好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!

小学館 ガガガ文庫
月とライカと吸血姫5 /牧野圭祐

1960年代の米ソ宇宙開発競争を下敷きにしたシリーズ5冊め。物語は再び共和国サイドへ。

って、共和国サイドに戻ってきたけれど、共和国の下敷きになってるソビエト連邦の宇宙開発は、ここから暗礁に乗り上げていくんですよね。ソ連の月探査計画も月の裏側の撮影辺りまでは先行していたんだけど、1966年の主任デザイナーのコロリョフの死から、宇宙船ソユーズ1号の飛行失敗、N-1ロケットの発射失敗と続き、結局、ソ連は月に行けなかったのが歴史上の事実。また、世界初の宇宙飛行士ガガーリンも1968年に謎の墜落事故で死亡してるんすよね。

で、この5巻は、チーフ・コローヴィンの入院から宇宙船の飛行計画へと進む展開。史実準拠だとしたら、コローヴィンもミハイルもレフも死ぬ運命しか見えない。そして物語は、史実通りに進んでいく……。

米ソの共同開発を実現するには、確かに、ソ連側の挫折を描かないといけないのはわかるんだけど、不幸に向かって進む展開は、読んでいてとにかくシンドかった。でも、続刊が続けば描かれるであろう、サターンVにソユーズを載せて月を目指す展開は、宇宙開発に夢を見ていた人間には、ロマン以外に何者でもないよなぁ。

[ 2020.08.31 ]