ひとつ海のパラスアテナ


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
ひとつ海のパラスアテナ /鳩見すた

陸地のほとんどが海に沈んだ世界というと、[TVA]『未来少年コナン』を思い出します。そのせいもあってか、昔の宮崎駿アニメのテイストを感じる作品だなぁん。

今年の電撃小説大賞、<大賞>受賞作。陸地が消えて海だけになり文明が後退した近未来の地球を舞台に、点在する浮き島を巡って荷物を運ぶ少女アキの物語。うわぁ、明るい女の子を主人公にしたおおらかな雰囲気の作品にもかかわらず、生と死が紙一重で過酷すぎる展開が凄い。アキの視点を通して童話のように純朴に描かれているけれど、タカちゃんの職業なんかも、わりとエゲつないよなぁ。ストーリーの根幹を成していくキーちゃんのエピソードが卑怯すぎて、これだけで、読むに値する作品だよね。

過酷な世界と能天気な雰囲気のギャップがいい味だしていて、百合っぽいエッセンスも美味しい。ラストは超展開すぎる気もするけど、宮崎駿っぽいイメージの作品ということでいえば、これはこれでありかな。……しかし、次巻予告を見ると、また、遭難するみたいだけど、どんなだ(^^;。

[ 2015.07.29 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
ひとつ海のパラスアテナ2 /鳩見すた

まるで成長していない……。や、まるでってことはないのだけど、もちょっとアキを成長させて、見せ場を作ってもいいのではないかしら。アキに降りかかる試練が半端ないので仕方ない部分はあるんだろうけど、アキが自分で解決する場面が少なくご都合主義的な展開が多いのがちょっと……。

そゆわけで、大陸が海に沈んで文明が後退した世界で生き抜く少女・アキの話。前巻ラストでタカと別れてこの2巻はどうするんだろと思ってたのだけど、しっかりものの妹的なオルカが登場してきた。ただ、オルカとの絡みよりも、タカとの絡みのほうがおもしろかった印象で、ちょっといまいち。要領の悪いアキのせいで、さんざん不幸を重ねる展開はおもしろいのだけど、場当たり的でご都合主義的な解決も多く、ぶっちゃけストーリー構成は上手くないよね。ストーリーが散漫としていて、どうにもダメ。やはり、もうちょっとアキが自力で解決する展開がほしいなぁ。まあ、ラストはいい意味で超展開で、続きは期待したいところだけど。

[ 2015.08.03 ]


アスキー・メディアワークス 電撃文庫
ひとつ海のパラスアテナ3 /鳩見すた

後半の展開のように、豪快に物語が進むともっと面白いと思うのだがなー。アキが自滅してピンチに陥ってから運で解決するというパターンを繰り返しているだけなので、せめて豪快に魅せてくれないと面白くない。本来であれば、アキが成長して自力で解決するような展開を描くべきだと思うのだけど、どうやらそういう展開は望めそうもないし……。

そゆわけで、すべての陸地が水没した未来世界で少年のように快活に生きる少女を描いたシリーズ第三弾。旧世界の遺物の変な扱いやスケール大きそうな設定とかは面白いのだけど、出来の悪いワンパターンを繰り返すだけの展開はさすがにどうかと。自滅してすぐに生命の危機に陥る主人公と、そこからご都合主義で解決するスタイル。生命の危機も運も、めちゃくちゃ安いな。主人公のアキもそうだけど、この作者自身も、まったく成長を感じさせず、むしろ劣化している感が強いのは、読んでてツライ。いや、新人作家なんだから、出版前にもうちょっと編集がちゃんと読んでリテイク出すべきだと思うのだけど。

[ 2015.09.13 ]