ひとりぼっちのソユーズ


KADOKAWA 富士見L文庫
ひとりぼっちのソユーズ 君と月と恋、ときどき猫のお話 /七瀬夏扉

最高傑作級。切なく哀しく感動的な物語。

ソユーズ――国際宇宙ステーションへの連絡船として有名だけれども、もともとは有人月旅行計画のために開発され、けれども月には行けなかった宇宙船。この作品は、幼なじみの少女と少年が月に憧れ宇宙飛行士を目指す物語なのだけど、そのタイトルに「ソユーズ」と冠することからもわかる通り、とにかく哀しく切ない。子供時代から、中学、高校と、その一途で繊細な想いやすれ違いを、情緒的でせつなさあふれる筆致で綴られていて、それが哀しくて泣けてくる。

少年の一人称で綴られた物語なのだけど、その一人称視点のせいか、少女―ロシアとのハーフでその生まれのために宇宙への憧れが強く、しかし身体が弱い―ユーリヤとの距離感が絶妙で、また、多くを語らずに行間に託すような描写が素晴らしい。しかし、あとがきによると、これだけ削った文章なのに「カクヨム」掲載時に25,000字だったのを100,000文字に増量してるのか。って、「カクヨム」を見たら、三部構成の第一部の短編を増量して書籍化してるのんね。いやー、もちろん、作者、七瀬夏扉の物語も素晴らしいのだけど、このような形で書籍化した担当編集も凄いなぁ。

[ 2018.01.03 ]