好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!! - 2024年1月


2024 1 5

ホビージャパン HJ文庫
凶乱令嬢ニア・リストン(1) 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録 /南野海風

最近、やたらコミック版の広告を見かけるので、小説版の方を購入。小説家になろう発の異世界転生&俺TUEEEEE&ネット配信もの?

って、異世界転生とネット配信というなろう系でも流行のネタなのだけど、切り口はかなり変わっているのがイイ!! 転生の方法も病気で死んだ少女の身体に反魂の法で無理やり呼ばれた武人の魂という設定はおもしろいし、そこから氣の力で病気に打ち勝ち四歳の幼女の身体で無双をはじめるのかと思ったら、何故か魔法映像の配信をはじめるのもおもしろい。その配信も、なろう系でよくあるゲーム配信ではなく黎明期のテレビ放送を彷彿させるような設定なのが変化があっていいよね。で、さらに見せ場としてきちんと武力で無双する場面もあって、いや、ほんとおもしろい。

そんな感じで、ほとんど文句のつけどころがなく楽しい作品なのだけど、ただ、流石に武術の腕を見せたら中身が変わってるのはバレるだろ(笑)。まあ、そういうツッコミどころはワザとなんだろうけど、肉親がどう思ってるかはちょっと気になる。

[ 凶乱令嬢ニア・リストン ]


2024 1 16

KADOKAWA
佐々木とピーちゃん 異世界でスローライフを楽しもうとしたら、現代で異能バトルに巻き込まれた件 ~魔法少女がアップを始めたようです~ /ぶんころり

アニメ化記念でセールをしていたので購入。いやー、ほとんど前情報なく読んだのだけど、予想していたのと比べて斜め上の展開ばかりで、すげーおもしろかった。そもそも、主人公が40歳のパッとしないおじさんだったら、相棒のピーちゃんにはヒロインを持ってくるもんだと思うのだけど、オスの文鳥だもんなー。

そゆわけで、小さな商社勤めで一人暮らしのサラリーマン・佐々木が、四十路を前に癒しを求めてペットの文鳥を飼ったところ、なぜか文鳥が話しはじめ、その文鳥の魔法で異世界と現代を行き来するように……、というローファンタジー。商社勤めの経験で異世界間貿易を行い大成功するような話かと思ったら、異世界でも現代日本でもわりとバイオレンスな展開。異世界と現代日本のそれぞれで二つのストーリーライン作ってるのは上手いよね。現代異能と異世界ファンタジーの美味しいところどりだっ!!

で、二軸のストーリーがおもしろいだけでなく、出てくるキャラクターたちも凄く魅力的。主人公の佐々木からして、冴えないサラリーマンという役にもかかわらず、地味に壊れているよね。表面的には地味で冴えない中年サラリーマンなのだけど、文鳥が喋ろうが、目の前でたくさん人が死のうが、全く動じない精神性。お隣りさんの壊れ方なんかも分かりやすく凄いんだけど、とにかく、キャラのクセが強すぎる。特に、現代日本側のキャラやばくない?(笑)。あー、でも、1巻だとわからない部分が多くて、まだまだこれからだよなー。

物語も、特に現代日本サイドの方は、まだまだぜんぜんこれからで、続きに期待したいところ。しかし、異世界サイドに比べて、現代日本サイドばかりやたらハーレムになりそうなキャラ配置なのだけど、これは一体どういうことだ?

[ 佐々木とピーちゃん ]


2024 1 21

たまに見かけるラノベの売上減と衰退の話。メモ程度に雑にググって数字を拾い集めてみました。ベースが異なる数字が混ざっているので比較するのはあんま良くないんだけど、まあ、大まかなトレンドがわかればいいや、ということで。

ライトノベルの市場規模

  • 2022年の市場規模は276.6億円(文庫(紙)108.0億円、単行本(紙)103.5億円、電子65.1億円)
  • 2012年の市場規模はラノベ文庫(紙)のみで284億円
  • 文庫(紙)は2012年の284億円をピークに下降トレンド入り。特に2017年以降の減少が酷い
  • 単行本(紙)は2016年に100億円を超え以降横ばい
  • ライト文芸の市場規模は不明
  • 2010年以前では、ラノベブーム前の2003年が170億円、ブーム化した2004年が264億円。ハルヒがアニメ化した2006年が344億円

関連情報

  • 小説(紙)全体の市場規模は、ざっくり2011年4000億円→2021年2000億円
  • 電子書籍は2015年1502億円→2021年4662億円
  • 児童書は2010年代を通して1000億円前後で推移
  • ラノベ文庫(紙)がピークだった2012年はSAOがアニメ化した年に当たる
  • ラノベ単行本レーベルの創刊ラッシュが始まったのは2012年
  • ラノベ文庫本レーベルは2014年以降ほとんど創刊されず、代わりにライト文芸レーベルが創刊されている
  • 児童書のラノベ化が進んだのは2000年代後半から

こう数字を並べてみると、ラノベ市場全体では売上が大きく減少しているわけではないものの、やはり、文庫(紙)の売上減は酷いな。『ハルヒ』の頃から比べたら344億円→108億円だよ。これはラノベが衰退していると言われても仕方がない。

ただ、数字を議論する上での問題は、ライト文芸の売上が含まれていないことなんだよなぁ。2014年以降、新しいラノベ文庫レーベルは基本的にライト文芸レーベルとして創刊されているので、ラノベ文庫(紙)としてはずっと新規参入がない形になるんですよ。これだと、実態と関係なく統計上は常に売上減のバイアスがかかることになる。まあ、ライト文芸はラノベと異なるという立場に立てば、出版社は2014年の時点でラノベ文庫に未来はないと新規参入はやめ、その結果が2017年以降に数字になって表れただけ、という解釈もできるのだけど。

ラノベ文庫(紙)の大幅な売上減で「ラノベの若者離れ」というコメントもよく見かけるのだけど、君らがいる場所は我々が20年以上前に通過した場所だぁぁぁぁっっ!! って、いや、20年前からラノベ読者の年齢が上がっていることは言われていて、だからこそ、高価格帯の単行本への移行がスムーズに進んだわけです。単行本の登場によっていきなり年齢低めの読者が減って年齢高めの読者が増えたわけではなく、元々、年齢高めの読者が多かったことが可視化されただけ、というのが正しい。

むしろ気になるのは、単行本レーベルの登場によって、比較的高年齢向けの単行本レーベルと低年齢向けの文庫レーベルで棲み分けが起きつつあるようにみえること。これと似たようなことが1990年代の少女向けレーベルでも起きていたのですが、その時は、結局、低年齢層向けのレーベルは壊滅してます。今、同じことがラノベ文庫レーベルで起きていないかちょっと心配です。低年齢の読者は単純に金を持っていないので、年齢層を下げれば下げるほど売上も下がることになっちゃう。

まあ、ヒット作一本で大きく数字が動く市場なので、『ハルヒ』や『SAO』クラスの作品が出てくれば、すぐに状況は変わるわけですが。逆に、『ハルヒ』や『SAO』がヒットした年の344億円とか284億円とかの数字と比べても、あまり健全ではない気がします。

参考

[ やっぱりラノべ文庫(紙)の売上減は酷い。ライトノベルの市場規模と衰退論の話 ]