幻獣坐


講談社 講談社ノベルス
幻獣坐 The Scarlet Sinner /三雲岳斗

なんと酷く嫌な話だ(褒め言葉)。本屋のPOPで、「三雲岳斗の作品の中で、いちばん酷い少年が、いちばん純真な少女をいいように利用する物語」みたいなこと(うろ覚え)が書かれていて、どんな話だ?と思って手に取ったのだけど、まさにそんな感じの内容でした。

両親を奪われた恨みのために、日本を牛耳る巨大企業・鷲王院グループへの復讐を密かに誓う高校生・久瀬冬弥は、自殺した友の死に打ちひしがれた少女・藤宮優々希と出会い、そして、彼女の秘密を知る……。という感じで、冷徹で優れた知能を持つ少年が、人知を超える力を手に入れ、悪の巨大企業と敵する内容なのだけど、やはり、三雲岳斗のコミカルな要素のないシリアス一辺倒な話は素晴らしい。明暗の対比が非常に上手く、幸福に包まれていた少女とその後の展開が、とにかく酷い読後感。ほんとうに酷い、とにかく酷い。この酷い読後感を何とかして欲しい気もするのだけど、どうすんのこれ? 一応、大きな物語の序章的な内容なのだけど、すでに描くべきは全て描かれてるよなぁ。

[ 2010.03.22 ]