっ!!

[ 2015.11.26 ]


朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ10 鬼骨変 /夢枕獏

菊地ぃぃぃぃぃぃぃっっっ!! うわぁ、そこでそういう絡み方をするかぁ~。もともと、チンピラAにすぎなかった菊地が、ここまで魅力的なキャラになるとはなぁ。素晴らしい。そして、深雪は、相変わらず、そういう役どころなのか(^^;。で、あの九十九が、役立たずになりはててて、情けなさすぎる……。

やっと、物語の舞台は現代へ。南アルプスでの久鬼麗一との鮮烈な遭遇。そして、それから一か月半……。という感じで、麗一の変貌を目の当たりにし、九十九、菊地、龍王院弘は、それぞれに想い、そして、玄造とは別にキマイラの秘密を追うフリードリッヒ・ボックの一味が動き始めるという展開なのだけど、やっぱ、この巻は、菊地だよなぁ。人間の負の感情を煮詰めたようなキャラで今までも強烈な印象を与えてきた菊地だけど、ここで、こういう風に魅せてくるとは思わなかった。ほんと凄い。それと対照的に、あの魅力に満ち満ちていた九十九の情けなさたるや。まあ、その情けなさがあるからこそ、ラストのページが生きてくるのだけどなっ!! なんやかんやで、九十九もまだ高校生だもんなぁ。

そして、深雪はそういう役どころとはいえ、不憫で仕方ない(笑)。……そういえば、主人公の大鳳はさっぱり出番もなく、まったく存在感もないのだけど、そろそろ次巻で出てきますかね?

[ 2015.12.01 ]


朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ11 明王変 /夢枕獏

まっ、また過去語りだと……。

ボックに攫われた深雪と菊地を軸に物語が展開するかと思いきや、今度は、久々に戻ってきた真壁雲斎が、キマイラの秘密を語りはじめちゃったよ……。いや、秘密は秘密でストーリー上、重要なんだろうけど、やっと現代に戻ってきたと思ったのに、すぐにまた過去の話をはじめなくても。今度の過去話も、まだまだ結末が見えないのだけど、どんだけ続けるつもりだ? 深雪、放置プレイ。

しかし、あとがき。史実のほうが変化したので、当初想定していたラストシーンが書けなくなったって、どういうこと!? スタートから30年以上経っているとはいえ、ううむ。あと、あと数巻で完結させるような言いようなのも衝撃だなぁ。生きている間、永遠と書き続けるつもりなのかと思ってた。……でも、あと数巻で完結といいつつ、いきなり長そうな過去話が始まったのは、いったいどういう。

[ 2015.12.03 ]


朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ12 曼荼羅変 /夢枕獏

いつの時代のヤンキー高校だよっっっ!!(笑)

いや、『キマイラ』の時代設定的に正しいのか? 高校に入学した久鬼麗一は、九十九三蔵と出会い、やがて学園を支配する「もののふかい」との対決に巻き込まれていく。と、学園にボスがいる時代、すごく昭和の匂いを感じさせる展開すぎるっ!! 1980年代に始まったシリーズで過去を振り返る内容なので、まあ、時代錯誤的な展開も正しいか。これはこれで、めちゃくちゃ面白いんだけど、いやー、今の時代にこの展開を描いてしまうのは、とにかくすげーな。

しかし、残り数冊で完結予定という状況で、またしも過去話とか、いったい……。内容的にも、『キマイラ』の名前を冠しなくても、これだけで読み切り短編として成立しそうな物語で、どうにもおかしい。えっと、どういう経緯で過去話になったんだっけか? キマイラの秘密は関係なく、ふつうに久鬼麗一と阿久津元の青春ストーリーになっているんですが。あとがきによると、次巻で現在に戻るらしいのだけど、ほんとかよ?

[ 2017.03.07 ]


朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ13 堕天使変 /夢枕獏

1995年が舞台だったのか……。作中で、1995年の話だから高校生は携帯電話を持ってないよ、みたいな言及があるのだけど、どう読んでも昭和の雰囲気しかないよ(笑)。いや、1982年にスタートしたシリーズで、スタート時には近未来っぽさは全くなかったと思うのだけど、マジか、マジにこの古臭い物語を1995年のつもりで書いていたのか。正直、突っ込みどころ有りまくりだよ。

それはともかく、ようやく過去編が終わったぁぁぁぁぁぁっっっ。ここ7~8冊は昔語りばかりしてたのだけど、ようやく久々にストーリーが動いたよ。菊地ぃぃぃぃぃぃぃっっっ!! ほんと菊池はシリーズ通して化けたキャラだよな。というか、主人公の大鳳の存在感が薄すぎるんだよ。今回、めちゃくちゃ久しぶりに大鳳に出番が回ってきたけど、菊池や九十九三蔵に比べてキャラが弱すぎる……。あと、乱蔵を出したら、すべて乱蔵に持ってかれるので、絶対、アレは出しちゃダメだったと思う。

まあ、ようやく物語が動いて、いよいよクライマックスな雰囲気を醸し出してきたけど、ほんとか、ほんとにこのままラストまで行くのか? うん、信じられねぇ(^^;。

[ 2019.01.03 ]


朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ14 望郷変 /夢枕獏

ひろしぃぃぃっっっっ!! いや、龍王院弘ですよ、龍王院弘。この龍王院弘が、めちゃくちゃ好きなんですよ。龍王院弘に、菊地に、九十九と、私の好きなキャラクターたちが伊豆に集結して、いよいよクライマックスっっっ!! ……って、もしかして、ここでまた、過去に話が飛ぶのかorz。

昭和を代表するライトノベルシリーズが、令和になっても最新刊が無事刊行。と、それはともかく、遠大なキマイラの謎に迫ろうと思ったら、赤須子の生涯を語らざるを得ないんだろうけれど、うーん、さすがに現代に蘇ってきたりはしないよな? や、キマイラの壮大すぎる歴史に比べると、ただでさえ影の薄い主人公が、ますます存在感が薄くなりそうで、心配でなりません。もともと「キマイラ吼」というシリーズ名だったはずなのに、いつのまにかシリーズ名から「吼」の文字がなくなっちゃてるし、主人公・大鳳吼さんの今後のご活躍に期待しています。

[ 2019.06.10 ]


朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ15 魔宮変 /夢枕獏

……俺たちの菊地がなんか雰囲気変わってしまい、これじゃない感(T-T)。

それはともかくうわぁぁぁぁぁぁ、マジにいよいよクライマックスぅぅぅぅぅっっっ!! ルシフェル教団に捕らわれた織部深雪を救うため、久鬼麗一が、亜室由魅が、真壁雲斎が、宇名月典善が、久鬼玄造が、菊地良二が、龍王院弘が、九十九三蔵が、そして大鳳吼が、決戦の地・伊豆天城岳高原カントリークラブへ集結っっっ!! むちゃくちゃ盛り上がってまいりましたぁぁぁぁっっっ!! すげーすげー、とにかくすげぇぇぇぇぇっ!!

1982年にスタートした本シリーズも、約40年の時を経て、とうとうここまで来たか。あとがきによると、夢枕獏も六十九歳で“徹夜が前ほどできなくなってきている”とのことだけど、……いやそれ、六十九歳の悩みじゃないだろ(^^;。

[ 2020.08.15 ]