AADDシリーズ


早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
ウロボロスの波動 /林譲治

めちゃおもしろかった。特に、ラストの『キャリバンの翼』が、ぐぅ。あぁ、ロマンだよなぁ~~。……ただ、科学的な考証でリアリティを積み上げようとしてるのに、その科学的な説明は脇が甘かったり、さらに、話によっては、そりは無理あるだろ~、という部分もあったりして、なんというか、そこら辺の見せ方が、割と下手な予感。<って、もともと、[小説]『太陽の簒奪者』みたいなのを期待して読んだので、ここら辺の評価は辛くなっちゃってるかも

内容は、22世紀の太陽系を舞台にした連作短編。小型ブラックホールの発見を機に、いろいろなプロジェクトが立ち上がっていくという話。で、この作者さん、たぶん読むの初めてだったのだけど、『ガンダム』に、かなり影響を受けてませんか(^^;。しかも、この影響で、微妙に歪んだ作風になっちゃってる気も。

[ 2002.07.30 ]


早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
ストリンガーの沈黙 /林譲治

とにかく次々と興味を引くようにイベントが配置されていて、ストーリーとしては面白く、一気に読ませるのだけど、ただ、演出面でちと粗が目立つ、というより、好みじゃないのがなー。

そゆわけで、『ウロボロスの波動』の続編的な書き下ろし。宇宙圏に基盤をもつAADD と地球の国連の軍事的緊張が高まる中、未知の知性体の太陽系への接近が観測される、といった感じのファーストコンタクトもの。興味がわくように謎とイベントが配置されていて、とにかく先の展開が楽しみで、一気に読ませる内容が面白い。あと、安藤とライナス、さいこー(笑)。

ただ、やっぱり、演出がなー。や、SF は、細部を積み重ねてリアリティを出すような作りのものが好みなんだけど、この作品は細かい部分もあるんだけど肝心な部分が大雑把なのがなー。いや、林譲治の他の作品もそうなんだけど、どうにも、作者が詳しいor書きたい部分を優先して詳細に書くというスタンスのようで、ストーリーの要求によって細かく書く/書かない、という視点があまりない予感なのよねぇ。あと、ハードSF的にリアリティある世界観を構築してるのに、AADD と地球圏の人々の描写がステレオタイプ的に誇張されて書かれているのも、マイナス。まあ、作者の意図するところはわかるんだけど、個人的には、大人向けな設定にお子様なキャラを混ぜたような感じで、非常に違和感を感じるのよな。ちょっとなー。

[ 2005.11.17 ]


早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
ファントマは哭く /林譲治

あまりに完成度が低くてガッカリ。酷くちぐはぐな構成に、「もしや、叙述トリック的な効果を期待してるのか?」と思ったりもしたけれど、当然、そんなことはなくて、ほんと出来が悪いだけでした。後半にかけての SEの正体に関する SF的な展開は面白かっただけに、しょぼん。

AADDシリーズ第三弾。地球外知的生命体ストリンガーとのファーストコンタクトに成功した人類。少しづつ、ストリンガーとのコミュニケーションを進展させてきた人類は、ある日、ストリンガーより正体不明の飛行体ファントムの攻撃を受けたと訴えられる……。そゆわけで、作内の最大の謎の一つ SE(Strange Element)の正体に迫る道程は良かったけれど、良かったのはそんだけ。ちぐはぐなストーリー展開がとにかく酷く、小説としての完成度があまりに低い。SFとしては、スケールでかくて好きなネタなんだけどねぇ。

[ 2009.11.05 ]