好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! - 2020年8月


2020 8 2

ライトノベル界隈でも、純文学の定義について話題に上ることがあります。そこで、入門書的なものを読んでみようと思って、そのものずばりなタイトルの中公新書ラクレ『純文学とは何か /小谷野敦』を買ってみました。

本の内容に行く前に、まず、私の「純文学」に関する理解をまとめておきます。

日本では、大正から昭和初期にかけて、一般大衆にも広く小説が読まれるようになる。一般大衆向けの小説は、新聞や雑誌に次々と掲載されていくが、一方、文学ファン向けの同人誌や文芸誌は以前からあって、これらの同人誌や文芸誌が「最近の一般大衆向けの小説と俺たちの読み書きしてる小説は違う!!」と言い出して「純文学」を名乗るようになったのが「純文学」のはじまり。なので今でも、文芸誌デビューの作家を純文学作家と呼び、純文学作家の書いた作品を「純文学」と呼ぶ。

「純文学」は「芸術性を重視した文学」と言われるが、この「芸術性」には明確な定義はなく、「読者に媚びていない」とか「商業主義にまみれてない」とか作者の創作姿勢が「芸術性」として語られることが多い。一応、内容については、私小説的なものが「純文学」に分類される、というか、文芸誌からデビューしようと思ったら私小説っぽい作品以外はカテエラ、って感じでしょうか。

まあ、昭和初期に日本の文学界隈の人が言い出した言葉なので、海外には「純文学」に相当する言葉がなかったり、「純文学」の議論は昭和以降の文学に限定されることが多いんですが、この本の作者の小谷野敦は、「海外作品や古典にも、きちんと純文学と大衆文学の区別はある」といって、古今東西いろいろな作品名を挙げながら、「純文学とは何か」について迫るというのが本書の趣旨。

……だと思うんですが、作品名を挙げて関係ない話をしてるだけみたいなことが多く、「純文学とは何か」ということにはぜんぜん踏み込んでないんですよね、この本。

例えば、ライトノベルや美少女ゲームについても触れているのだけど、ライトノベルに関しては、『ハルヒ』や『俺妹』を読んでみたら面白かったという話で、さらに美少女ゲームに関しては「安いパソコン用のを買ってきてやった」としか書いてなくて、いやいや、「純文学」となにが同じでなにが違うのか書かないと、名前出した意味ないじゃーん!!

古今東西の文学だけでなく、アニメや漫画、特撮、映画、音楽まで言及していて、言及してる範囲はやたら広いんだけど、「純文学とは何か」という点にはぜんぜん回答してない。基本的に「純文学的だから純文学」「通俗的だから大衆文学」程度のことしかほとんど言ってないんですよ。小説に関しては、一応、「風刺的で、シニカル、アイロニーな要素を持ち、定型的な物語の類型に属さない作品」を「純文学」としている風ではあるんだけど、結局、通俗的か否かは世間での受け取られ方に帰結するので、明確な基準なんてないという話な気がする。

[ 純文学とは何か ]


2020 8 14

KADOKAWA 電撃文庫
ブギーポップ・オールマイティ ディジーがリジーを想うとき /上遠野浩平

綺~っ綺~っ綺~っっ、織機綺っっっっ!!

今になってスプーキーE死後の織機綺の物語かっっっ!! いきなり『VSイマジネーター』の少しあとぐらい?の話が出版されてきたので、ちと当惑を覚えざるをえないのだけど(^^;、それでも、織機綺メインで炎の魔女こと霧間凪が活躍する話であれば、これが面白くないわけがないっ!! いや~、やっぱ、織機綺と霧間凪は、魅力的なキャラの多いブギーポップシリーズの中でも、特に素敵だわぁ~~~。この魅力的なキャラ二人に加えて、今回はあのイマジネーター絡みの事件なので、マジすげーおもしろいわっっっ!!

