彩雲国物語


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 はじまりの風は紅く /雪乃紗衣

素晴らしいっ!! アニメ化した中華風ファンタジーな人気シリーズの1冊目。さくさく読める文章と魅力あるキャラクター、そして、次々にイベントが発生していく展開で、とにかく面白い。ストーリー構成や設定も、きちんと作られていて、非常に好感触。各地で人気があるのも、なるほどな内容だっ!!

そゆわけで、名家の生まれにも関わらず非常に貧乏な少女が、高額報酬に目が眩み、期間限定で「バカ王様」に嫁ぐことになる、という内容。とにかく軽快でさくさく読める文章で、それでいてストーリーは恋あり陰謀あり、笑いも涙もバランスよく散りばめられて、非常によく出来た内容。まあ、ビーンズ文庫で少女向けということで、ヒロインを取り巻くカッコイイ男たち、みたいなキャラ配置になっているのは多少残念ではあるけれど、ほんとに読んでて面白いわぁ~~。いやぁ、今まで読んでなかったのは、とにかくもったいなかったです。ていうか、既刊、もう10冊も出てますかっ。

[ 2006.05.10 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 黄金の約束 /雪乃紗衣

シリーズ第2巻は、秀麗の周りにさらにカッコイイ男たちがっ、という内容なのだけど(<ちげー)、1巻同様、読みやすい文章と先々が気になり惹きつけられる展開で、いやぁ~、素晴らしい。ただ、恋愛色が弱めになってるのは、好み的にはちと残念かしらん。劉輝の秀麗へのアタックは、完全にギャグになってしまってるのですが(^^;。や、今後も恋愛ストーリーというより、秀麗のお仕事生活の方に軸足が置かれていくのかしらん?

[ 2006.06.03 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 花は紫宮に咲く /雪乃紗衣

カタルシス~~。や、シリーズ3冊目は、晴れて官吏になった秀麗は新人研修へ。しかし、想像以上のシゴキやイジメで泣きたくなる日々……、という、前半はストレスがたまるイベントの数々ながらも、ぐいぐいと引き込まれる展開で、そして、ラストのカタルシス。というか紅家すごすぎっ!! や、キャラの魅力も相変わらずで、たまらなくいいねぇ~~。しかし、おいっ、次はそういう展開かいっ!! どうなるんだぁ~~。……とにかく、非常に面白く、続きも楽しみです。

[ 2006.06.07 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 想いは遙かなる茶都へ /雪乃紗衣

シリーズ4冊目、茶州前編。秀麗と影月は赴任先の茶州へ向かうが、道中、茶州入りを阻もうとする茶家の魔の手が……、といった話。や、わざわざ王都から遠く離れた茶州に赴任させてどーするよ?と思ったら、なんちゅー新キャラ&どーいう恋愛模様だよっ。あははははーーーっ!! ついでに、影月x香鈴のカップリングもなかなか楽しい。……ただ、やっぱり劉輝から離れてしまったは残念なのと、ストーリー展開はさすがにちょっと無理あるよね(^^;。

[ 2006.06.08 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 漆黒の月の宴 /雪乃紗衣

うひー、香鈴さいこーーっ!! というのは置いといて、シリーズ5冊目、茶州後編。 いやぁ、2巻にわたる茶州編のラストは感動でした。ただ、もったいないと思うけど(^^;。あと、ちょっと全体にちぐはぐな印象かしら。いや、どうせならもっと徹底して陰鬱でもいいと思うんだけどなー。……とにもかくにも、ラストまで、読者をぐいぐいとストーリーに引き込む力量は、さすがです。もう、面白すぎます。しかも、このラストで、次はどうするんだーーーっ!!

