ゴブリンスレイヤー


SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリンスレイヤー /蝸牛くも

最高傑作級。既存のファンタジーとは一線を画する、陰惨で血なまぐさい物語。これほどグロいファンタジーも珍しい。……にもかかわらず、この表紙はなんだ? ここまで中身と表紙イラストがあってないのは、さすがに酷すぎる。というか、とりあえず、ヒロインの絵を表紙にすればいいとか、編集者、バカじゃね? そんな編集者は、今すぐやめたほうがいいと思う。

この作品、とにかく凄惨でグロいのよ。隙あらば殺され犯され、人としての尊厳がたやすく奪われる世界の中で、血と腸と糞尿にまみれて戦う一人の戦士の物語。駆け出しの冒険者がモンスターに負けるとはどういうことか、町がモンスターに襲われるとはどういうことか、若い女がモンスターに連れ去られるとはどういうことか、ファンタジー世界でよくある不幸な日常を、とことんグロテスクに描いていて、圧倒される。「駆け出しの冒険者が行方不明に」とか「町が襲われた」というよくある文章の裏に、ここまでの不幸と絶望が秘められているのか、と。最弱とはいえ、狡猾で残忍で非道なゴブリン。残虐な性格ゆえに不幸な事件も多いにもかかわらず、その弱さゆえに、国も有能な冒険者も相手にしないゴブリンを、ただ一人、血と腸にまみれてひたすら狩る、狩る、狩るっ!! こういう物語なら、主人公は、当然、無口で一途な職人気質なわけだけど、やはり、物語にうまくハマってる主人公で、素晴らしいことこの上ないね。

後半は、もっと救いのない話になっていくのかと思ったのだけど、さすがに、そこまではいかなかったか。ラノベらしく、プチハーレム的な展開もあるのだけど、まあ、そういう雰囲気も嫌いじゃない。むしろ好きだったりもするのだけど、ただ、続きが出て、そのラノベ的な要素が強くなっちゃったりすると、なんだか中途半端に普通のファンタジーになっちゃいそうだけどなー。

[ 2016.02.24 ]


SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリンスレイヤー2 /蝸牛くも

アレ? 18禁じゃない。<をい モンスターの中でも最弱なゴブリンを、ひたすら屠る漢の物語第二弾。1巻は、殺され、犯され、人間の尊厳を奪われるような、とにかく暗く汚物にまみれたような物語だったのだけど、この2巻は、わりとふつーになったなぁ。ゴブリンを殺しまくるのも、人間の暗黒面だけを強調したようなゴブリンの習性もそのままなんだけど。

今回は、水の街の地下に広がる迷宮に住み着いたゴブリン退治。ゴブリン退治がメインなのはそのままに、謎を散りばめ山場を作り、きちんと盛り上がる物語に仕立てているのは上手い。だけど、うーん、その分、ふつうの物語になったなぁ。特に、主人公が仲間をもち、その仲間たちが簡単に死ななくなったのが大きい。1巻のノリだったら、簡単に、殺せされ犯されたのに、そういうのがない。もうちょっと陰惨でも救いようがないような世界観でもよかったと思うのだけど、それだと物語にならないのかなー。

あとがきを読むと、3巻もちゃんと続くようだけど、3巻はどういう方向性でいくのだろ? 収穫祭って……。

[ 2016.05.23 ]


SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリンスレイヤー(3) /蝸牛くも

ふつう。もともとエログロで話題になった作品なのに、まったくそういう要素はなくなってしまい、あまりに普通すぎるだろっ!!

収穫祭を前に、受付嬢や牛飼娘、女神官、妖精弓手は、それぞれ……。と、リア充爆発しろっ!! いや、三巻にして、すっかりふつうのハーレムラブコメになっちゃてるのだけど、えっと、『ゴブリンスレイヤー』に求めていたものって、こういうライトノベルらしいファンタジーでしたっけ? 血と泥にまみれた陰鬱な戦闘はなくなり、さらわれた娘が凌辱されて絶望するような展開もなくなり、単に、ゴブリン一筋な朴念仁とそんな彼に惹かれる女の子たちの物語になっていて、ええっと、つまらなくはないけれど、求めているものが違う……。

ここで、ヒロイン一人を犠牲にするぐらいの展開を見せてほしいのだけど、もう、ふつうのラノベ路線で行くのかな? でもそれでは、せっかくのダークファンタジーがもったいない……。

[ 2016.09.19 ]


SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリンスレイヤー4 /蝸牛くも

4巻は短編集。短編が10本ほど収録されているけれど、『ゴブリンスレイヤー』は、やっぱ、ゴブリンに尊厳を犯される被害者がいたり、ゴブリンスレイヤーがきちんとゴブリンを倒す話がおもしろいな。そういうわけで、第4章「ありふれたゴブリンの巣のお話」がおもしろかった。ただ、すでに定型&マンネリになっているのがツライ。

それ以外の短編も普通におもしろいのだけど、なかでも、新米戦士と見習聖女のお話がよかった。一歩間違えると全滅しそうで、安心して読めないところがよい。<をい。それ以外は、わりとほのぼのとした話が多く、うーん、それぞれの短編の出来は悪くないのだけど、やはり『ゴブリンスレイヤー』でやる必要を感じないんだよなぁ。もっと殺伐とした絶望を見せてほしい。<をい

[ 2017.01.21 ]


SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリンスレイヤー5 /蝸牛くも

うーむ。基本に戻ったかのように、ゴブリンに攫われた令嬢剣士を救出する展開のシリーズ第五弾。ふつーに面白いのだけど、普通だ。正直、普通すぎて、これといった特徴も売りもない。もっと凌辱シーンや残虐シーンをマシマシで描いてくれないと、魅力に欠けると思うんだけどな。単に、強いゴブリンを登場させるだけじゃちょっと……。

[ 2017.08.11 ]


SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリンスレイヤー6 /蝸牛くも

最近、マンネリ化してると思ってたのだけど、物語に変化をつけてきたな。“ゴブリンだけを退治したいという冒険者が現れた――”と、ゴブリンスレイヤー以外に、ゴブリンに恨みをもつ新冒険者の登場し、そして、女神官も、ゴブリンスレイヤーと別行動を……。

そゆわけで、赤毛の冒険者もとい少年魔術師がゲストキャラとして登場するのだけど、この世界、魔法の使用制限がシビアすぎて、新人魔術師なんて、どうやって経験値を貯めるんだ? そんな魔術師をはじめとして、今回は、新人たちの成長物語。ゴブリンスレイヤーさんも将来に思いをはせたりして、既刊とは少し趣きを変えてきた印象。おもしろい。まあ、凌辱や絶望的な要素がやっぱり足りてない気がするので、女神官をもうちょっと追い込んでもよかったような気がするのだけど。<をい。攫われた女性の扱いは相変わらずエグいのだけど、直接的な表現を避けてるような感じで、やっぱ物足りないところがあるよなぁ。

[ 2017.09.18 ]


SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリンスレイヤー7 /蝸牛くも

巻頭のカラーイラストを見て、「とうとうゴブリン以外のモンスター退治をするのか!?」と思ったのだけど、やっぱりゴブリンでした。……変わり種のゴブリンを出して変化をつけるわけだけど、それだけだとやっぱりマンネリ感が強いなぁ。

そゆわけで今回は、結婚式で招待された森人の里でのゴブリン退治。敵はゴブリンライダー。わざわざ受付嬢も加えての森人の里行きということで、もうちょっといろいろ変化をつけてくるのかと思ったのだけど、結局、いつも通りの内容で期待ハズレ。うーん。つまりは一巻の劣化コピーを量産してるだけなんだよなー。いつまでこれを続けるんだ?

[ 2018.05.03 ]


SBクリエイティブ GA文庫
ゴブリンスレイヤー外伝:イヤーワン /蝸牛くも

ゴブリンスレイヤーの過去を書くのであれば、ちゃんとお姉さんが襲われるシーンを書かなきゃダメだろ……。がっかりだ。

そゆわけで、やがて「ゴブリンスレイヤー」と呼ばれるようになる少年の冒険者一年目を描いた外伝。幼ささえ残るような牛飼娘や受付嬢とのやり取りは新鮮だけど、……やってることは、いつもと変わらない件。はじめての依頼の時こそ苦戦するものの、初心者ならではの試行錯誤や修行のような描写はほとんどなくて、いつも通りゴブリン倒しているだけだもんなぁ。まあ、ゴブリンは所詮初心者向けのモンスターだしなぁ。

結局、『ゴブリンスレイヤー』という作品って、1巻目で物語として完成していて、続刊は同じことを繰り返して描いてるだけで外伝も同じことの繰り返し。それでいて、よくアニメ化までたどり着いたよなぁ、と思う。

[ 2018.11.12 ]