零と羊飼い


一迅社 一迅社文庫
零と羊飼い /西川真音

うわぁ、あざとい、あざとすぎる設定だっ!! そして、後半は、いかにも西川真音らしい展開っ!! ……ただ、ゲームでやると面白い構成なんだろうけど、小説の形式だと、ちょっと物足りなさを感じるかなぁ。

巨大隕石の接近により、地球は滅亡の危機にさらされていた。地球を救う唯一の手段は、異能者の生命を犠牲にする方法のみ。地球のために自分の生命を捧げる必要があると集められた少年たちは、残りの数日をどう生きるのか……。という感じで、もともとは、工画堂スタジオのゲーム『羊の方舟』が原作らしいのだけど、そちらは未プレイ。原作を知らなくても、あまり問題は感じなかったけれど、ただやっぱり、全体に説明不足な感は否めないかな。あと、物語の構造も、ゲームらしさを多分に残したものなので、そこも残念。

や、どうにもマルチエンド前提のシナリオなのよね。トラウマに立ち向かいつつ愛を確認する的な前半は、非常にせつなく暖かくて良かったし、そして、核心に至る後半の構成も非常に面白い。だけど、マルチエンドじゃないので、前半の雰囲気は中途半端なまま後半戦に突入。後半の構成も、エンディング→再スタートの過程がないと、どうにも、演出的に限界が……。やっぱり、こういう話を一本道でやられると、きちんとおもしろいだけに、いろいろ残念なんだよな。まあ、こういう構成の話は、もともと西川真音の持ち味みたいなもんだと思うので、仕方ないんだろうけど。

[ 2008.05.23 ]