常野物語


集英社 集英社文庫
光の帝国 常野物語 /恩田陸

む、確かに、すげーおもしろい。あちこちで評価が高かったので買ってみたのでしが、なかなかの秀作。ただ、はちさん螢さん のように、最高傑作級(<ちげー(^^;)とまでは言わないけど。

人の間でひっそりと生きてる、不思議な能力をもった、常野一族をめぐるオムニバス。いや、オムニバスという形式をとりつつ、全体で、一つの物語のプロローグ的な役割を持たせているのだけれど。凄くきれいな構成。まあ、オムニバスなので、各話によって、好き嫌いがあって、例えば、「手紙」「光の帝国」辺りは好きじゃないけど、「二つの茶碗」「オセロ・ゲーム」「黒い塔」「国道を降りて…」なんて、すごく好き。いいよね、こゆの。

[ 2000.10.06 ]


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蒲公英草紙 常野物語 /恩田陸

最高傑作級。切ない王道系のストーリーがめちゃくちゃ泣けます。そして、なんという嫌らしいエピローグだ(^^;。

旧家槙村家の病弱なお嬢様である聡子様と、その病弱な聡子様のお話相手の峰子の優しく切ない話。病弱っ!! 病弱っ!! いかにもな死を感じさせつつ、少女らしい綺麗で光溢れる憧れと恋っ!! 不思議な能力を持つ常野一族というモチーフとは関係なしに、もう、死亡フラグ一直線な聡子様が、哀しく切なくめちゃ泣ける。そんな、ただでさえ泣ける展開の上で、聡子様を慕う峰子を語り部とする演出が、効果覿面に切なさを増加させていて、ほんと素晴らしいなぁん。二十世紀初頭の東北の山村という舞台設定も、なんと嫌らしい。前作の『光の王国』は短編集だったと思うのだけど、この『蒲公英草紙』は長編でありながら、『光の王国』同様の綺麗で切ない物語に仕上がっていて、ほんと良かったです。

[ 2008.07.17 ]


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エンド・ゲーム 常野物語 /恩田陸

緊迫感溢れるジェットコースター展開が凄いっ!! いや、多くの情報を伏せたまま、謎ばかりを膨らませつつ、その上で、目まぐるしく裏表が入れ替わりながら続く展開が、うわぁ、まさに手に汗握る緊迫感っ!! 凄い凄いっ、面白かったっ!!

というわけで、不思議な能力を持つ常野一族を描いたシリーズ第三弾は、優しくも切ない前作とは異なり、緊迫感溢れるスリルとサスペンスっ!! 謎の敵と闘い続けていた拝島親子は、遠い昔に敗れた父に続き、とうとう母も倒れ、女子大生の時子一人が残されて……。という感じで、『光の帝国 常野物語』に収録されている短編「オセロ・ゲーム」で、仕事の出来る優秀な女性として描かれていた母・暎子が倒れたところから始まる本作は、わけがわからないまま、どんでん返しを繰り返しつつ、まさにオセロのように目まぐるしく変わる展開が、ほんとに凄い。作者の恩田陸があとがきで、“この小説はむしろ独立したサスペンス小説として、いろいろ「攻めて」みた小説だ”と述べているのだけど、その言葉が語るように、まさに、手に汗握るサスペンス小説として、非常にエッヂがきいた内容が魅力。ほんとに面白かったっ!!

[ 2009.07.23 ]