アリスへの決別


早川書房 ハヤカワ文庫JA
アリスへの決別 /山本弘

全7篇の短編集。児ポ法とか尖がったネタを集めた短編集なのだけど、そういう過激な題材以外には価値のないような話ばかりで、物語としてはどれもいまいち。強いて私的に面白かった作品を挙げれば、月面基地初の殺人事件を描いた「七歩跳んだ男」辺りかなぁ。ミステリ的な仕立ての終盤がなかなか愉快。あとは、夢のような世界を舞台にした「オルダーセンの世界」も雰囲気と世界観が魅力的に思えて悪くはなかったけれど、肝心の“亜夢界”の設定がちょっと説得力弱くて胡散臭いのがなぁ。「オルダーセンの世界」はまだしも、その続編、「夢幻潜航艇」の方は酷い印象。……しかし、全体にトンデモを嫌悪する論調が見え隠れする内容が多いように思えるのだけど、フィクション内でのトンデモ批判って、そもそも食い合わせが良くない予感。

[ 2010.08.15 ]