クレイジーカンガルーの夏


ソフトバンククリエイティブ GA文庫
クレイジーカンガルーの夏 /誼 阿古

その題材と文体、そしてなにより、その雰囲気で、いったい誰をターゲットとした作品だよっ!! ぜったい中高生向けじゃないし、そもそもライトノベルですらねぇ~~。や、40歳前後のごく少数の人なら大絶賛だろうケド、それ以外の大多数の人からはゴミ扱いされるような内容で、よくこんな作品をライトノベルのレーベルから出したなぁん。

1979年。『ヤマト』や『マジンガーZ』の記憶が残る中、『ガンダム』が放映された時代。『アニメージュ』に続き『OUT』が創刊された時代。『マカロニほうれん荘』や『サーキットの狼』が流行っていた時代。サザンの「いとしのエリー」が流れ、YMOが出始めた時代。そんな時代を背景に大阪郊外の田舎を舞台にした、少年期のジョブナイル。ネタは当然、文体や話の作りをはじめ、作品を構成するすべての要素がノスタルジーを喚起させる内容になってるのんな。40歳ぐらいの人が大喜びして大絶賛する様が目に浮かぶんだけど、あまりにターゲットが狭すぎです。30代半ばの私でたぶんギリギリ、ちょっちツライぐらい。もう2歳3歳下がると、当時を想わせる絶妙なこの肌感覚は、ほとんど感じ取れないんじゃないかしらん? そして、その肌感覚が感じ取れなければ、ハッキリ駄作としか思えない作品だと思うんですけどぉ~。

しかし、ここまで肌感覚というかスピリットを表現してるのに、わりとネタの時代感覚が怪しいのはどういうことなんだろ? 実際、ググって調べたとあとがきには書いてあるのだけど、その程度の知識でこの感覚が描けるって、正直、ありえないと思うんですが。

[ 2007.03.16 ]