好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!


2025 7 14

SBクリエイティブ GA文庫
りゅうおうのおしごと! (20) /白鳥士郎

本編完結。いやー、最終章に入ってからは微妙な内容が多く、正直、不安が多かったのだけど、終わってみたら、綺麗な最終巻でした。きちんと銀子とあいの関係に決着をつけた上で、あのエピローグがいいねっ!!!

最終巻。棋力を失いつつある あい は、その能力を失う前に、プロ棋士へ編入し、そして、銀子との対局を実現することができるか? 一方、あい の想いを受け取り、八一との結婚ではなく、プロ棋士への復帰を選んだ銀子は……。というわけで、もちろん最終巻は、銀子とあいの最終対局っ!!

いやまあ、シリーズの最終対局は、あい vs 八一の竜王戦だと思っていたので、弱体化した あい と銀子の対局というのは物足りなさを覚えてたんだけど、それが、どうしてどうして、決戦に向けて相手を振り返り研究していく過程がエピローグのようにいままでの登場人物を振り返るような構成になっていて、さすが最終巻と言わざるをえない内容。そして、そこからの対戦と対戦後のやりとりがとにかく素晴らしい。勝った方、そして、負けた方も。本当に素晴らしい最終巻でした。

でも、あいと銀子はともかく、同時に進行する八一vs捌きの巨匠との対決は、正直、今更感しかなくて、どうしてこうなった? それに、むしろ物語的に重要なのは、天衣と創多なんじゃね? やたらAIをテーマにしていたのに、最終巻では、ほとんどAIがらみに尺を使ってないんだよねー。間違いなく最強の棋士なのに、将棋界のために身をひく天衣は切ないよね……。

綺麗さに誤魔化されているけれど、対局の描写やその後の戦績をみるに、あいの終盤力も復活したわけではなく、ツギハギだらけの終盤力を序盤から中盤の改善と、そして泥臭さで補っているにすぎなんだよね。そのことに対局していた銀子も見守っていた八一も気づいていないのも切ないな。「見守る」とは……。

[ りゅうおうのおしごと! ]


2025 7 10

KADOKAWA MFブックス
努力好きの天才錬金術師(1) /ムサシノ・F・エナガ

「カクヨム」で好きな作品なので購入。いやー、キャラの掛け合いがコミカルですげーおもしろいんですよ。

異世界転生モノで、この1巻では、生まれてから8歳まで。そのまだまだ子供な主人公のアイザックと、姉のマリーンや唯一の友達のモモといった子供同士のやりとりが、ほんとにコミカルで微笑ましくておもしろい。特に、天才な弟にコンプレックスを持ちつつも好きすぎる姉のマリーンが愉快で良いキャラしてる。Web版だと、最近は、主人公を置いてマリーンの物語になってる気もするけれど、そのぐらい良いキャラなんですよね。

まあ、とにかくキャラが楽しいのだけど、一方のストーリーはというと、ニートのまま死んだ後悔から異世界転生した今世では懸命に頑張る物語。と、めちゃくちゃベタな異世界転生モノすぎて、むしろ、古臭いまである。書籍化にあたり前世部分を書き足しているのだけど、ここら辺も古臭くて、今時、前世のニート描写からはじまるのは、正直、シンドイ。なぜ、書き足した(^^;。

タイトルに「努力好き」とあるし、前世の後悔から今世の努力を強調したい意図があると思うんだけど、ただ、この主人公、強力すぎるチート&錬金術への好奇心から天才になったタイプなので、正直、努力系の主人公らしさってないんだよね。これは、タイトルからして作品の魅力を語れてないと思うのだけど、なんとかならなかったものか。ここからさらにチート増し増しで話が進んでおもしろくなるのに、ちと、もったいないよなー。

[ 努力好きの天才錬金術師 ]


2025 6 24

朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ聖獣変 /夢枕獏

1982年から続いていた「キマイラ吼」シリーズが堂々の完結。いや、完結というか、ラストまで書ききれないことを危惧した夢枕獏が、途中をすっ飛ばして、先に最終巻を書いたというもの。途中も、雑誌連載中とのことだし。

内容もこれで完結と言って良いかは微妙で、エピローグのようでありつつ、物語は完結せずにこれからも続いていくことを示すものになっているのよ。死後、「実は最終巻を書いてました」と出されても困惑する内容で、今、「これが最終巻です」と出されるから、最終巻だとギリギリ納得できる内容だよな。

なんの説明もなく物語の最後に収録されている『神話変 序曲』も解釈を難しくしていて、この『神話変 序曲』は、1984年に天野喜孝の画集で発表された短編なのだけど、最終話を思わせる内容でありながら、本編とはかけ離れた内容になっていてるのね。これは、『聖獣変』から『神話変』のような未来に繋がっていくといっているのか、それとも、いろいろ考えていた結末のひとつといっているのか。そもそも、連載中の『呪殺変』を進めて行ったら、『聖獣変』とは別の未来に繋がるということも、普通にありそうだ。

まあ、最終巻、物語の結末としては、この『聖獣変』も『神話変』もおまけで、重要なのは冒頭に再収録された桜のシーンなのは明らかだけど。

しかし、前巻の『魔宮編』では、いよいよ物語をたたみはじめたのかと思ったのだけど、こういう形で『聖獣変』を出してきたということは、ぜんぜんたたむ気がないんだな。というか、この『聖獣変』って、今際の際まで、『キマイラ』を書き続けるという宣言だよね。

[ キマイラ吼シリーズ ]

ろぐ

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