好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! - 2025年6月


2025 6 17

KADOKAWA カドカワBOOKS
サイレント・ウィッチIX —extra— 沈黙の魔女の短編集 /依空まつり

特典SSなど50編以上をまとめた短編集。ひとつ一つが短いとはいえ、ボリューム凄いな。

どの短編も、モニカの本編での生活の一場面、特に学園生活の一場面を切り取ったような短編になっていて、すごく良い。本編のようにシリアスな展開がない分、モニカと友人たちの関係性によった内容になっていて、その暖かな空気感がすごく暖かいよね。学園への編入前から学園生活、そして、卒業後のサザンドールでの生活まで。あぁ、こんな幸せな空気感だと、すげーサザンドールでの新章はすげー読みたくなるわ。個人的には前巻で綺麗に完結していたので、新章は蛇足になってしまう気がしてたのだけど。

裏表紙やあとがきによると7巻までの特典SSってことは、まだ収録していないSSがあるということか。あとがきで他にも書きたいようなことがあると書かれているし、また、短編集が出るなこれ(^^;。

[ サイレント・ウィッチ ]


2025 6 23

TOブックス
追放幼女の領地開拓記 ~シナリオ開始前に追放された悪役令嬢が民のためにやりたい放題した結果がこちらです~ /一色孝太郎

「小説家になろう」ですごく好きな作品の書籍化っ!! 開拓村の領主に任ずるという体裁で魔の森に追放された少女が、チート能力を使って辺境の開拓を進めるという物語。いやー、少女一人称形式って、すげー好きなんですよ。まあ、タイトルでは"追放幼女"とあるけれど、年齢はスタート時8歳、そもそも転生者なので幼女感はぜんぜんなくて、幼女というより少女だよなー。

追放少女が辺境を開拓するという物語は、まあ、よくあるのだけど、本作の主人公は、ゾンビやスケルトンを従えるゲーム世界のラスボスへの転生というのがおもしろい。魔物を倒して骨を手に入れれば入れるだけ、スケルトンを量産できるというのは、アイデアの勝利だよな。テスラ社の人型ロボットとかのイメージだと思うのだけど、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界に「電源不要のスマートロボットを大量投入して産業革命を起こす」と言われると妄想が進む。ゴーレム使って自動化みたいな作品もよくあるのだけど、魔物を倒せば倒すほど戦力増強、大量生産による数の暴力を用いた産業化、という着想は、なかなかおもしろいよね。

Webのほうで書籍化の告知があったのは随分前だったと思うのだけど、書籍化まで時間があったためか、ストーリーを変えない範囲でわりと加筆されているのも良い。ただ、書籍化でも地図がないー。いやー、Web版でも、各村の位置関係がわかりづらかったので、地図が欲しかったんだけどなぁ。この手のファンタジーだと地図載せるだろ、地図。あと、乳母のマリーのイラストがやたら若いのだけど、これはいったい……。

一応、ゲーム世界転生で、悪役令嬢転生でもあるのだけど、そちらの要素は書籍化でもあまり深ぼってはないか。ゲームでは、侯爵令嬢の地位を使って悪役を演じていたのに、なぜ、シナリオ開始前に追放されたのか?というのは、物語上の大きな謎の一つになっていると思うのだけど、Web版でも言及は少なく、どう展開させてくんだろうか?

[ 追放幼女の領地開拓記 ]


2025 6 24

朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ聖獣変 /夢枕獏

1982年から続いていた「キマイラ吼」シリーズが堂々の完結。いや、完結というか、ラストまで書ききれないことを危惧した夢枕獏が、途中をすっ飛ばして、先に最終巻を書いたというもの。途中も、雑誌連載中とのことだし。

内容もこれで完結と言って良いかは微妙で、エピローグのようでありつつ、物語は完結せずにこれからも続いていくことを示すものになっているのよ。死後、「実は最終巻を書いてました」と出されても困惑する内容で、今、「これが最終巻です」と出されるから、最終巻だとギリギリ納得できる内容だよな。

なんの説明もなく物語の最後に収録されている『神話変 序曲』も解釈を難しくしていて、この『神話変 序曲』は、1984年に天野喜孝の画集で発表された短編なのだけど、最終話を思わせる内容でありながら、本編とはかけ離れた内容になっていてるのね。これは、『聖獣変』から『神話変』のような未来に繋がっていくといっているのか、それとも、いろいろ考えていた結末のひとつといっているのか。そもそも、連載中の『呪殺変』を進めて行ったら、『聖獣変』とは別の未来に繋がるということも、普通にありそうだ。

まあ、最終巻、物語の結末としては、この『聖獣変』も『神話変』もおまけで、重要なのは冒頭に再収録された桜のシーンなのは明らかだけど。

しかし、前巻の『魔宮編』では、いよいよ物語をたたみはじめたのかと思ったのだけど、こういう形で『聖獣変』を出してきたということは、ぜんぜんたたむ気がないんだな。というか、この『聖獣変』って、今際の際まで、『キマイラ』を書き続けるという宣言だよね。

[ キマイラ吼シリーズ ]