ライトノベルとは

ライトノベルとは、10代後半~40代を主な読者とする若者向けエンターテイメント小説です。名前に“ライト”とありますが、内容の軽重や物理的な重さとは関係ありません。

ライトノベルの読者層は10代後半~40代と広いですが、レーベル毎にある程度の住み分けはあり、おおよそ、電撃文庫のような従来のライトノベルは高校生・大学生、メディアワークス文庫のようなライト文芸は20代の社会人、異世界転生で話題のなろう系レーベルは30代以上をターゲットとしています。ただし、これらは一応の目安で、電撃文庫を40代が読んだり、なろう系を高校生が読んだりすることも普通にあります。

日本における若者向けのエンターテイメント小説はアニメやゲームとともに発展してきたこと、また、若者の中で小説にお金を使う層にはオタクが多いことから、アニメ調のイラストを使っていたり、オタク好みの内容になってたりすることが特徴となっています。もちろん、オタク好みといってもレーベルによって濃淡はあり、例えば、少女小説の姫嫁系はガチガチにオタク向けと言われる一方、ライト文芸は比較的オタク的な要素を抑えています。

なぜライトノベルと呼ばれるようになったのか?

「ライトノベル」という名称は、1990年頃にニフティサーブで、スニーカー文庫やコバルト文庫などの若者向けの小説に対して名づけられたことが知られています。当時、若者向けの小説の名称としては、「ジュブナイル」や「ヤングアダルト」という呼び方がありましたが、「ジュブナイルは児童書を含み、ヤングアダルトは若者向けのアダルト小説と思われたくなかった」ということで、わざわざ新語を作ったとのこと。当初は、あくまでニフティローカルな呼び方でした。

この「ライトノベル」というニフティローカルな呼び方が一般に用いられるようになったのは、2000年代はじめのことです。当時の出版物を確認すると、2001年ぐらいまでは「ヤングアダルト」もしくは「ティーンズノベル」という呼び方が主流だったようですが、2002年~2003年にかけて、一気に「ライトノベル」に変わっていっています。では、「ライトノベル」と呼ばれるようになる少し前、2000年ぐらいの状況はというと、

  • 読者層が小学生以上→高校生以上に上昇(1990年代前半の富士見ファンタジア文庫やティーンズハートは小学生高学年以上の10代がターゲットでしたが、1990年代後半に台頭した電撃文庫やホワイトハートは高校生~20代)
  • 上遠野浩平『ブギーポップ』をはじめ、雑誌等で特集される作品も増えていた
  • 「ジュブナイル」「ヤングアダルト」「ティーンズノベル」「ジュニア小説」等々、さまざまな呼ばれ方をされていて、たびたび呼び方について議論になっていた
  • また、これらの名称は10代向け、子供向けという印象が強く、作家や読者などからも子供向けと呼ばれることに違和感を訴える声が増えていた
  • 大塚英志『キャラクター小説の作り方』や東浩紀『物語化するポストモダン』など評論等でも、新しいタイプの小説として語られるようになってきていた

つまり、読者層の上昇によって雑誌やネットで紹介されることが多くなったにもかかわらず、「ジュブナイル」「ヤングアダルト」「ティーンズノベル」「ジュニア小説」と呼び方も定まってない上にそれらの呼び方には違和感があり、どうせなら新しい名前で呼びたいいう機運が高まってたんですよね。そこで、10代向けを連想しない「ライトノベル」という名称が注目され、いっきに一般にも広まっていきました。

ライトノベルのあいまいさ

「ライトノベル」という呼び方が一般に広がると、今度は、「ライトノベルの定義がわからない」と言われるようになります。そりゃ、10代向けを連想しないから「ライトノベル」と呼ばれるようになったわけですから。

また、ライトノベルを「若者向け」と言いながら、すでに30代40代まで読者層が拡大していることも問題です。2000年代までは、「30代以上の読者はいても、出版社はあくまで高校生&大学生向けに作っている」と言われてたんですが、2010年代に入ると30代以上をターゲットにしたライトノベルレーベルも登場してきました。30代以上の読者で人数が多いのは団塊ジュニア世代、1971~74年生まれの世代なのですが、この世代は、あと数年で50代に突入していきます。そうなると、さすがに若者向けとは言えないですよね。

