好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!

中央公論新社 C★NOVELSファンタジア
夢の上3 光輝晶・闇輝晶 /多崎礼

民衆が虐げられている王国で、やがて反乱へ至る道程を、異なる六人の視点で綴った本作もいよいよ完結。ストーリー展開は全く同じなだけに、登場人物のせつない心情が際立つ、とにかく綺麗な物語でした。

そういうわけで最終巻は二人の王子、アライスとツェドカ視点。なんやかんやでアライス中心の物語なのに、ラストの〆がツェドカなのはどうしてだ?と思ったら、そういうことか。多くの人に支えられて生きてきたアライスと違い、絶望と無力感の中、誰にも理解されない孤独でひたむきな闘いの道を歩んできたツェドカの想いが切なすぎるね。そのラストシーンは、まさに救済を、夜明けを感じさせる綺麗な情景。そして、視点を変えただけでストーリーは同じなのに、読者に提示する情報をコントロールして、最後まで興味を惹きつけつつ読ませる構成は、さすがとしか言いようがない。見事に計算された構成で魅せる綺麗で切ない物語は、ほんと素晴らしかったです。

[ 2011.06.04 ]