虐殺器官


早川書房 ハヤカワSFシリーズJコレクション
虐殺器官 /伊藤計劃

いやぁ、おもしろい。9.11以降、後進国で激増する内戦と大量虐殺。その大量虐殺の裏には常に一人の米国人ジョン・ポールの関与が見え隠れする。大量虐殺の首謀者暗殺を主たる任務とする米国軍特殊部隊のシェパード大尉は、ジョン・ポールの影を追う……。と、今と地続きの近未来を舞台に、SF的なガジェットを入れ込みつつ、哲学的な死のにおいを織り込んだストーリー。作者の人は、これがデビュー作らしいのだけど、そつなく綺麗にコントロールされた物語になっていて、なかなかに上手い。ほんと読んでておもしろく、先が気になる気になる。

全体に読者の期待を裏切らない展開で非常におもしろいんだけど、ただ、ラストとエピローグに関しては、“お約束”に頼ってしまってる部分があって、もうちょっと伏線なりを用意してちゃんとドラマとして盛り上げて欲しかったなぁん。や、読み進めながら期待していた通りの展開だっただけに、「期待通り」のままでは、正直ちょっと物足りなかったり(^^;。

[ 2007.06.30 ]