鳥籠荘の今日も眠たい住人たち


メディアワークス 電撃文庫
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(1) /壁井ユカコ

さすが、壁井ユカコ。巧いなぁ。……おかしなホテルに集まる、いろいろな問題を抱えた住人たちのお話。つまり、[文庫]『ROOM NO.13011 /新井輝』の13階を、まるごとホテルにしてしまったようなお話ですなっ(^^;。

ホテル・ウィリアムズチャイルドバード、通称、鳥籠荘の日常を描いた連作短編。ストーリー的には、お涙頂戴系のお約束な話。内容はありがちながら、非常に雰囲気のある独特な作品に仕上がってます。切ないのは当然として、全体に、救いが薄いのも、Good。テクノサマタの少女漫画的なイラストも、雰囲気にあっていて、なかなか良いです。私的に一番面白かったのは、絵描きの浅井の過去とモデルのキズナとの今後を垣間見せた、第4話「籠の中の羽根のない鳥」かしらん。

しかし、私的に残念だったのは、舞台が現代日本でありながら、その実、リアリティの弱い無国籍風ファンタジーとして描いてるのがなー。キャラも極端すぎる。や、ライトノベルとしては、それは正解なんだろうけど、きちんとリアルな現代日本として描いてくれれば、もっと違う面白さが出ると思うんだけどなー。

[ 2006.11.16 ]


メディアワークス 電撃文庫
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(2) /壁井ユカコ

すっげーーーーーーっっっ!! 最高傑作級っっっ!! や、第2話 Episode.2と、そしてラストの展開が、とにかく素晴らしい。コバルトならともかく、よく電撃文庫で、こんな話を出せたなぁん。

そゆわけで、ヌードモデルのキズナと画家の浅井を中心に、鳥籠荘の変な住人たちを描いた連作短編。いやぁ、とにかく凄かったのが、第2話 Episode.2。浅井と由起の幼いころを描いた内容なのだけど、母親の描写といい、鳥籠荘でのアレコレといい,めちゃくちゃキレてるなぁ。そして、少年向けではありえない、少女小説っぽいこの心理描写はいったい(^^;。や、壁井ユカコの筆力は段違いに素晴らしいと思う。ほんとに巧くて巧くて、ゾクゾクします。多少、好みから外れる部分もあるんだけど、ラストの展開も非常に期待を感じさせるもので、今後も楽しみです。

[ 2007.04.17 ]


メディアワークス 電撃文庫
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(3) /壁井ユカコ

第1話の「加地くんちと山田さんち」がめちゃくちゃ素晴らしい。加地くんと華乃子の初恋未満の淡く微妙想いの描写がなんといっても素晴らしいし、そして、母子、父娘の関係の見せ方もやっぱり素晴らしい。マジに素晴らしい、素晴らしすぎますっ!!

そゆわけで、通称「鳥籠荘」の変わった住人達を描いた連作短編の第三段。壁井ユカコは相変わらず巧くセンスも素晴らしいのだけど、今回は、やっぱり第1話がダントツに素晴らしかったなぁ。ビバっ、華乃子っ!! ……ただ、第3話の「アッサム・メレンをミルクティで」は、出来が酷い上にページ数も多く、ちょっとどうかと思うんですが。やりたかったのは、あくまでラスト数ページだと思うのだけど、そのために、だらだらと習作といったレベルの内容のない話でページを埋めるだけというのは、全く見るべきところがないよ。せめて、もうちょっとミステリ風に凝るなり、人物描写に凝るなりして欲しかったなぁ。

[ 2007.08.20 ]


メディアワークス 電撃文庫
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(4) /壁井ユカコ

いやぁ、華乃子はやっぱりいいなぁ。華乃子のパパに見合い話は持ち上がるという、第1話「Father's Style ~エビフライの華乃子の場合」が、暖かく気持ちのいい家族愛な内容に仕上がっていて、ほんとに素晴らしい。……そして、今になって、へれんさんの短編を入れてきますか(^^;。

そゆわけで、変人だらけの「鳥籠荘」の住人たちを描いた連作短編。高いレベルで安定した壁井ユカコの筆力は、やはり素晴らしい。今回は、キズナや華乃子に輪をかけた変人のへれんもヒロインとして登場。って、さすがに、あそこまで現実離れしてるのは、どうよ(笑)。そして、小学三年生の華乃子は、ほんとに可愛く、そして、暖かく描かれていて、ホントいいなぁ。

ただ、急展開の第4話「Home ~逃げる理由、とどまる意味」はいただけない。単純にテンプレートに当てはめただけで、中身はスカスカで内容がない。最終話に向けて、いかにもな急展開が描きたかったんだろうケド、ほんとに急展開を演出するだけの内容で、『鳥籠荘』らしさがないと意味がないと思うんだけどなぁ。ラストまでこういうテンプレートな内容でいってしまうのか、凄く不安だ……。

[ 2008.04.19 ]


メディアワークス 電撃文庫
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(5) /壁井ユカコ

やっぱり、キズナの話よりも、華乃子の話のほうが好きだなぁ。第2話「パパはわたしたちのHERO」が、素晴らしくステキでした。華乃子とパパのお話も、これで一つの決着かぁ。そして、第5話「聖夜、シナプスの宇宙で」での華乃子やパパたちのその後も、非常に良かったです。やっぱり、壁井ユカコの筆力の高さと、この少女漫画的な内容は、ほんと素晴らしいなぁ。……次回最終巻ということで、鳥籠荘の変人たちにも、さまざまに訪れる大きな転機。ラストをどう綺麗にまとめて見せてくれるのか、今からもう、最終巻もめちゃくちゃ楽しみです。

[ 2008.10.20 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
鳥籠荘の今日も眠たい住人たち(6) Blood Party! /壁井ユカコ

最終巻ということで気合をいれて読んでみたら、……今回、収録されているのは、後日談と番外編で、実は、前巻が実質的な最終巻だったのんね(^^;。

そゆわけで、やっぱり、華乃子はいいなぁ。その後の、華乃子と加地の話が、とっても初々しい恋愛ストーリーになっていて、めちゃ良かったですっ!! そして、物語最後のエピローグ。って、これ、前巻に入れちゃったほうが、より余韻を持たせられて良かったんじゃないかしら? いや、この巻の半分以上はパラレルワールドの番外編なわけだし、中途半端に短いラストエピソードを入れてるのは、構成的に失敗だったようにしか思えなかったり。せっかくのシリーズの大ラスなのに、もったいないっ!!

[ 2009.02.14 ]