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笠間書院
ライトノベルから見た少年/少女小説史 /大橋崇行

「無知な大森望や大塚英志、早見裕司の代わりに、正しいライトノベルの起源について教えてやんよ」というのが、この本の趣旨なのだけど、えっと、まるでライトノベルの起源が明治初期や江戸時代にあるような言いようは、どういう冗談だ(笑)。いや、文献による事実の積み重ねは悪くないのだけど、そこから導かれる作者の主張がどうにも捻じ曲がっている。作者の大橋崇行は、「ライトノベルの起源は1970年代ではなく、もっと昔にまで遡れる」と主張するのだけど、丁寧に積み重ねられた資料は、1950年代までの特に少年小説は1970年以降のそれとは明らかな断絶があることを示していて、また、文化的背景にも差異が認められるようにしか読み取れないんだよなー。纏められた資料を普通に読めば、「明治期からの少年小説は漫画に影響を与えながらも衰退。その後、漫画やアニメの影響を受けたライトノベルが1970年代に生まれた」という結論にしかならんだろ。

にもかかわらず、「大森、大塚、早見らの1970年代ライトノベル起源説は間違い。1960年前後の生まれの大森、大塚、早見らは、それ以前の作品は知らず、単に10代の頃に読んだ作品を特別視してるだけ」というのは、あまりに酷い。そもそも、大森の著作である『ライトノベル☆めった斬り!』でも、“十代の少年少女向け娯楽小説は、太古の昔からあった”“遡っちゃうとどこまでも行っちゃうよ。戦前どころか明治大正まで(笑)”“吉屋信子から始めると大変だよ(笑)”という記述があるように、過去の少年少女小説の流れを踏まえたうえで、大森らは1970年代をライトノベルの起源と位置づけているわけよ。大森らのそういう議論は無視して、「生まれる前だから知らないだけ」として片付けてしまうのは、もうむちゃくちゃだよね。

まあ、刺激的な主張をしようとしてやっちゃった感が漂う論考なのだけど、ライトノベル的なものを明治や江戸期の小説まで遡り、また、小説以外の漫画やアニメまで広げようとした試み自体は興味深い。昔、「ライトノベルの起源とその後の流れ」として、私なりにライトノベルの流れを纏めたのだけど、ちゃんと吉屋信子辺りからライトノベルに接続しようとする試みは、マジすげー。

ただ、ライトノベルに影響を与えたものといえば、まずは、テーブルトークRPG、そして、『ドラクエ』『FF』といったコンピュータRPGや、美少女ゲームだと思うのだけど、そこら辺の言説が弱いよね。確かに、1970年代より昔を語るなら、これらゲーム文化に触れなくても議論は成立するのだけど、現代ライトノベルの起源について語るなら、まずは、これらのゲームを起点にしないと話にならない。『スレイヤーズ』や『ロードス島戦記』以降のライトノベルは、1970年代ライトノベルの直系というより、RPG文化の申し子だ。もちろん、2000年以降は美少女ゲームの影響も大きい。小説にしたって、日本の明治期の小説群よりも、海外SFやファンタジーのほうが影響ありそうな気がするのだけど、そこら辺もページが薄いんだよなぁ。作者は、漫画やアニメーションなどを複合的に考察すべきといっているのだけど、結局、自分の得意分野の昔の日本の小説の話しかきちんと記述できていない。

この手の研究サイドからの言論は、だいたい現代文学史によりすぎていて、オタク論になると東浩紀を持ってこざるを得ない現状は、どうにかならないのかな。80年代90年代のゲームなんて、これからどんどんプレイ環境が失われて歴史に埋没していく一方なのに、1978年生まれのファミコン直撃の世代で、さらに現役のライトノベル作家でもある大橋ですらスルーする状況は、絶望しかない。本書では、ゲームはアニメーション文化と一緒に纏められているのだけど、そのアニメーション文化も、『宇宙戦艦ヤマト』の次は『おおかみこどもの雨と雪』で、「1970年代以降のアニメーション文化」と一緒くたに纏められてしまっている。ライトノベルを起点に現代日本文化を語ろうとする本で、これはさすがにざっくりしすぎだ。ライトノベルの源流を遡る前に、もっと足元を固めるべきじゃないの?

[ 2015.02.25 ]