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早川書房
転生令嬢と数奇な人生を(1) 辺境の花嫁 /かみはら -
素晴らしい素晴らしい。これは素晴らしいジェットコースター系少女小説。目まぐるしく変わっていく令嬢の運命、まさに“数奇な人生”がマジ素晴らしいわ。
「早川書房がなろう系異世界転生に手を出した」ということで話題に上った本作だけど、いやー、確かに「小説家になろう」発の異世界転生だけど、ぜんぜん「なろう」のフォーマットじゃねーぞ、これ。むしろ、一昔前の少女小説のあったような作風で、かつてのコバルト文庫やホワイトハートで見かけたような内容だよね。
物語は導入から、貴族家からの追放、そして復権、さらに突然の婚姻と、目まぐるしく人生が移り変わるジェットコースター。マジ往年の少女小説の王道だっ!! 正直、ちょっと詰め込みすぎな気はするけど(笑)。
一応、なろう発っぽく異世界転生要素はあるのだけど、いわゆるチート能力は微塵もなく、あくまで、「現代日本の価値観を持つ主人公」という感情移入のための装置としてしか機能してないのよ。そうそう、前世紀の異世界転生/転移の主人公は、特に少女漫画や少女小説では、こういう感じの主人公が多かった気がする。いやー、なろう系の文脈だと、絶対、何らかのチート能力は持たせると思うんだけどなぁ。そんなところも、凄く一昔の少女小説っぽい。
これを早川書房からってことだけど、……作品のポテンシャルに比べて、正直、早川書房、凄く微妙です。「なろう」からの書籍化ってめちゃくちゃ編集者の力量が見えるんだけど、社内にノウハウなくて、それっぽく一般的な少女小説を真似ただけな気がする。いやまぁ、そりゃノウハウ持ってないだろ、ってのは当然な気もするのだけど。
[ 2022.08.08 ]