Boy's Surface


早川書房 ハヤカワSFシリーズJコレクション
Boy's Surface /円城塔

だははははっ、わけわかんねぇ~~(笑)。電波ですよ、デンパ。まるで、作者が受信した電波を垂れ流したような内容なのだけど、それが一文一文、きちんと計算されてるようなのが、凄いといえば凄い。……それにしても、気を抜くとすぐに意味不明になるので、読んでて非常に疲れましたよ。

そゆわけで、“芥川賞候補の注目作家がおくる数理的恋愛小説集”と銘打たれた短編集。確かに、「Goldberg Invariant」を除けば、恋愛を描いているけれど、“恋愛小説”というとちょっと違和感。どちらかというと、「恋愛をテーマにした思索」といった感じかしらん。……で、収録されている 4篇のうち、いちばん面白かったのは、表題作にもなっている「Boy's Surface」。いや、なんと言っても「Boy's Surface」は、もっとも理解しやすく、比較的まっとうな恋愛小説になってるしな。ある数学者の初恋の純粋さを、変わった視点から眺めた作品。ただ、視点の妙と純粋さの描き方は面白かったけれど、「ただ、それだけ」という感じなんだよなぁ。それは、他の短編も一緒で、どうにも、切り口と表現が面白いぐらいで終わってしまってるのが、残念。まあ、そこが味なんだろうけど、もう、わざわざ再帰的でメンドイ思考で書かなくてもいいとは思うなぁ。

[ 2008.01.31 ]