2007年のライトノベルはどうなるか?
正月なので、たまにはだらだらと。本当は、三が日のうちに書こうと思ってたんですけど(汗;。……なんか似たようなネタで書いたことがあるなと思ったら、宝島社の『このライトノベルがすごい! 2007』に書いた原稿か(^^;。
とりあえず、2007年を占うとしたら、以下の3点でしょう。
- ハルヒの影響は?
- ガガガ&ルルルはどうなるのか?
- 萌え系(オタク向け)ライトノベルはどうなるのか?
以下、それぞれについて書いてみます。微妙にずれてても気にしない方向で。
1. ハルヒの影響は?
2006年のライトノベルを振り返ると、いちばん大きなニュースは、『涼宮ハルヒの憂鬱』のブームでしょう。では、このブームは、2007年にどう影響するでしょうか? 結論から言えば、影響は少ない、または、限定的であると言えそうです。
何故、影響が少ないかといえば、ライトノベルの場合は、あるシリーズが売れたといっても、それに近い別のシリーズが引きづられて売れるということはないようです。なので、出版社の立場で『ハルヒ』のような作品を増やそうとする戦略をとる可能性は少なく、実際、今のところそういう動きはありません。まあ、ここら辺は『マリみて』が流行った時と一緒ですね。エロゲとかだと、そういう雰囲気の作品が出てくるかもしれませんが。
ただ、限定的に影響があるかもしれないとすれば、メディアミックス的には、『ハルヒ』の次として、異世界ファンタジーより学園ラブコメ、ストーリー重視よりもキャラ重視の作品が着目されるようになるのではないかということと、あと、新人賞の応募作には、『ハルヒ』っぽい作品が増えそうということ。ただ、そういう応募作品は、なかなかデビューまで生き残れないと思いますが。
2. ガガガ&ルルルはどうなるのか?
最後の大型新規レーベルとして、小学館からガガガ文庫とルルル文庫の創刊が予定されています。ガガガとルルルの特徴は、なんといっても「大手出版社による参入」である点でしょう。つまり、創刊時にはそれなりの営業を行うことができ、いざとなったら売れ線の作家や絵師も引っ張ってくるようなことができ、人気漫画のノベライズなんてこともしてくる可能性があります。そしてそれは、参入が成功しても失敗しても、ライトノベル全体への影響が大きいということです。 ……まあ、スーパークエスト&パレット文庫の前例があるので、ぜんぜん影響はないんじゃない?という説もありますが(^^;。
で、そのガガガ&ルルルが目指す方向性は、「10代中高生向けで電撃文庫のマーケットを避けるようなもの」のように見えるのだけど、果たして成功するのでしょうか。成功するとしても、既存のライトノベルとは異なるマーケットを形成することが前提のようです。つまり、既存のライトノベルに関しては、成功しても失敗しても、悪い影響が出る可能性のほうが高いと見ています。
3. 萌え系(オタク向け)ライトノベルはどうなるのか?
ここ数年、10代の中高生だけでなく、20代30代の読者も獲得していると言われているライトノベルですが、この20代30代向けのライトノベルはどうなるのでしょうか? ライトノベルの中でも、20代30代向けの作品は大別すると三つあって、一つが竹宮ゆゆこに代表される萌え系のライトノベル、もう一つが桜庭一樹に代表されるライトノベル以外でも通用しそうな越境系のライトノベル、あとの一つは、1990年代前半に回帰するようなファンタジー系のライトノベルです。ただ、ファンタジー系のライトノベルは、三浦良やいわなぎ一葉のように注目できる新人も出てきてますが、まだ、核となるような作品は出てきてないように思えます。
この20代30代向けのライトノベルのうち、萌え系ライトノベルは、いい加減、市場的にも作品的にも飽和してきてるので、そろそろつらいんじゃない?と一昨年ぐらいには思ってたりしてたのだけど、MF文庫Jの堅調な様子を見てると、まだまだ続くのではないか?と考え直しています。萌え系ライトノベルの読者は、20代30代のオタク系の読者なわけだけど、つまり、この読者層がわりと堅い層を形成してるじゃないかなー、と。一方、越境系のライトノベルも堅調なのですが、ただし、ライトノベルから出て行って戻ってこない傾向が強くなっているように思えます。例えば、橋本紡や米澤穂信は、すでにライトノベル作家じゃなくなりつつありますよね。
で、結果として、20代30代向けのライトノベルは、萌え系の作品の割合が増えるように思えます。萌え系では、今だ「ツンデレ」が優勢なので、なにか転換が欲しいところ。あと、方向性としては、エロ強化だと思うのだけど、どこまで行くかに期待です。<をい。ただ、20代30代向けのライトノベル全体では、萌え系の割合が増えると、ちょっと勢いが弱くなるように思えます。越境系と一緒にライトノベルの外へ出ろ、という話もあるかもしれません。
そゆわけで、2007年のライトノベルについて書いてみました、ぐだぐだですが(^^;。なんというか、ただでさえライトノベルブームは収束する方向に推移してるのに、その傾向が強くなりそうな感じ。なにかブレイクスルーとなる作品が欲しまりです。
[ 2007.01.05 ]