[ 2006.06.09 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 朱にまじわれば紅 /雪乃紗衣

外伝&短編集。1巻直前の城内を舞台にした「幽霊退治大作戦!」、秀麗と影月の出会いを描いた「会試直前大騒動!」、官吏になる直前の「お見舞戦線異常あり?」と「薔薇姫」。「お見舞戦線異常あり?」と「薔薇姫」の劉輝の想いを描いた部分は必見。いや、前半二編は普通に外伝&短編なので、正直、物足りなさを感じていたのだけど、後半は、本編ではあまり見せない劉輝と秀麗の相手への真摯な想いが描写されていて、なかなか良かったです。劉輝はエロエロだしなっ!! <をい

[ 2006.07.08 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 欠けゆく白銀の砂時計 /雪乃紗衣

うわぁ~、どれだけネタを仕込みますかっ!! いや、読者に情報を提示する順番&タイミングがすごく絶妙、天才的。ほんと、秀麗も影月も凄いことになってるなぁ~~~。……そゆわけで、『彩雲国物語』は、影月編がスタート。茶州の混乱を治め、一人前の官吏になりつつある影月と秀麗。しかし、秀麗の縁談を巡って様々な思惑が顕在化していく一方、影月は密かに少しずつ闇に蝕まれていく。ネタの仕込みがとにかく巧いんだけど、それにしても、凄い展開だなぁ。いったい、続きはどうなるんだぁ~~。

[ 2006.08.09 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 心は藍よりも深く /雪乃紗衣

茶州で奇病が流行りだし、謎の新興宗教・邪仙教が州牧への敵対を示しながら勢力を伸ばし始める。影月編、全3巻の中篇。……まあ、中篇なので次巻を読まないことにはなんともいえないけれど、それでも、強いて言えば、いまいち。今巻の見どころは、秀麗の必死の交渉ということなんだろうけど、正直、作者の描きたいことと、実際の描写が空回りしてるようにしか読めませんでした。いや、秀麗の今の立場での強引な交渉を描くことがそもそも難しい、というのが根本にあるんだけど、そこの部分についてまともにフォローもせずに下手に逃げるだけで、また、交渉相手にしても、前巻から構成から考えると、それじゃダメだろ(^^;。まー、なにはともあれ、次巻次第なんだけど、前巻が良かっただけになー。

[ 2006.08.10 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 光降る碧の大地 /雪乃紗衣

泣けるっ!! 感動的っ!! ……なのだけど、なんでこんなに、説得力というか、納得させるだけの力に欠けるわけ(T-T)。細かな部分は気にするなっ、ということなんだろうけど、すでに、設定が世界を支えきれてないんだよなー。なにはともあれ、これで、影月編も終了。本番は来る縹家との闘いなんだろうけど、果たしてどうなるんだろう。

[ 2006.08.11 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 藍より出でて青 /雪乃紗衣

彩雲国物語の外伝2冊目。会誌直前の藍龍蓮に焦点をあてた「王都上陸! 龍蓮台風」、茶州編直後の茶克洵と春姫を中心に描いた「初恋成就大奔走!」、影月編後茶州との別れを描いた「心の友へ藍を込めて」の三篇+α。なんと言っても、奇行の目立つ龍蓮の行動について、きちんと理由付けしたところが良かったです。これで今後の展開次第では、龍蓮も秀麗争奪戦の最右翼になることも可能になった、ということで(^^;。……まあ、短編単体で閉じてるというより、次回作への仕込みも含めた繋ぎという側面も強く、とにかく、続きが楽しみ、ということで。

[ 2006.10.02 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 紅梅は夜に香る /雪乃紗衣

いまいち。いや、秀麗の境遇等々が、物語世界内での結果というより、作者の都合にしか見えないのがなー。つまり、構成上の作者の意図ばかりが目立って、実際の背景描写がぜんぜん足りないのよ。一応、背景のフォローと強化は適時加えられてはいるのだけど、どうしてもタイミングが後手に回ってるケースが多くて、説得力として弱いんだよなー。

新章スタート。謹慎を命じられた秀麗の元に新たに結婚を求める新キャラ登場。って、また、新キャラかいっ!! これは、ネオロマンスとかのお約束なんでしょうか(^^;。……まあ、新キャラはともかく、情報の量も提示のタイミングも悪く、不満が残る内容でした。というか、単純に頑張れば報われる世界ではなく、権謀術数なやり取りも含めて描くなら、細部まで含めてきちんと理詰めで納得できるように書くべきで、「そういうことになってます」的な作者の都合を感じさせるような書き方はダメだと思う。しかも、今のところは秀麗に敵対する勢力の設定も微妙だからなー。……作者のやりたいことを描くには、背景があまりにすかすかだと思うのですけど。

[ 2006.10.16 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 緑風は刃のごとく /雪乃紗衣

