千の剣の権能者


宝島社 このライトノベルがすごい!文庫
千の剣の権能者 /紫藤ケイ

号泣。想像以上に綺麗で感動的なラストシーン。いやぁ、てっきりシリーズ的な話かと思って読んでたら、綺麗に一冊に纏めてるのんな。ちょっとビックリ。長編向きの魅力的な設定を一冊で使いつぶしてるのはもったいないけれど、それだけの価値のあるラストが、ほんと素晴らしいわ。

権能兵――圧倒的な異能を身につけた代償に、心を持たない帝国の操り人形。総督の後継者の地位を投げ出した青年クオンは、帝国の支配を受けない、権能兵としては本来あり得ない少女・クアディカに出会う。と、心を失いながらも戦い続ける少女と、過去のトラウマから逃げ出した少年という、なかなかにあざとい構図なのだけど、だからこそ、期待を裏切らない展開が素晴らしい。や、そもそも、この<権能兵>の設定があざといよね。古代文明の顕現とか、なにそれ、胸アツ。もちろん、ストーリーも素晴らしく、特にラストが感動的で素晴らしい。最後のイラストとか卑怯すぎるだろっ!! 泣ける、とにかく、泣けるっ!!

ただ、もっと重厚なファンタジーに描けていれば、なお良かったのだけど、そこまで新人に求めるのは酷かなぁ。いや、独自のファンタジー世界として、いろいろ想像が膨らむ設定なのだけど、その割りに、ちょっと浅くて奥行きがない描写なのんな。まあ、読み切り一冊だし、そもそも、そんなに突っ込んで描けないという側面もあるんだろうけど、それであればなおさら、一冊で綺麗に纏めちゃってるのは、もったいないよなー。

[ 2012.11.13 ]