『ドラゴンマガジン』創刊物語
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勉誠出版
ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語 ―狼煙を上げた先駆者たち /山中智省 -
30周年を迎えた「ドラゴンマガジン」及び富士見ファンタジア文庫の創刊時の話を、当時の関係者のインタビューを交えて振り返るものなのだけど、そんなに特筆するようなドラマはなかったという話でした。<をい。これ読むと、ライトノベル史として振り返るべきは、「獅子王」とソノラマ文庫の創刊物語じゃね?
結局、「ドラゴンマガジン」の影響は非常に大きかったものの、新規性は特になくて、角川のファンタジーフェアやゲームブックブームをはじめとする当時の流行にうまく乗ったという話。語られることの多いコバルト文庫やティーンズハートの創刊時の信念のもと市場を切り開いていった話に比べるとドラマ性に欠ける。一応の特徴としては、比較的ビジュアルを重視していたという辺りだけど、本作中で述べられている通り、それも、アニメージュ文庫や「獅子王」に先行されていているんだよね。それらを踏まえてインタビューを読むと「あまり深く考えずに始めたら、たまたま上手く行った」という風にしか思えない(笑)。
まあ、「ドラゴンマガジン」の先行事例や周辺状況を踏まえつつ、当時の関係者のインタビューをまとめて創刊当時の背景を読む説いている点では、本書は非常によくできているけれど。
気になった部分をいくつかピックアップしておくと、
- スニーカー文庫は編集責任者が少女小説をやりたくて企画したのに、少年向けだけ生き残ってしまった
- もともと富士見ファンタジア文庫の元になる企画があり、その新人賞募集のために「ドラゴンマガジン」が生まれた
- 富士見ファンタジア文庫の元になる企画が通ったのは、角川のファンタジーフェアなどの結果
- 「獅子王」など他の雑誌を参考に、アニメ雑誌「アニメック」の方法論を取り入れた(安田猛は「アニメック」の元副編集長)
- 「獅子王」や「ザ・スニーカー」に比べて、文芸の流れを汲んでいないのが特徴
- 営業的に「小説雑誌とは呼ばない」という要請もあった
- 対象読者は、当時「メディアミックス世代」と呼ばれていた中学生・高校生
- 各インタビューでは、「獅子王」「NewType」「いちご文庫戦争」というキーワードが非常によく散見され、これらの影響が強かったことが伺われる
[ 2018.02.13 ]