素晴らしい~~。やっぱ、雪乃紗衣をカタルシスを演出するのが、すげーうまいよなぁ。や、最後のドンデン返しがむちゃくちゃナイスっ!! ほんと、あのドンデン返しだけで、大満足です。

そゆわけで、秀麗を含め無役の官吏に対して「一ヶ月以内にどこかの部署に採用されないとクビ」という通達が。秀麗はこの試練を切り抜けられるのかっ!! という内容。前巻で初登場のタンタンくんが、ここまで味のあるキャラクタになるとは思ってもいませんでした。ただ逆に、旧キャラたちは、どんどん影が薄くなっていて、すごく勿体無い使い方だよな。……作者の都合が目立つのは相変わらずなのだけど、なんやかんやで面白い。カタルシスを感じさせるような情報の提示の順番が、ほんとに冴えてるんだよなぁ。次巻への引きも波乱に満ちていて、非常に楽しみです。

[ 2006.10.17 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 青嵐にゆれる月草 /雪乃紗衣

いまいちスッキリせずに次巻へ続く。なにはともあれ続き次第だなー。や、謎の出し方や話の纏め方は、相変わらず格段に上手いのだけど、いまひとつカタルシスが弱かったのは、ちと残念。まー、今回は、もともと、そういう構成なんだけどさー。今回はあくまで、ぐだぐだな楸瑛と、秀麗vs清雅が見どころというところかしらん。

そゆわけで、藍家は劉輝の妃候補として十三姫を送り込む。それは、楸瑛に藍家と国王のどちらを取るかを強いるものだった。そして、御史台で働き始めた秀麗は、十三姫を守るために後宮に入ることに……。や、十三姫の設定がなかなかに見事。そして、あからさまに嫌な性格の清雅は、結局、秀麗に惚れるようにフラグ立ちまくりなのは、いったい(笑)。

しかし、読んでて不満というか不安なのは、物語のラスト、つまり、秀麗が出世して劉輝の側近→結婚?というところまでがやたら遠いと思うんだけど、どうするつもりなんだろう? そこまでやろうと思ったら、いったいあと何巻かかるのか想像もつかないんですが(^^;。雪乃紗衣のリアリティの持たせ方も変なので、いまさら一足飛びに出世させるという手段は、難しいだろうしなー。


メモ

なんだか、登場人物もごちゃごちゃしてきたので、簡単にメモ↓。

貴族の序列は、王族である紫家を頭に、彩七家(藍家、紅家、碧家、黄家、白家、黒家、茶家)。さらに、紫家と彩七家の門家が続く。門家までが名門扱い。彩七家の中でも、藍家、紅家は別格で、また、異能の力を持つ縹家は、彩七家とは違う意味で別格。藍家、紅家は国王から距離を取っている状況。縹家は主人公サイドの敵側。国の組織は、四省六部。さらに、軍と御史台(独立した捜査機関)を持つ。六部は尚書省の下部組織。偉い順に官位を並べると、宰相→省の長官→御史台の長官→尚書(部の長官)→州牧(州の長官)→侍郎(部の次官)。貴族派の門下省&御史台と国試派の尚書省が対立中。

紅秀麗:
紅家直系のお姫様。ただし本人は貧乏で傍系と思い込んでるのがミソ。女性初の官吏となり、いきなり茶州州牧→リストラ対象の冗官を経て、今は、御史台のひら役人。そして貧乳。

