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セカイ系とは何か ポスト・エヴァのオタク史 /前島賢

「萌え」を扱うのに、『美少女戦士セーラームーン』にも『ときめきメモリアル』にも言及がないとは片腹痛いわっ!! いや、あくまで『エヴァ』以降のオタク史を語ったものなので、『エヴァ』以前の作品に言及が及ばないのは当然かもしれないけど、ただ、そうは言っても、そのポスト・エヴァの中で「萌え」を重要な要素と位置づけておきながら、「萌え」についてはほとんど語らずに論を進めるのは、ちょっと不完全すぎるんじゃね? 本書には、やたら「萌え」という言葉は出てくるのだけど、その言葉の意味は非常に薄い。

まあ、本論である「ポスト・エヴァのオタク史」という点については、今までのオタク論壇な人の論考を丁寧に纏めたような内容になっていて、なかなか面白い。さらに、ライトノベル読みとしては、やたら細かな作品まで言及されてて楽しい楽しい。……って、むしろマイナーな作品ばかり挙げていて、それを論拠に一般化するのは胡散臭さ大爆発だけど(^^;。まあ、セカイ系という言葉に代表されるように、オタク史というより、むしろ、オタク論壇史という感じだよなぁ。

それにしても、前島賢というより、東浩紀の論説なんだろうけど、結局、『エヴァ』の登場による変化とセカイ系の登場を、受容態度の変化という観念的な話に帰結しているそれは、社会学者の視点としては正しいのかもしれないけれど、リアルに作品に触れていたオタクの視点としては、当時の『エヴァ』以外の作品の動向もきちんと踏まえた論となっているか、ちょっと微妙だよねぇ。

いや、本書でも、『エヴァ』だけではなく、『ブギーポップ』や『雫』の重要性についても触れられてはいるんだけど、ただ、『エヴァ』『ブギーポップ』『雫』に至る系譜や個々の作品の関係性についてはほとんど触れられず、そして、そこからまた唐突に『最終兵器彼女』『ほしのこえ』『イリヤ』に跳んでしまう。それぞれの作品が互いにどう影響しあい、その後にどのようなムーブメントを生み出していったかという作品視点の考察は、なくはないけど非常に希薄。なるほど、オタク論壇の流れについては非常に丁寧に纏められてはいるのだけど、オタク史全体を俯瞰しているかというと、どうしても断片的な傾向が強いといわざるを得ず、そして、なにより残念なのは、全体像を俯瞰せずにオタク論壇の議論を中心に纏められたそれは、その議論そのものを、むちゃ胡散臭く見せてしまってるんだよなぁ。

[ 2010.02.22 ]

前島賢作品の感想