エンドロールまであと、


小学館 ルルル文庫
エンドロールまであと、 /壁井ユカコ

さすが、壁井ユカコは巧いなぁ。キャラクターの描写と地方都市を舞台にした雰囲気の醸成が、ほんと素晴らしい。……ただ、ラストが、パターンをなぞってるだけで仕掛けとしてはいまいちだったのが、残念無念。いっそ、終章はない方が良かったんじゃないかなー。

福井辺りの地方都市を舞台に、未だ格式に縛られる旧家に生まれた双子姉弟の禁断の恋、という話。なんといっても、病弱で精神的に幼い右布子の造形と描写が、ほんとに素晴らしい。そして、物語を支える、佐々家をはじめとする各種設定も、Good。古めかしい地方都市と禁断の愛と青春をミックスした、実に雰囲気のある作品に仕上げてあるのよ。いやぁ、壁井ユカコは、ほんと凄いなぁ。ただ、だからこそ、ラストの定型でしかないオチが残念無念なんだよなぁ。パターンなのはわかるんだけど、それならきちんと構成を組み立てて、もっと効果的に仕立てて欲しかったところ。や、「お約束だから、とりあえず、そうしてみた」という感じにしか読めなかったのよねん。

[ 2007.08.07 ]