紫劉輝:
彩雲国国王。兄弟の中では王座からもっとも遠かったにもかかわらず、棚ぼたで王様に。秀麗をお嫁さんにしようと頑張っている。

静蘭:
秀麗の家人。実は、追放された第二公子で劉輝の兄。秀麗のためなら生命も投げ出す危ない人。

李絳攸:
吏部侍郎で劉輝の「花(特別な側近)」。紅家当主、紅黎深の養子でもある。方向音痴。

藍楸瑛:
左羽林軍将軍で劉輝の「花」。藍家直系の四男。優柔不断。

紅邵可:
秀麗の父。おっとりとしていて閑職の府庫勤め。実は、紅家直系の長子。さらに、暗殺を請け負う闇の組織「風の狼」の元首領。

珠翠:
後宮筆頭女官。元「風の狼」の一員。さらに遡れば縹家の子飼い。邵可が好き好き。

紅黎深:
紅家当主で、吏部尚書。絳攸の養父。兄の邵可と姪の秀麗が病的に好き。

黄奇人:
戸部尚書。いつも仮面を着けている奇人。

景柚梨:
戸部侍郎。秀麗のアルバイト時代の上長。秀麗を気に入っている。

魯尚書:
礼部尚書。秀麗の新人時代に秀麗をしごいた人。

管飛翔:
工部尚書。悠舜、黎深、奇人と同期。無類の酒好きで秀麗と飲み比べた前歴を持つ。

鄭悠舜:
秀麗の茶州州牧時代の補佐役。中央に戻り、宰相に。

浪燕青:
元茶州州牧のめちゃくちゃ強い人。むさい無精ひげが目印。

茶克洵:
若い茶家当主。気弱。彩七家では唯一国王寄り。

茶朔洵:
克洵の兄。茶州での敵役で今は生死不明。秀麗と婚約直前まで行く。

藍龍蓮:
秀麗の同期で友人、楸瑛の弟。「龍蓮」の名は、藍の中でも特別の者が継ぐ名前。

葵皇毅:
秀麗が勤める御史台の長官。

陸清雅:
皇毅の懐刀。秀麗とは犬猿の仲。

榛蘇芳:
通称タンタン。御史台での秀麗の補佐役。

凌晏樹:
門下省の有力者。何故か秀麗を気に入っていている。

旺季:
門下省長官。貴族派の重要人物。

リオウ:
仙洞省長官。縹家当主の息子。劉輝の話友達。

縹璃桜:
縹家当主。邵可と敵対し、秀麗を狙っている。

縹瑠花:
璃桜の姉。璃桜ラブでむしろこっちの方が危ない。

[ 2007.04.07 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 白虹は天をめざす /雪乃紗衣

なにゅ~、そういう伏線だったのかー。や、予想よりも大きな話になっていてビックリです。まあ、そういう話にしないと、確かに、物語の緊張度が違うよなー。本格化する政争に、これは続きも目が離せませんっ!! ……今回の話に関しては、ちと拍子抜けな印象も否めないけど(^^;。

楸瑛を追って藍州へ向かう劉輝。さらに、監察御史として、その劉輝を追う秀麗。劉輝不在を機を狙い、暗躍する貴族派。そして、一行がたどり着いた藍州・九彩江は、王の死すら問われない藍家と縹家の治外法権が認められていた……。といいつつ、実は、次巻以降の展開への布石的な部分が大きいのが今巻だったりするわけで、いやぁ、ほんと続きが楽しみだなぁ。まだ、国試派不利とか藍家の立ち位置なんかの状況を中心に、説明が足りず納得できない部分も多いのだけど、まあ、そこら辺は続き次第だなー。

しかし当初は、秀麗が宰相辺りまで出世し劉輝と結婚してゴール、という辺りを想像してたのだけど、もう、さっぱり物語の着地点が見えない(^^;。ほんと、今後は、どっちに進むんだーーーっ!!

[ 2007.09.03 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 隣の百合は白 /雪乃紗衣

3編+αの短編からなる外伝。「お伽噺のはじまりは」は、邵可が黒狼になる経緯を扱ったハードな話で、邵可、黎深、玖琅の紅家三兄弟の絆が暖かく、なかなか素晴らしい。他2本は微妙、少なくとも好みじゃないなー。

恋愛指南争奪戦!

宮中上げて、副賞の「恋愛指南」のかかった武術仕合を繰り広げるという話。くだらねぇ。

お伽噺のはじまりは

茶州にある秀麗を思いながら邵可は昔を思い出す。という邵可が黒狼になった昔を描いたもの。いやぁ、せつなくていいねぇ。

地獄の沙汰も君次第

黎深ツンデレ(笑)。や、黎深と百合姫との馴初めの話なのだけど、黎深ひどすぎる。相方の百合姫は、いいキャラしてるねぇ。

[ 2007.11.06 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 黎明に琥珀はきらめく /雪乃紗衣

やっと、物語の全体像というか、ラストの形が見えてきたよっ!! 今回は、起承転結でいえば、“転”に当たるのかしらん。いやぁ、ラストへ向けての大枠での準備はほぼ完了し、いよいよストーリーも大きく動き出した予感。まあ、まだまだラストまでは紆余曲折があるんだろうケド、続きがめちゃくちゃ楽しみですっ!!

