悲鳴伝
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講談社 講談社ノベルス
悲鳴伝 /西尾維新 -
読後感は素晴らしいのだけど、なんという悪趣味っ!! 特撮変身ヒーローものをベースにしていて、各章のタイトルも「ヒーロー誕生! 地球の悲鳴が聞こえるか」「戦え! ぼくらの英雄グロテスク」とか、いや確かに、タイトルどおりの話なんだけど、どう読んでも悪意を持って書いてるようにしか見えないのが凄い。それでいて、きちんと面白く、感動的に仕立ててあって、なおさら凄い。西尾維新らしく、一癖も二癖もあるキャラも魅力的なのも、いいねぇ。ヒロインの剣藤さんが、可愛いんだけど、痛々しくて、痛々しくて、ほんと凄いなぁ。
ストーリーは、名状しがたい悲鳴によって、人類の三分の一が絶命してから半年。空々空はある資質を認められ、人類を滅ぼそうとする巨大な敵と戦うヒーローとしてスカウトされる……。と、一応、正義を守る特撮変身ヒーローをベースとしているのだけど、凄惨で残虐で、むしろ極悪としか思えない任務も凄いし、精神的に病んでる、病んでしまった仲間たちと、それをなにも感じずに戦う空々空が薄ら寒くてぞくぞく来るね。ほんと、最低で最悪だ。そして、それだけ最低で最悪なのに、きちんと綺麗に纏められたラストが凄い。ヒーローの空々空と対比される、比較的まともな感性の、ヒーローになり損ねた剣藤さんが、痛々しくて泣ける。ほんとおもしろかったっ!!
[ 2012.05.12 ]