腐女子化する世界


中央公論新社 中公新書ラクレ
腐女子化する世界 東池袋のオタク女子たち /杉浦由美子

おもしろい。なんやかんやで、腐女子やBLの世界は近くて遠い未知の世界だからねぇ。ただ、作者の人が訴えたかったのは、腐女子の生態ではなく、あくまで格差社会についてなので、そこら辺は注意すべきだった予感。<や、腐女子はあくまで話の取っ掛かりであって、途中からは完全に格差社会への言及が中心になるのよん

そゆわけで、腐女子の特徴を解説し、その腐女子の広がる社会的背景について言及した内容。やはり、日頃興味はあるけど知らない世界なので、非常に興味深くおもしろかったです。ただ、書かれてることが、正直、どこまで信用できるかは疑問なんだよね。「誰々さんは○○と言ってるけど事実は××」という感じで話が進むことが多いんだけど、ほとんど根拠が示されてないのよ。「事実」と「私はそう思う」との間に区別がついてないというかなんというか(^^;。

簡単に気になったところをメモ。

  • ボーイズラブのメインターゲットは30歳代前半の女性
  • 市場規模は年間120億円
  • なぜ池袋か?というと、池袋は大人の女性に遊びやすい街であるため
  • 腐女子は、オシャレも恋愛も普通にする大人の女性が多い
  • コミュニケーション能力も高く、むしろ、腐女子にとっての漫画は、コミュニケーションツールとして広がった経緯がある
  • ボーイズラブは一定数は売れるが、それ以上超えて売れることはあまりない
  • 腐女子の求める物語は、「感情移入できない」「ありえない設定」「お約束のハッピーエンド」
  • 女性は一途で、一度ファンになると、ずっと買いつづける
  • 男女の「萌え」の違いは、自分が介在するか否か。つまり、男性だと「川名みさきは俺の嫁」という妄想はありだが女性ではありえない。逆に、女性は「読売新聞が攻で朝日新聞が受」のような自分の介在しない妄想を好む
  • 男オタクは、女性に幻想を持ってるがゆえに現実の女性ではなく妄想の女性に逃げるが、腐女子はそもそも幻想を持っていない
  • 『負け犬の遠吠え』のようなキャリアvs家庭という構図は、「バブル時代」の女性にのみ成り立つのであって、就職氷河期以降では、そもそもキャリア女性が存在しない。東大卒でも一般職でないと就職できなかった
  • 総合職と一般職の格差だけでなく、正規雇用と非正規雇用の格差も発生し、格差は拡大している
  • 結婚しても生活のために働きつづけないといけない時代
  • 「好きを仕事に」の欺瞞。格差から目をそらす意図で「好きを仕事に」という話も流行ったが、「優秀でも手取りで20万円」なアニメーターと年収1,000万円以上の元請け企業の格差は絶望的
  • 勝ち組であっても現実逃避する世界

つまり、格差が激しくなり、より厳しくなった現実のため、現実逃避が盛んになる。その逃避の健全な手段として、腐女子化(自分が介在しない現実から隔離した妄想に浸ることに特徴のある)が拡大しているという論旨なのだけど、大変だなぁ。

[ 2006.11.01 ]