ライトノベルとエロの関係
シュナムル氏のTweetを起点として、ここ数日、ラノベとエロについて議論を見かけることが多いです。
- シュナムル尊師、娘を利用してラノベの表紙を叩くの巻 - Togetter
- 実際、ライトノベルの表紙はキモい - Togetter
- 汐街コナ氏の「ラノベの表紙エロすぎ問題について」という記事について - Togetter
- えっちな表紙のラノベがダメだなんて言わないよ! ただ、ちょっと置き方を考えてほしいな…♡ - Togetter
- ライトノベルとエロ、そして表紙イラストについて。 - WINDBIRD
- 「ラノベ表紙のゾーニング」の話をしてる人のうち、何割が実際に本屋に行って現場見た上で意見を述べてますか? - この夜が明けるまであと百万の祈り
- ラノベのエロ表紙を無くす必要がない理由 - い(い)きる。
議論を見ていると、いくつか誤解があるようなので、ライトノベル周辺のゾーニングとエロの歴史についてまとめてみました。次のような話になります。
- ライトノベルは10代後半以降の若者向けで、子供向けではない
- 多くの書店では、すでに子供向けとポルノはゾーニングされて陳列されている
- 若者向け小説における性描写は昔から議論されている問題で、最近になってエロくなったわけではない
ライトノベル周辺のゾーニング
文学作品は性愛つまりエロが主要なテーマである一方、子供向けには教育的側面があるので、比較的ゾーニングはしっかりしています。健全なものだけ読みたいなら、素直に児童文学かYAを読めって話です。一般的な文学作品自体がエロいんですから。
児童文学(YAを含む)
子供向けの小説は児童文学に含まれます。YAを含めると概ね高校生以下がターゲット。PTAも安心の内容でエロシーンが含まれることはありません。大人でも読みごたえがある作品もたくさんあるといわれているので、健全な作品が好きならYAだけで生きていけます。書店でも、その他の書籍とはわけて売られている場合が多いです。
ライトノベル
ライトノベルとは、若者向けのエンターテイメント小説です。最近では、若者だけではなく、30代40代向けのライトノベルも出てきています。子供向けと誤解されがちですが、漫画で言えば青年誌、ゲームで言えば15歳以上推奨のレーティングと同じような位置づけになります。また、文学性よりエンターテイメント性を優先しているため一般文芸と比べれば、エロは少なめになっています。
ジュブナイルポルノ
オタク向けのポルノ小説です。エロ目的の場合はこちらに分類され、一般的な書籍とはわけて陳列されていることが多いです。
「売り場がわかれていても、子供の目につくところに陳列してたら意味ない」というような意見も見かけるのですが、それ、ゾーニングじゃなくて、本屋に置くなという主張になりますよね? ライトノベルのレーティングは青年漫画と同等で、内容は一般文芸ほどエロくないです。さらに厳しくしろということになると、漫画や一般文芸を巻き込んで影響が大きすぎると思うんですが。
ライトノベルとエロの歴史
そもそも、ライトノベル誕生以前から、若者向け小説における性描写は論争になっていました。例えば、1970年には朝日新聞に「少女小説 セックスがいっぱい」という記事が掲載され議論となっていたようです。「文学作品なら性描写は必要」という話の一方、「そうはいってもポルノとして消費されてるだけじゃね?」という話で、当時のジュニア小説は今のライトノベルよりも性的に過激だったようです。知らんけど。
ライトノベルは1970年代に成立したといわれていますが(当時はまだ「ライトノベル」という呼び名はありませんでしたが)、初期のライトノベルを支えた夢枕獏が高校生向けのソノラマ文庫『幻獣少年キマイラ』のあとがきで「SEXシーンにも手を抜かない」と述べています。おそらく児童文学との差別化もあったと思うのですが、エロや暴力シーンにも躊躇がなかったソノラマ文庫は大ヒットし、その文化は、1980年代後半に登場する角川スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫に引き継がれていきます。
1988年に発売された角川スニーカー文庫の『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』は、今でもエロいと話題に上がることが多いです。『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』って、今ではエロラノベの代名詞みたいになってますが、当時、むちゃくちゃ大ヒットしていて、あの頃からラノベを読んでる人なら、絶対、子門真人のアニメOPが歌えるはずです。大ヒットして面白かったからこそ、今でも話題に上がるんですよ。
1990年代に入ると、下品で低俗で安易なエロシーンを導入した あかほりさとる が大ヒットを飛ばし、当時のライトノベル読者の間では、容認派否定派ともに大きな議論を巻き起こしました。特に、『MAZE☆爆熱時空』に変な性癖を刺激された人は多いハズ。原作はほとんど忘れましたが、丹下桜の「オネニーサマ」は今でも思い出します。
2000年代に入っても、豪屋大介の『デビル17』はヒロインのレイプなどの衝撃のシーンがかなりの議論を巻き起こしましたし、それ以降も、『新妹魔王の契約者』『ハイスクールDxD』『魔装学園HxH』などなど、「エロい」と称されるラノベはいくらでも挙げることができます。
ただ、「エロい」という作品は多いのですが、ポルノに類する作品はきちんとジュブナイルポルノとして出版されています。なんやかんやで高校生が「エロい」「エロい」と言ってるようなレベルで、ポルノや一般文芸の性描写に及ぶものではありません。ちなみに、はじめのTweetで問題として挙がった『境界線上のホライゾン』もエロを売りにした作品ではないんですよねー。
まあ、どの時代にも話題になった「エロい」作品は多数あり、それにも関わらず「昔に比べて最近のラノベはエロい」という人がいるとすれば、それは知ったかぶりで話をしているか、嘘をついているかのどちらかです。人として信用に値しません。
[ 2018.09.17 ]