好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!

KADOKAWA 電撃文庫
ウィザーズ・ブレインX 光の空 /三枝零一

完結。完結したのは素晴らしいけど、うーん。

『ウィザーズ・ブレイン』って、一人の魔法士の少女と1000万人の市民のどちらを救うか?という典型的なトロッコ問題が絶対的なテーマで、両者を救うような奇跡は起きない絶望的な世界で悩みながらも選択をしその選択に後悔しながらそれでも前に進む、ということをずっと描いてきたわけよ。

この世界の人々に誰も悪者はいなくて、みんな本当は魔法士も市民も両方とも救いたいのに、それぞれに選択を迫られそれぞれの陣営に分かれて戦っていたのよ。で、今回の選択は、どちらの陣営を絶滅させるかという今まで以上に過酷な選択で、仮にここで第三の道を選ぶのであれば、今まで以上にきちんと説得力のある選択と結果でないとありえないと思うんですよね。

もともと人類の滅亡をわずか数十年先延ばしするためだけに魔法士の犠牲者を強いるような絶望的な世界だったけれど、シリーズ終盤で描かれた魔法士と「シティ」の戦争は、両陣営のあらゆるリソースを使い果たし、いよいよ滅亡寸前まで人類を追い詰めたわけですよ。ベルリン、マサチューセッツは落ち、シティ連合は瓦解。賢人会議も多くの負傷者と離反者をだし崩壊寸前。どちらかが勝てば気象は戻るけど、単なる引き分けは選択から逃げただけでしかなく、結局、1巻の頃と比べて凄まじく状況は後退している。そして、もちろんなにも解決してない。

うーん、結局、安易なハッピーエンド。安易なだけのハッピーエンドなんだよなぁ。

[ 2023.09.11 ]