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講談社 講談社ラノベ文庫
異世界誕生2007 /伊藤ヒロ

異世界転生ブームのはじまりを描いた『異世界誕生2006』の続編。うーん、2007年っぽくなくて、説得力が弱い……。

いやー、作中で、ライトノベルがやたら低く見られる描写があるんだけど、2007年ぐらいだと、まだそこまで低く見られてなかったよね? ライトノベルが低く見られるようになったのって、『涼宮ハルヒの憂鬱』のヒットを受けて、ライトノベル原作のアニメ作品が粗製濫造された結果によるのが大きいんですよ。なので、『涼宮ハルヒの憂鬱』の放映の翌年である2007年で、ここまで低く見られるのは、まだちょっと早い。ライトノベル作家がデビューしやすいと思われるようになったのも、なろうの書籍化ラッシュがはじまる2010年代以降だよね。

2007年ぐらいだと、のちに直木賞をとる桜庭一樹が、まだライトノベル作家とみなされていて、野村美月の“文学少女”シリーズが注目されていた頃。文学的にもライトノベルはまだ評価されていて、売り上げ的にもライトノベルが出版界を救うと信じられてた時代。せっかく、2007年を舞台にしたにしては、この時代描写はちと微妙じゃないかなぁ。

作品としても、不治の病に侵された少女を持ってきたのはあざとく切なくて悪くはないけど、ただ、テーマ性もストーリーの面白さも『2006』に比べてボケすぎてて微妙だ。『2006』が綺麗にまとまっていただけに、無理に続編を書く必要はなかったんじゃね?

[ 2020.11.16 ]