玉葱とクラリオン
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ホビージャパン HJノベルス
玉葱とクラリオン(1) /水月一人 -
「小説家になろう」の中でもダントツに面白くて書籍化していないのが不思議で仕方なかったのだけど、完結後6年近く経った今、まさかの書籍化ですよ。マジにめちゃくちゃ面白いので、全世界の人類に読んでほしい。
内容は、ソシャゲをインストールして遊ぼうとしたら、いつの間にかゲーム風な世界に転移していたという異世界転移モノ。チュートリアルが始まったりステイタス画面が表示されたりいかにもゲーム世界なのだけどゲームとしては技術的にあり得ない。一方で、月が二つあることから地球ではないものの、国名などは確実に地球の文化の影響を受けている、と、そういう謎を軸にしたファンタジーの皮を被ったSF的なテーマを扱ってる一方で、知識チートをやろうとしたらすでに前の勇者にやられていたので、いきなり詐欺師を始める無茶苦茶なストーリー展開が凄い。でも、副題の「詐欺師から始める成り上がり英雄譚」というのも、それもそれで全然違うぞ(^^;。異世界転移の皮は被っているのだけど、普通のなろう系と一線を画した内容で、なんとも素晴らしさを紹介しにくいんだよなー。そういう一言で内容を説明しづらいところが、書籍化しにくかったのだと思うのだけど。
とにかく、読めば面白さはわかると思うので、書籍化を機会に多くの人に読んでほしい。数多ある「小説家になろう」の作品の中でも、ダントツに面白い作品だと思う。
それにしても、2016年〜2017年にかけて「小説家になろう」で連載されていた作品が、6年近く経って書籍化って、ほんとめでたい。しかも、完結してるのでどんどん続刊が出せる!! ……と思ったら、2巻は2024年の夏ですと? どういうことー。
[ 2023.10.23 ]
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ホビージャパン HJノベルス
玉葱とクラリオン(2) 詐欺師から始める成り上がり英雄譚 /水月一人 -
「小説家になろう」で凄く好きな作品。2巻も無事に発売されたっ!!
ゲームのような異世界に転移?ログイン?した但馬波留。1巻では知識チートでいきなりマルチ商法をはじめるという凄い展開だったのだけど、2巻ではフツーに紙づくり。ただ、紙づくりで披露される蘊蓄の細かさこそが、『玉葱とクラリオン』の魅力の一つだよなぁ。
他の作品だと、知識チートで紙を作るとしたら、植物を煮たり叩いたりして繊維を取り出し漉くぐらいの解像度だと思うのだけど、なんでセルロースの化学的な説明からトイレットペーパの歴史、植物の進化史から水酸化ナトリウムの生成、モーターの基本原理の説明まで、軽薄な主人公の行動の合間あいまで語られていて、その蘊蓄と軽薄さのギャップが凄い。
物語的にも、軽薄でコミカルな筆致にも関わらず、主人公の悩みや葛藤は深く、また重い展開も待ち受けていて、こうして書籍版で読み返すと、改めて「小説家になろう」の中でも随一の傑作だと思う。是非、最後まで書籍で出して欲しいなぁ。
[ 2024.03.04 ]