そゆわけで、陸清雅の手により投獄された李絳攸。秀麗は、絳攸の弁護のために捜査を開始するが……。というわけで、楸瑛に続いて、絳攸が自分の身の置き方を決める話なんだけど、わりとそこはどうでも良くて<をい、それよりも、彩七家のいくつかの家は大きく動きを見せ、縹家の位置付けが明らかになり、そして、秀麗の倒すべき敵が明確化されると、ほんと、ダイナミックに動き出したストーリーが、すげー楽しみだわ。……出来れば、このテンションのまま、ラストまで畳み掛けてくれればいいんだけどなぁ。

[ 2008.05.02 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 黒蝶は檻にとらわれる /雪乃紗衣

すっ、すげぇぇぇーーーーーーーっ!! うわぁ、うわぁ~、雪乃紗衣の伏線をたたみにかかった時の巧さは、ほんと絶妙だよなぁ。ていうか、今まで仕込んでた伏線を、怒涛の勢いで回収すること回収すること。……えっと、シリーズも最終盤突入ということで、O.K.?

吏部尚書・紅黎深の解任で混乱する朝廷。貴族派と国試派の思惑が交錯する中、紅家官吏が出仕拒否を……。と、単なる紅家の話で終わるのかと思ったら、うわぁ~、会議での凌晏樹の提案も鳥肌モノだったけれど、“鳳麟”の話が出てからの展開が、めちゃくちゃスゲェ~~。いや、“鳳麟”は、てっきり最終エピソードへの仕込みかと思ったら、速攻で使ってきたよ、この作者。そりゃ、奴がそうなのはバレバレだったけど、だからと言って、このタイミングで明かすかぁーーーっっっ!! ああああぁぁ、劉輝も秀麗も、というか、王家、紅家とも、もはや詰んでるとしか思えない状況なんだけど、この逆境から、どうハッピーエンドに持っていくつもりなんだろう? 怒涛の展開に、続きが待ち遠しくて、仕方ありませんっ!!

[ 2008.12.06 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 黄梁の夢 /雪乃紗衣

過去の清苑(静蘭)や邵可に纏わるイベントを描いた短編集。静蘭の流罪の経緯など、今までも陰に陽に語られてきた話ではあるのだけど、うわぁ、重くてキツい内容だ。……どの短編も、過去の番外編を書くのであれば欠かせない内容だし、決して悪くはないのだけど、陰鬱な雰囲気で、読後感としては、どよんと、いまひとつだったり。

[ 2009.05.04 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 暗き黄昏の宮 /雪乃紗衣

さすが最終章、劉輝に対する追い込みが半端ねぇ~~。……そして、見え隠れするラスボス。あ、あれ? そういう話なの??

任務の途中で行方不明となった秀麗。秀麗を失い、気がつけば孤立無援の劉輝に、国を滅ぼしかねない災厄が襲う……。という感じで、最終章突入。さすがラス前だけあって、いままで頑張りが足りなかった劉輝を、追い込む追い込む。秀麗はずっと成長し続けていたのだから、その相手役の劉輝も、されなりに成長させないことには、この物語も終わるに終われないからなぁ。……物語的には、もはや詰んでるとしか思えなかった前巻に比べて、ラストに向けて少しずつ光が見えはじめてる印象。でも、ほんとハッピーエンドに持っていけるのか、これ?

[ 2009.12.03 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 蒼き迷宮の巫女 /雪乃紗衣

いよいよクライマックス直前っ!! 蝗害をはじめとする各地での災害と王権転覆の陰謀。うわぁ~、すげぇ続きが待ち遠しいぃ~~。

しかし、劉輝、ヘタレすぎっ!! いや、前巻での旺季への丸投げは、苦し紛れでの選択ではあったものの、あの状況での最善策ではあったので、アレを転換点として、段々と劉輝が盛り返していくのかと思ってたわけさ。そこを、さらに、劉輝の王権維持の芽を摘む展開は、……もはや、劉輝の退帝エンドしか想像つかないわけですがっ!! むしろ、リオウが王様になるフラグだよなぁ。いや、最後に花道を用意して、劉輝が引退すれば、みんな幸せになるような、そんな予感(^^;。

一方、縹家の秀麗は、死への秒読み、不治の病とは思えないほどの活躍ぶり。これからいよいよラスボス戦へと向かうわけだけど、ほんと、続きがメチャ楽しみだっ!!

