最後にして最初のアイドル


早川書房 ハヤカワ文庫JA
最後にして最初のアイドル /草野原々

kindle版の半額セールに乗じて購入。もともと、『ラブライブ!』の二次創作として pixiv で公開されてたということだけど、なるほど、いい意味で素人らしい粗削りな怪作。話題になってたのは知ってたけど、うわっ、星雲賞受賞してたのかー。

まあ、『ラブライブ!』の二次創作ということで、あからさまに 矢澤にこらしいキャラと西木野真姫らしいキャラがSF的なアイドル活動していくわけよ。SFでこういうタイトルだと、そりゃそういう物語だよな、というお約束な感じではあるのだけど、ただ、途中途中の展開や描写がめちゃくちゃぶっ飛んでる。いいセンスだっ!! でも、作者がSF好きなのはわかるんだけど、『ラブライブ!』や矢澤にこへの愛情は感じなかったのが、ちょっともにょる。にこ や まきに、あまり魅力や輝きを感じない……。

この文庫版は短編集で、表題となっている「最後にして最初のアイドル」のほかに、ソシャゲをネタにした「エヴォリューションがーるず」と声優をネタにした「暗黒声優」が収録。この三編のなかでは、「エヴォリューションがーるず」がいちばん好みかな。トラックに轢かれた主人公がやりこんでるソシャゲの世界に転生して俺TUEEEEEEEEEする話。素人らしい筆致もあって、まさに「小説家になろう」で見かけるようなテイスト。主人公、洋子と途中で仲間になるキャラたちとの関係はめちゃ好み。意味不明に進化した他のプレイヤーとの戦闘も楽しい。

「暗黒声優」は、うーん、他の二編に比べると、いまいちに感じたのだけど、ネタがわからなかっただけかなぁ? ちゃんと、登場人物のモデルになってる声優までわかればよかったんだけど、最近の声優には疎いからなぁ。もし、モデルになる声優がいないのなら、作品としてパンチが弱すぎて話にならんよね。オタクネタとSFを混ぜるのは、三作目だと、正直、新味に欠けてツライというのもある。

[ 2018.12.16 ]