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KADOKAWA 電撃文庫
竜殺しのブリュンヒルド /東崎惟子 -
最高傑作級。はじめから哀しい結末が明らかなのだけど、その哀しい結末に向けて、一歩づつ着実に進んでいくそんな作品。誰も救われない物語が、ただただせつなく、そして美しい。
第28回電撃小説大賞《銀賞》受賞の本格ファンタジー。一冊で完結している作品を新人賞の受賞作に選ぶのも、なかなか凄いよね。内容は、竜に育てられた少女が、人間社会で人の暖かさを学びながら、それでも竜を殺した実父への復讐にいたる、そんな物語。誰の想いも絶望的にすれ違っていて、しかも、絶望的にすれ違っていることを理解し、そして、哀しい結末に至ることをわかりながらも、それでもそうせずにはいられない、これ以外の選択肢はあり得ない、それが、ただただせつない。いやー、この物語、下手にハッピーエンドにでもしたら、途端に駄作に堕ちると思うのだけど、きちんと哀しい物語として容赦無く描き切ったのが、とにかく素晴らしい。序章と終章がまた美しい。間違いなく傑作だよね。
[ 2022.06.29 ]