[ 2010.04.12 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 紫闇の玉座(上) /雪乃紗衣

号泣。ひたすら泣きながら読みました。秀麗の決意、瑠花と羽羽の想い、悠舜と飛翔のやりとり、そして、旺季の活躍。最終巻を前にして、とにかく感動の名場面の目白押しで、ただただ泣ける。今まで私の読んだ小説の中でも、間違いなく1、2を争う最高傑作だと思うけど、次回で最終巻か。残り500ページ……。

残り少ない生命を、国のため、劉輝のために使うことを決心した秀麗は、蝗害の最前線、紅州へ……。死が目の前に迫っているのに、いつも通りの秀麗が、せつない、せつなすぎる。国王としての資質をこれ以上なく見せつける旺季に、それでも、劉輝を選び続ける秀麗。方や、追い込まれるところまで追い込まれて出番のない劉輝。これ、ここから大逆転できるの? もう、どうしようもないとしか思えない劉輝を信じる秀麗もまた、せつなすぎる~。や、旺季が悪ではないところがまた、せつないよね。

そして、本巻のもう一方の主役は、瑠花と羽羽。当初の悪役然としてた瑠花からは信じられないほど変わったよなぁ。潔い生き様。そして、なにこのピュアラブ。せつないなぁ。

なにはともあれ、次巻で完結。劉輝と旺季の玉座争いに加え、未だ思惑が見えない悠舜、晏樹を軸に展開するんだろうケド、もう、すげー楽しみっ!!

[ 2011.06.07 ]


角川書店 ビーンズ文庫
彩雲国物語 紫闇の玉座(下) /雪乃紗衣

将来、劉輝治世が『最上治』と言われることになることはわかっていたとは言え、よくあの状況から、文句のつけようもないハッピーエンドに持っていったな。非常に感慨深いラストでした。……いろいろと力技すぎるけど(^^;。

残り一日の生命を大切に使うため、眠りにつく秀麗。一方、都落ちした劉輝は……。というわけで、最終巻になって、いよいよ劉輝が本気になるの巻。といっても、旺季との差は絶望的で、いままで蓄積した実績もなく、力技になってしまうのは、正直、仕方ないか。でも、もうちょっと、劉輝の将来に名君主に至るための片鱗なり、前もって状況を打開する伏線が散りばめてあったら良かったのに(^^;。まあ、『彩雲国物語』のメインは、あくまで、秀麗であって、劉輝の物語というわけではないからしょうがないか。前巻までで、秀麗の物語はほぼ完結してたわけだし。

って、書いてるとどうも不満が先に出てしまうけど、劉輝の都落ちのくだりや、旺季との直接対決の場面は良かったです。特に、秀麗登場は、かっこよくてマジ泣ける。そして、全てが救われるラストが、ホント素晴らしかったですよっ!!

[ 2011.07.04 ]


KADOKAWA 角川ビーンズ文庫
彩雲国秘抄 骸骨を乞う(上) /雪乃紗衣

うわぁ、泣ける(T-T)。5年ほど前に完結した名作『彩雲国物語』のその後を描いた連作短編。もともと単行本で刊行されてたのが、ようやく文庫に落ちたので購入したのだけど、これは泣けるわ。その後、「最上治」として歴史に名を遺したと語られる紫劉輝の治世を、宰相の鄭悠舜、劉輝と王座を争った旺季、下巻では、旺季配下の凌晏樹かしら? この三人の人生を語ることで描くというもの。「骸骨を乞う」とは臨終の際に永遠の別れを告げる決まり文句らしく、このモチーフ、泣かす気満々ぎるだろっ!!