加えて、同じ作品でも、若者向けとするか一般向けとするかは、出版社の販売戦略によって変わることが、さらにライトノベルをあいまいにしています。同じ作家の似たような小説でも、若者向けと販売されたり一般向けとして発売されたりしますし、それどころか、同じ作品でも、若者向けと一般向けの両方で発売されることもあります。よく挙げられる例が、米澤穂信の『氷菓(古典部シリーズ)』や桜庭一樹の『GOSICK』で、どちらも若者向けのライトノベルレーベルから出版されたのちに、一般向けのレーベルで改めて出版されています。『氷菓』『GOSICK』はアニメ化もされていて、オタク向けの特徴も備えてるといっていいと思うのですが、これでは、なにを持ってライトノベルと呼べばいいのかわからなくなります。

そのため、最近では、ライトノベルを「若者向け」ではなく「オタク向けの小説」、さらに、「若者・オタク向けのレーベル(=ライトノベルレーベル)から出版された小説」と再定義する人も多くいます。

ライトノベルの「軽さ」への誤解

ライト=軽いとの連想から、ライトノベルを「漫画のように気軽に読める小説」というように考える人もいますが、それは誤解です。もともと若者は、とかく背伸びした読書をすること知られて、むしろ難しい内容の小説を好む傾向があります。古参のライトノベル読みの中にも、高校生の頃に純文学に手を出したり、海外小説を原著で読んだりした人も少なくないのではないでしょうか? 純文学ほどいかなくても、特に高校生や大学生向けのライトノベルの中には、比較的難しいものがあります。例えば、SFは一般的には難しいものを捉えられていて、ライトノベルとSF専門のレーベルを除くと、一般的な大衆小説では、ほぼ扱われないテーマなんですよね。ライトノベルに比べると、一般的な大衆小説のほうが老いも若きも楽しめるように書かれているわけで、とうぜん読みやすいわけです。

ただ、あかほりさとる や 花井愛子が活躍した1990年前後には、小学生高学年~中学生に向けた軽いライトノベルが流行った時期もありました。でも、1990年代後半には、ビジネスとして立ちいかなくなり、ライトノベルとしては撤退しています。いや、「小学生高学年~中学生に向けた軽い小説」って、要は、大人が子供に向けて書く児童文学とスタンスが同じなんですよね。しかも、あかほりさとるが描くような小説って、保護者受けが良くなく、それでは、持続的に売れるわけない。今、そのターゲット層には、角川つばさ文庫のように、ライトノベルをきちんと子供向けにリライトすることでビジネスにしています。

最近のライトノベルの変化

若者向けの小説、ライトノベルも、時代によって多少の変化があります。最後に、ここ10年ぐらいの変化についてまとめておきます。ざっくりいうと、男性向けでは、高校生・大学生をメインターゲットとした主要レーベルは大きく変わっていませんが、それとは別に、30代40代向けのレーベルが次々と出版されています。女性向けでは、従来のレーベルも含め、読者層全体が高年齢化しているといわれています。

電撃文庫のような従来からある男性向けのレーベルについては、あまり大きな変化はありません。メインの対象年齢は、当時も今も高校生~大学生で変化はなく、極端に異世界転生モノが増えたとか、そういうこともありません。もちろん、多少の流行り廃りはありますが、もし、「昔の電撃文庫のほうがおもしろかった」と思う方がいたら、むしろ自身の変化を疑うべきです。

男性向けで大きく変わったのは、30代40代向けのレーベルが凄くたくさん創刊されたことです。異世界転生ばかりといわれるのも、これら新創刊されたレーベルたちのせいです。1990年代に『スレイヤーズ』や『オーフェン』などの異世界ファンタジーを読んでいた世代が、Web小説の台頭を受けて、再びライトノベルに戻ってきていると言われています。まあ、異世界はともかく転生はどこから来たんだというと、……今の30代40代の状況を察していただきたいです。

女性向けのライトノベルはかなり大きく変わったといわれています。コバルト文庫などの従来のレーベルは、読者の固定化によって高年齢化しており、それに伴い内容も固定読者が好むようにオタク化が激しいようです。一方、メディアワークス文庫やオレンジ文庫などライト文芸と呼ばれるレーベルが、20代の比較的若いライトオタクの受け皿になっているとも言われています。

[ 2017.05.21 ]

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