ネットvs.リアルの衝突


文藝春秋 文春新書
ネットvs.リアルの衝突 誰がウェブ2.0を制するか /佐々木俊尚

新書のわりにはそれなりに読み応えがあって面白かったです。ただ、Winnyネタとそれ以外との間で統一感が弱くて、一冊の本で語るには無理がある風に感じたり。や、素直に、Winnyネタで一冊にした方が良かったんじゃ(^^;。

P2Pの理想を具現化し既存の著作権に革命を起こすことを目的としていたはずの Winny なのに、裁判での金子被告は、はじめから理想など存在しなかったかのように沈黙し、ただ「無実です」と繰り返すのみ。彼は堕落したっ!! 思えば、理想に溢れていたはずのネット文化の30年は、リアルの国家戦略や企業活動に翻弄され変質していった歴史である。しかし、ネットがリアルに影響を持ち始めた Web2.0の時代を迎え、再び理想は復活するのか!? ……といった感じの内容かしらん?

Winnyネタもそれ以外のネタもそれぞれに面白かったのだけど、やっぱり、一冊に纏められちゃったのが残念だったなー。や、Winnyの開発へ到る背景や日本のネット犯罪への捜査の実情の話と、屈辱のTRONの話やドメイン名を巡る中国の国家戦略の話とかは、そもそも興味のベクトルが違うと思うのよね。まあ、個別のネタだと、「加藤の乱」とかあって大笑い。……やっぱり力が入っていたのは Winnyネタで、判決が出たばかりで時期的にも旬なので、そこら辺に興味があればオススメということで。

[ 2006.12.20 ]