好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! - 2020年5月


2020 5 1

東京創元社 創元推理文庫
巴里マカロンの謎 /米澤穂信

11年ぶりの小市民シリーズ新刊!! シリーズ新刊なのだけど、春夏秋ときてラストの冬なのかと思ったら、秋と冬を繋ぐ短編集でした。シリーズのラストを飾るであろう「冬」はいつ出るんだ?

それはともかく、ヒロインの小佐内さんがとにかく可愛く魅力的な本シリーズ。11年ぶりでも小佐内さんの素晴らしさは健在。お菓子に目がなく小動物的な可愛さの中に、黒い性格が同居する奇跡のヒロイン。小鳩くんとの互恵関係と称する関係性も相変わらず魅力的だよね。……まあ、短編なせいか、小佐内さんの黒さはちょっと足りない気もするけれど。「花府シュークリームの謎」とか、古城さんを覚悟させておいてその程度というのは、正直、物足りなさは感じる。

今回の短編集は、名古屋に新しくできたフランス菓子店をキーとした、米澤穂信らしい日常の謎を描いた4編。新しいヒロインとして古城さんも登場し、「ゆきちゃん先輩」、その呼称、……いいね! ミステリとしては、そいえば、CDって、書かれた2017年当時でもそろそろ記録メディアとしては古くなってる気がするので気にはなったけれど、まあ、普通に使うか。総じて、小佐内さんの苛烈さは目立つのだけど、やっぱ黒さが物足りない気がするなー。

[ 小市民シリーズ ]


2020 5 14

SBクリエイティブ GA文庫
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクル episodeフレイヤ /大森藤ノ

女神フレイヤと【フレイヤ・ファミリア】の8人の眷属を描いたダンまち外伝。いやー、本編では、フレイヤの眷属というと迷宮都市最強のオッタルしか目立ってないのだけど、なにこいつら(笑)。想像以上に愉快な仲間たちで、楽しい楽しい。……そして、ラストの短編が意味深すぎる。酒場「豊穣の女主人は」思った以上にフレイヤと関わりがつよかったのか、いや、マジ、どういうこと?

そういうわけで、フレイヤと眷属たちは凄く魅力的だったのだけど、今回のゲストヒロイン、もう一人の主人公となっているアリィが、フレイヤたちに比べて大きく魅力に欠けていて、うーん、肝心の主人公がこれでは、この外伝の物語に関しては、正直いまいちだった感は否めなかったです。アリィのどこに輝きがあるの?フレイヤ様。

[ ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ]


2020 5 26

KADOKAWA 電撃文庫
楽園ノイズ /杉井光

杉井光十八番の青春音楽ストーリー。杉井光らしく女々しい主人公が、杉井光らしく癖のある女の子たちに引っ張られながら音楽を奏でていく……。めちゃくちゃ杉井光らしい内容で、もちろん杉井光らしい傑作に仕上がってます。素晴らしいっっっ!!

とにかく杉井光らしさ満載、いつもの杉井光なんだけど、強いて目新しさを上げれば、主人公が自作の音楽をネットに上げてるYutuberってとこか。再生数稼ぎに女装して演奏したら、音楽教師にバレてこき使われるようになる展開。ただ、せっかくの女装ネタなのに、あくまで切っ掛けとしてしか使われてないのはちょっと惜しい。そんな主人公の仲間になっていくのは、天才的なピアニストの凛子やドラマーの詩月といった一癖ある女子高生たち。彼女たちとハーレム的なバンドを組んでいくのも完全にパターンなんだけど、彼女たちもちょっと掘り下げが弱いんだよなー。一冊では、絶対ぜんぜん紙幅が足りてないだろっっっ!! あー、内容的には一冊で綺麗に纏まっているのだけど、シリーズ化はしないのかしらん? まあ、掘り下げの弱い彼女たちに代わって、この作品のヒロインは完全に華園先生で、というか華園先生は完全に卑怯すぎるだろっ。感動すぎて泣くぞっ!!

キャラの掛け合いと音楽を絡めた描写はほんとに秀逸で、その中でも音楽に関しては、WANDS の“Same Side”の扱いが非常に印象的でした。ネットで検索して聴いてみても、音楽に対する感受性のない私には、いまいちよくわからんかったけれど(^^;。

[ 楽園ノイズ ]