生命 最初の30億年


紀伊國屋書店
生命 最初の30億年 地球に刻まれた進化の足跡 /アンドルー・H.ノール

おもしろい。生物の歴史の中で、あまり語られない最初の30億年を、丁寧に教科書的に記した内容。ただ、あまり馴染みのない用語(<生物学科出身なのになさけないという話はある(^^;)なのと、散漫に相反する学説が語られてるので、全体に理解しづらいのは、難点かしらん。

そゆわけで、生物の誕生は40億年前といわれるのに、話題になるのは、恐竜時代の0.65億~2.5億年、三葉虫やアノマロカリスでも5.4億年。「それじゃあ、5.4億年より前は、どうなってるの?」という疑問に答えたのが本書。まあ、数年前にやってた [TV]『NHKスペシャル 地球大進化』のはじめの数話と似たような内容なのだけど、ただ、本書の方が、複数の学説を併記している分、誠実な印象です。ていうか、『地球大進化』では、やたらコラーゲン、コラーゲンと言ってた記憶があるのだけど、この本では、ほとんど見かけないのは、どういうことだ(笑)。

とりあえず、以下メモ。

  • 最初の生物の痕跡と思われるものは、35億年とか37億年とかの岩石内に見られる。ただし、これらのものは、生物の痕跡なのか、単なる物理現象の結果なのかは、議論が分かれている
  • ただし、これらが本当の生物の痕跡なら、この時点ですでに、かなりの多様性が見られるほどに進化をしている
  • シアノバクテリアは27億年前から存在し、22億年前ぐらいに酸素濃度を上昇させ、地球環境を激変させる立役者となった。太古の化石のほとんどはこのシアノバクテリアが占める
  • しかも、この当時のシアノバクテリアと今のシアノバクテリアは、本質的に変わってない
  • 真核生物の紅藻類と緑藻類は12億年前ぐらいに現れ、シアノバクテリアに取って代わるようになる
  • 真核生物が12億年前から増えたのには、環境的な要因が大きい。真核生物には直接窒素を固定する機能がないため、硝酸イオン濃度が高い環境が必要になる。環境中に硝酸イオンが増え、窒素不足が解消されるようになるのは、12億年前ぐらいから
  • 他の生物を食べるような奴が出てくるのは、7.5億年ほど前。この頃から食物連鎖が形成され始める
  • 5.5億年前(カンブリア紀の直前)に、エディアカラ化石と呼ばれる動物の大元あたりに位置する化石が見られる。エディアカラ化石はカンブリア紀の前に絶滅、直接な子孫も存在しない
  • 全球凍結(スノーボール・アース)によりカンブリア爆発が引き起こされる。全球凍結は、7.65億年前、7.1億年前、6億年前、5.5億年前の4回、という説を作者は取っている。何故、他の3回でなく最後の5.5億年でカンブリア爆発が起きたかというと、酸素濃度が関与している、という説
  • カンブリア爆発により、短期間でいきなり多様性のある生物群が登場したかというと、ここで爆発した左右相称動物は、その姿形を、発生調節遺伝子で決定してるため。発生調節遺伝子に変異があると姿形はめちゃくちゃ変わる
  • 最後にいきなり宇宙ネタに。他の星に生物がいたかどうかの検証も、古生物学的な手法の延長で可能

あと、私的にいちばん興味深かったのは細胞内共生の話だったのだけど、ただ、そこら辺の記述は、他の教科書でも読めるレベルの話で、ちょっとガッカリ。まあ、この本の立ち位置からすると、当然なんだけどさ。

[ 2006.10.30 ]