この上巻は、鄭悠舜と旺季。鄭悠舜、劉輝の異常な執着に応える一方、互いに相手を大事に想うあまりに道を違えた旺季との特別な関係。旺季、前王・戩華に一族を滅ぼされ、その戩華王のいる王座を目指し、戩華王の死去以降、すべてにおいて劉輝に先んじていたにも関わらず、王座を簒奪することなく晩年を隠居のように過ごした半生。この二人の、生きる目的を探しながら乱世を不器用に生き抜いた人生が、せつなすぎて号泣ですよ。

しかし、悠舜と旺季に焦点を当ててるとはいえ、「最上治」の中心となる劉輝や秀麗、劉輝の側近たちが、悠舜や旺季に伍するまでとは言わなくても、それほど成長してるようにはみえず、不甲斐ないのが気になるな。そして、本編ラストによれば、

 “――彼(劉輝)がようやく妻をめとることができたのは、上治十五年、三二歳。”
 “結婚した翌年、娘を産んだ紅秀麗は、娘と引きかえるようにまもなく息を引き取る。”

とあったのだけど、うわぁ、この上巻ではあまり語られていないけれど、もうその時までは、ほとんど時間が残されてないんだよな。下巻では間違いなくそこまで描かれると思うのだけど。秀麗……。

[ 2016.05.08 ]


KADOKAWA 角川ビーンズ文庫
彩雲国秘抄 骸骨を乞う(下) /雪乃紗衣

最高傑作。自分史上、これほど泣けた作品は、ほかに思い出せません。紅秀麗が亡くなる最期の一年。本当に泣ける。

“結婚した翌年、娘を産んだ紅秀麗は、娘と引きかえるようにまもなく息を引き取る”……本編のラストで語られていたその最期の一年を描いた、劉輝と秀麗の幸せながらも哀しい物語。この『骸骨を乞う』という連作短編が、鄭悠舜、旺季、凌晏樹の人生を語ることで大切な人を失う哀しさをこれでもかと描いたうえで、さらに満を持して秀麗の最期を描くとか、この計算された構成が凄いわ。はじめは幸福に戸惑い、やがて、秀麗を失うことを怖れる劉輝に、産めばおそらく死ぬだろうとわかっているのに、鄭悠舜を失い傷ついた劉輝を知っているのに、それでも「大丈夫」と繰り返す秀麗。穏やかに幸福を分かち合う秀麗と劉輝と、そんな二人を見守る成長した側近たち、そして、所々に挿入される遺言のような秀麗のメッセージ、……どこを読んでも泣ける。素晴らしい。

「ちょっぴりの時間が終わったのね」、そして、やがて来るその瞬間と、残された劉輝と娘。大丈夫、大丈夫、それでもやがて歩き出す劉輝の姿に、読んでいて涙が止まらない。『彩雲国物語』の最期を〆るにふさわしい、素晴らしい短編集でした。

[ 2016.05.10 ]


KADOKAWA 角川文庫
彩雲国秘抄 骸骨を乞う(下) /雪乃紗衣

角川文庫版だけオリジナル短編がついてるということだったので買いなおしたのだけど、え!? この短編がビーンズ文庫版に収録されてないとか、どういうこと? シリーズ全体を通して俯瞰するような物語になっていて、まさにシリーズのラストを〆るに相応しい作品。これだけ重要な短編がビーンズ文庫版に収録されていないとか、こんなの絶対おかしいよ。

そゆわけで、角川文庫版のみに収録されている短編「冬の華」は、劉輝とその娘、重華の物語。1巻の頃の秀麗と同じような年ごろになった重華を中心に、劉輝の治世を振り返りながら、時にコミカルに、時に感動的に読ませる内容。『骸骨を乞う』の連作短編のようにシリアス一辺倒というわけでもなく、このコミカルな雰囲気は、これぞ『彩雲国物語』の集大成というべき短編。

もちろんコミカルなだけでなく、『骸骨を乞う』の劉輝の物語を読んでいると、幼いころの重華と劉輝のやりとりは、微笑ましくも泣けてくるし、語られる劉輝の穏やかな治世は、劉輝たちの苦労が偲ばれて泣けてくるし、終盤の展開も涙なしには読めない。……物語は文句がないほど綺麗に終わっていてこれ以上続編を書いても蛇足にしかならないと思うのだけど、でも、重華の恋愛の行く末は気になるな。

[ 2016.05.11 ]