獅子は働かず 聖女は赤く


集英社 スーパーダッシュ文庫
獅子は働かず 聖女は赤く あいつ、真昼間から寝ておる /八薙玉造

八薙玉造といえば、デビュー作の『鉄球姫エミリー』は非常に高く評価されたものの、続く『神剣アオイ』で失速してあまり話題にもならなくなったとの認識でした。で、今更ながら三作目となる『獅子は働かず 聖女は赤く』に手を出してみたのですが、むちゃくちゃおもしろいんですけどっ!!

いや、何がおもしろいって、とにかくキャラが最高っ!! ヒモ的なダメ人間の主人公・ユリウスをはじめとして、無意識に刃物を振り回すシスター見習い・アンナと、頭が弱くてなにかと遊ばれるロリなお師匠様・サロメの漫才のような会話が楽しすぎる。例えシリアスな場面でもとことん笑いを取ろうとするキャラのやり取りが、そのギャップもあって、めちゃおもしろいのよ。『鉄球姫エミリー』と同様、中世ヨーロッパ風ファンタジーで、内乱の荒廃から立ち直りつつある地方都市を舞台に、聖職者を志すアンナは、最近自分を見つめる謎の視線を感じて……。という導入からはじまる物語で、コミカルなキャラの会話を前面に押し出しつつも、重く容赦のない展開は素晴らしいですね。なぜ、初っ端から包丁持ってるかな(笑)。そして、すぐ騙されるサロメとそれをいぢって遊ぶユリウスのコンビがなかなかいい味。ほんと、おもしろいっ!! ……まあ、一冊通してプロローグという感じなので、実際に素晴らしくなるかどうかは続き次第か。続きが凄く楽しみですっ!!

[ 2012.09.12 ]


集英社 スーパーダッシュ文庫
獅子は働かず 聖女は赤く2 あいつも昔はイイ子だったのに /八薙玉造

相変わらずキャラの掛け合いが楽しい。殺す殺されるというシリアスな展開というか、特に、八薙玉造は、主要キャラでもマジに殺しかねない怖さがあるのだけど、そんなシビアな話にもかかわらず、なんでここまでコミカルなんだ? 大事なシーンで、パンツパンツって、なんだよそれは(爆笑)。

そゆわけで、因縁ある地でかつての仲間、《獅子の牙》コルネリアが立ち塞がる。という感じで、うわぁ、圧倒的に強力な敵、御使い同士のバトルが熱いっ!! 他の作家だと「はいはい、どうせ仲間になるんでしょ」という展開なのだけど、そこは八薙玉造なので、気の抜けないシビアな展開がほんと怖いなぁ。そして、どんなシビアで重い場面でも、積極的に笑いを入れていく作風が、ほんと素晴らしいっ!! いやもう、明るく愉快な下ネタが、ほんと楽しくて、アンナさんをはじめ、残念すぎるキャラしかいねぇんですけど(笑)。……しかし、次は、どう考えても勝てそうにないんだけど、どうすんだ、この後?

[ 2012.09.27 ]


集英社 スーパーダッシュ文庫
獅子は働かず 聖女は赤く3 あいつはもう一人でも大丈夫じゃ /八薙玉造

やっぱり、すっげーおもしろい。そして、相変わらず、パンツかよっ!!

今回は、魔女の隠れ里《茨の城》にあと少しのところで、再び、中央教会の攻撃を受ける……。と、エーファとヒルデの姉妹が、すでに戦闘ではほとんど役立たずで、コメディ&お色気要員になっている件。一方、うひぃ~、コルネリアはともかくとして、フェル兄さんの結末がエグいなぁ。それとも、まだ、出てくるのか?

そして、明かされる《赤い聖女》マルレーネに絡む過去が、うわぁ、マルレーネは、悲劇のヒロイン的な立ち位置ではあるのだけど、その立場の人間としてはあまりにダメダメすぎる選択で、これは同情できないどころか、マジに最悪だ。むしろ、ユリウスはじめ、周りの人間が可愛そうすぎる。その運命を引き継ぐことになるアンナは……、続きは、どーなんのよ、いったいっ!!

[ 2012.10.01 ]


集英社 スーパーダッシュ文庫
獅子は働かず 聖女は赤く4 あいつ、我とか言いだしおった /八薙玉造

うーん、いまひとつ。いまいち盛り上がらないまま、ストーリーだけ進んでいく感じががが。いやー、ストーリー展開に納得感がないんだよなー。アンナやユリウスとか、本来、闘う必要も理由もないのに、強引に戦わされてる感。ちょっと、ストーリー展開が強引で無理筋じゃね? 教皇の正体とかも、もうちょっと伏線張るなり、盛り上がるように開示すればいいのに。

シリアスな展開の中で、コミカルなキャラのやり取りは、相変わらず、すっげー面白いんだけど、強引なストーリー展開は、シリアスな部分を薄っぺらくしてるようにしか見えなくて、にんとも。もともと、コミカルとシリアスのギャップが面白い作品なんだけど、シリアス部分の出来が悪いと、コミカル部分も生きてこない感じになってしまってるのが残念。

[ 2013.04.09 ]


集英社 スーパーダッシュ文庫
獅子は働かず 聖女は赤く5 かくして、あいつは働いた /八薙玉造

おぉ、綺麗な最終巻だ。きちんと展開すべきところで展開し、盛り上がるところで盛り上がる、教科書のようによくできたストーリー構成。その分、ビックリするような驚きの展開はないのだけど、もともとキャラの掛け合いで魅せる作風だし、これが正しいエンディングだよなー。……好きな作品だったので、5巻でエンディングを迎えてしまったことは、ちょっと残念だけど。

そゆわけで、ラスボス・ヴァルターとの最終決戦。御使い総揃いのロボット大決戦で、凄いっ、圧巻すぎるっ!! そして、いったんハッピーエンドになりそうに停戦してからの展開が、すごくお約束すぎて、すばらしすぎるっ!! ……ラストにいたるまで、期待通りにお約束な展開で、とにかく面白かった。そのシリアスな展開の中でも、ユリウス、アンナ、サロメ三人の掛け合いが最後まで面白くて、ほんとにいい最終巻でした。

[ 2015.01.17 ]