恐竜はなぜ鳥に進化したのか


文藝春秋
恐竜はなぜ鳥に進化したのか 絶滅も進化も酸素濃度が決めた /ピーター・D・ウォード

持論を強調するあまり、かえって説得力がなくなってる件。いや、サブタイトルの“絶滅も進化も酸素濃度が決めた”というのが、この本の語らんとするところなのだけど、それこそ、なんでもかんでも、酸素濃度のせいにしているので、「それは、どこのトンデモ本か『MMR』ですかっ!!」というノリに(笑)。本来は、真面目な本のハズなんだけどなぁ。

そゆわけで、カンブリア爆発から現代までの 6億年の進化の歴史を、酸素濃度の変化という観点から捉え直したもの。なんというか、恐竜と鳥類の関係について語っているのは、全11章中、たかだか1章しかないのに、あまりに酷いタイトルだ(笑)。ネタとして面白かったのは、むしろ動物の陸上進出の辺りだったりしたので、恐竜を強調するのは、ちょっとないだろ~。内容的にも、いろいろな仮説を取り上げるのはいいのだけど、整理も取捨選択せずにてきとーに取り上げてる感じが強いのと、あと、ちょっと怪しめの仮説まで持ち出してまで酸素濃度に固執しすぎている感じがするのが、どうにも。

以下、簡単にメモ。

  • 過去 6億年のうち、地球の酸素濃度は、12%~35%の間で大きく変動している
  • 生物の大規模絶滅は、酸素濃度が低い時期に発生している
  • 動物の多様性と酸素濃度の間には相関関係があり、高い多様性がみられるのは高酸素濃度の時期
  • カンブリア爆発の進化の多くは、かつて言われた運動能力や捕食といった観点だけでなく、より効率的な酸素の獲得の結果として説明できる
  • 動物の陸上進出は、高酸素濃度が不可欠(進化途中の肺では低酸素濃度を生き残れないため)。最古の陸上生物は4.1億年前に現れ、3.7億年前のデボン紀の大絶滅の洗礼を受けた後、3.3億年前辺りから再度進出という経過を辿るが、これは、4.1-4.0億年前の高濃度の状態から3.7億年前には12%まで急激に低下し、その後、3.0億年前まで急激に上昇した酸素濃度のカーブと一致する
  • 2.5億年前のペルム紀の大絶滅は、火山活性化による二酸化炭素放出→温暖化&酸素濃度の低下→硫黄代謝細菌の増殖→有害な硫化水素濃度の上昇、という流れの結果
  • 2.5-2.4億年前の三畳紀前期は、酷い低酸素濃度が続き、この間に低酸素に適応した哺乳類と恐竜の祖先が現れる。哺乳類は横隔膜を、恐竜は二足歩行を獲得した(四足歩行は、歩行中に肺の圧迫を引き起こし、呼吸を阻害してしまうらしい)
  • 恐竜は、竜盤類と鳥盤類の二つに大きく分類できる。竜盤類は、鳥類が持つ気嚢システム(哺乳類の2倍の呼吸効率のあるシステム)も獲得していた。一方、鳥盤類は気嚢システムを持っていないため低酸素耐性が弱い
  • 三畳紀末(2億年前)に、酸素濃度は12%まで低下し、再度、大絶滅が起こる。低酸素に強い耐性を持つ竜盤類恐竜は、低酸素に影響されることなく生き残り、続く大恐竜時代を生む
  • 恐竜が誕生した三畳紀後半からジュラ紀中期までの長い間、低い酸素濃度のため恐竜の多様性は抑えられていた。いろいろな種類の恐竜が出てくるのは、十分酸素濃度が高くなったジュラ紀後半以降
  • 酸素濃度の上昇に伴い、低酸素耐性の強い竜盤類は減り、低酸素耐性は弱いものの捕食能力が高い鳥盤類が増えていく。また、大型化もガンガン進む
  • 哺乳類の台頭が恐竜絶滅を待つのは、少なくとも高温&低酸素の時代(三畳紀後半~ジュラ紀中期まで)は、恐竜に比べ低酸素耐性や温血といった点で、不利だったのが原因
  • 哺乳類が胎盤システムは一定以上の酸素濃度が必要。哺乳類が胎盤を獲得したのは、高酸素濃度となった白亜紀後期

[ 2008.05.09 ]