ゲーム的リアリズムの誕生


講談社 講談社現代新書
ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2 /東 浩紀

主張は凄く単純なのに、なんで、わざと遠回りに小難しく書いてるんだろ? 新書なんだから、もっとわかりやすく書けよ、わかりやすくっ!! ……まあ、新書といっても、ふつーの新書のように中年サラリーマンがターゲットというわけではなく、かなり若い世代をターゲットをしてるみたいなので、無意味に理解しづらく高尚っぽくみせてるのは意図的な演出なのかしらん?

そゆわけで主張は単純で、「これからはメタ視点だっ!!」という話。東浩紀の上手いところは、メタ視点をゲームのプレイヤー視点と言い換え、ゲーム世代のリアリズムとして位置付けた部分。作品をメタ的に消化する読み方は昔からあったと思うんだけど、「ゲーム的リアリズム」とすると、非常に現代的で説得力が段違いに違うのね。この切り口は非常に素晴らしい。

で、内容は、第一章で理論を説明し、第二章で実際の作品を用いて解説するというもの。第一章では、やたらと大塚英志をライバル視してたのが印象的だったのだけど、私は、大塚英志の一連の作品を読んだことがないので、しょぼん。というか、素直に、大塚英志との対談形式にしろよっ!! と思ったのでした。<をい。第二章に関しては、まあ、「この文脈でこの作品を取り上げたら、そういう読み方になるわな」と言ったもので、「ゲーム的リアリズム」の解説としては正しいんだけど、個々の作品論としては物足りない。そもそも、今、ライトノベルでやるなら、マイナーな『All You Need Is Kill』ではなく、『ゼロの使い魔』や『シャナ』辺りで、同様の解釈に挑戦してほしかったなー。『ONE』にしても、もはや10年近く前の作品で、今、取り上げるにはどうかと思うしー。ちなみに、作品論で取り上げられていたのは、『All You Need Is Kill』『ONE』『Ever17』『ひぐらしのなく頃に』『九十九十九』。

まあ、「ゲーム的リアリズム」の大枠は、そんなに異論はありませんでした。ただ、ちょっと違和感を感じたのは、ゲーム的リアリズム=東浩紀より一世代若い世代のもの、という感じで扱っていたところかしらん。でも、作品内で名前が出る作家の多くはオタク第二世代の作家でそこまで若手ではないし、そもそも、東浩紀自身が私から見るとなんと言うか若い人で、そこからさらに若い世代と言われても(^^;。や、ゲーム世代としたいがために、より若い世代の傾向としたかったんだろうけど、そこは、ちと無理がある予感~。

[ 2007.03.28 ]