物語の役割


筑摩書房 ちくまプリマ―新書
物語の役割 /小川洋子

また帯に騙された(T-T)。“人間は、なぜ物語を必要とするのか? その秘密を作家が解き明かす”と書いてあったので、「作家による物語論」みたいな内容を期待して手に取ったのだけど、実際には、「小川洋子のお喋り」を纏めたもの。帯の煽りは完全に嘘といっていい。あくまで、小川洋子のファン向けのエッセイ的な内容であって、ファン以外の人には、ほとんど価値がないと思うよ。

それでも、いくつか物語に纏わる部分を纏めてみると、

  • どこにでも物語はあり、誰もが無意識に心の中では物語を作り出している
  • 作家は、すでにある物語を文章にしているに過ぎない
  • すでにあるものを文章にするのだから、作家にとって真に重要なのは、観察力
  • はじめからテーマやストーリーがあるのではない。テーマは出来上がったものから評論家がこじつけるものだし、ストーリーは執筆しながら自然発生的に浮かんでくるもの

という感じかしらん。内容的には、自分の作品の背景やいままでに影響を受けた作品に対しての言及が多く、ほんと、ファンだったら面白いんだろうな。……タイトルと帯の煽りは、もちっと良心的にすべきだと思う。

[ 2007.02.19 ]