魔王討伐! 俺、英雄…だったはずなのに!?


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
魔王討伐! 俺、英雄…だったはずなのに!? /遊馬足掻

第3回『このライトノベルがすごい!』大賞、栗山千明賞。ファンタジー世界を舞台にしたギャグ作品。こういう作品って、おまけ的な番外編とか習作みたいな感じでなら、よく見かける内容だと思うのだけど、それを一本通してやり切ったのが珍しく、それが栗山千明賞の理由なのかしらん。ただ、本来、短編でやるようなネタなので、やっぱり長い。そして、無駄に間延びさせてる印象なんだよなぁ。

いや、規格外に強すぎる残念な主人公、という着想はいいのだけど、そこで、ギャグに徹しきれず、変に普通のファンタジーっぽくしようとしてしまったのが敗因なんだろうなぁ。このネタだったら、ストーリーは要らないし、説明的な描写は、もっとざっくりで良かったんじゃね? ルーチェとの会話を主体にした日常系っぽい、一編をもっと短くした連作短編に徹してくれれば良かったのに。

[ 2012.10.22 ]


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
魔王討伐! 俺、英雄…だったはずなのに!? 2 /遊馬足掻

弱くなりたい最強英雄、というこの作品のコアのテーマが、むしろ全てを台無しにしてる気がするなぁ。この作者の作風的に、ギャグ的な設定は、やっぱ、あってないんじゃないかなー。文章は読みやすいし、キャラの掛け合いも悪くはないんだけど、ベースの設定で失敗してる予感ががが。

いや、決してつまらないわけではないのだけど、こー、レベルダウンを目指す最強勇者というメインの設定が際立ってるのに、悪い意味で“フツー”なので、物凄く平凡で凡庸な部分が強調されちゃってるのよ。特徴に乏しい作風なので、ちょっと変わったネタで勝負してきたんだろうケド、作風とネタのギャップが大きすぎて、ほとんどまともに料理できてない。この作者、良くも悪くも、フツーなのが持ち味だと思うので、あんまし変わったことをやらんほうが良かったような気がするのだけど……。

[ 2013.03.25 ]