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朝日新聞出版 ソノラマノベルス
キマイラ聖獣変 /夢枕獏

1982年から続いていた「キマイラ吼」シリーズが堂々の完結。いや、完結というか、ラストまで書ききれないことを危惧した夢枕獏が、途中をすっ飛ばして、先に最終巻を書いたというもの。途中も、雑誌連載中とのことだし。

内容もこれで完結と言って良いかは微妙で、エピローグのようでありつつ、物語は完結せずにこれからも続いていくことを示すものになっているのよ。死後、「実は最終巻を書いてました」と出されても困惑する内容で、今、「これが最終巻です」と出されるから、最終巻だとギリギリ納得できる内容だよな。

なんの説明もなく物語の最後に収録されている『神話変 序曲』も解釈を難しくしていて、この『神話変 序曲』は、1984年に天野喜孝の画集で発表された短編なのだけど、最終話を思わせる内容でありながら、本編とはかけ離れた内容になっていてるのね。これは、『聖獣変』から『神話変』のような未来に繋がっていくといっているのか、それとも、いろいろ考えていた結末のひとつといっているのか。そもそも、連載中の『呪殺変』を進めて行ったら、『聖獣変』とは別の未来に繋がるということも、普通にありそうだ。

まあ、最終巻、物語の結末としては、この『聖獣変』も『神話変』もおまけで、重要なのは冒頭に再収録された桜のシーンなのは明らかだけど。

しかし、前巻の『魔宮編』では、いよいよ物語をたたみはじめたのかと思ったのだけど、こういう形で『聖獣変』を出してきたということは、ぜんぜんたたむ気がないんだな。というか、この『聖獣変』って、今際の際まで、『キマイラ』を書き続けるという宣言だよね。

[ 2025.06.24 ]