物語のほうは、スプーキーEの死の真相を探りに統和機構の合成人間が派遣され、その調査に綺や凪が巻き込まれていくという話。ああ、読むまでにちょっと積んでたのだけど、出版されたの『ブギーポップ』の新アニメ放映直後だったっけか。だからこの内容なのかしらん? ……今になって、織機綺のこういう話をぶちこんでくるか?と多少もやもやする部分はあるけれど、まあ、織機綺メインだし、ハンバーガーのエピソードも良かったので、悪くはないか。そして、今回、ブギーポップさんがやたらお茶目だったんですけど、あんなキャラでしたっけ?(笑)

[ ブギーポップ ]


2020 8 15

朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ15 魔宮変 /夢枕獏

……俺たちの菊地がなんか雰囲気変わってしまい、これじゃない感(T-T)。

それはともかくうわぁぁぁぁぁぁ、マジにいよいよクライマックスぅぅぅぅぅっっっ!! ルシフェル教団に捕らわれた織部深雪を救うため、久鬼麗一が、亜室由魅が、真壁雲斎が、宇名月典善が、久鬼玄造が、菊地良二が、龍王院弘が、九十九三蔵が、そして大鳳吼が、決戦の地・伊豆天城岳高原カントリークラブへ集結っっっ!! むちゃくちゃ盛り上がってまいりましたぁぁぁぁっっっ!! すげーすげー、とにかくすげぇぇぇぇぇっ!!

1982年にスタートした本シリーズも、約40年の時を経て、とうとうここまで来たか。あとがきによると、夢枕獏も六十九歳で“徹夜が前ほどできなくなってきている”とのことだけど、……いやそれ、六十九歳の悩みじゃないだろ(^^;。

[ キマイラ ]


2020 8 16

SBクリエイティブ GA文庫
りゅうおうのおしごと! 13 /白鳥士郎

海外へ旅立つ澪の見送りを軸に、ドラマCDなどの小話を再構成した短編集。収録されている短編は、ロリコンネタが強くおふざけが過ぎていて、正直いまいちかなぁ。そもそも、シャル推しすぎるだろっ!! 元はドラマCDなので仕方ないんだろうけど、小説本編に組み入れるにはいろいろと違和感あるよね。

それよりも見どころはやっぱり、澪との一連の別れを描いた書き下ろしパートなのだけど、いやぁ、天ちゃんもいいし、ここしばらく存在感のなかった あい も、今後の活躍を期待させる内容で、これは次巻からはじまるという最終章がめちゃくちゃ楽しみ。……まあ、最終章を期待させる内容ではあるんだけど、この巻に関しては、ちょっと物足りなさを感じなくはないけどさ。

[ りゅうおうのおしごと! ]


2020 8 31

小学館 ガガガ文庫
月とライカと吸血姫5 /牧野圭祐

1960年代の米ソ宇宙開発競争を下敷きにしたシリーズ5冊め。物語は再び共和国サイドへ。

って、共和国サイドに戻ってきたけれど、共和国の下敷きになってるソビエト連邦の宇宙開発は、ここから暗礁に乗り上げていくんですよね。ソ連の月探査計画も月の裏側の撮影辺りまでは先行していたんだけど、1966年の主任デザイナーのコロリョフの死から、宇宙船ソユーズ1号の飛行失敗、N-1ロケットの発射失敗と続き、結局、ソ連は月に行けなかったのが歴史上の事実。また、世界初の宇宙飛行士ガガーリンも1968年に謎の墜落事故で死亡してるんすよね。

で、この5巻は、チーフ・コローヴィンの入院から宇宙船の飛行計画へと進む展開。史実準拠だとしたら、コローヴィンもミハイルもレフも死ぬ運命しか見えない。そして物語は、史実通りに進んでいく……。

米ソの共同開発を実現するには、確かに、ソ連側の挫折を描かないといけないのはわかるんだけど、不幸に向かって進む展開は、読んでいてとにかくシンドかった。でも、続刊が続けば描かれるであろう、サターンVにソユーズを載せて月を目指す展開は、宇宙開発に夢を見ていた人間には、ロマン以外に何者でもないよなぁ。

[ 月とライカと吸血姫 ]