プロペラオペラ


小学館 ガガガ文庫
プロペラオペラ /犬村小六

犬村小六が送る新シリーズ。『とある飛空士シリーズ』を彷彿とさせる空戦モノですよ!! 第一王女イザヤと国賊として皇籍を剥奪されたクロトが、大国ガメリア合衆国に立ち向かうファンタジー戦記。国のために生命を賭けて、絶望的な戦いに身を投じる展開。この一巻から、熱く感動的な展開で、素晴らしい、素晴らしい!!

物語の下敷きになっているのは太平洋戦争で、開戦初期のアメリカと日本を固有名詞を変えつつなぞったような設定なのだけど、ところどころ、現実の固有名詞そのままなのは、どういう演出だ!? ミッドウェイ海戦よろしく、日之雄艦隊の危機的状況からの決死の艦隊戦が熱い!! いや、熱いだけではなく、コメディ多めのラブコメ展開もいいんだよなぁ。自信家で大言壮語なツンデレ気質の主人公って、駆逐艦「井吹」の他の乗組員を含め、とにかくコミカルな雰囲気なのだけど、それが、悲惨な戦争に突き進む物語にいい感じでアクセントになっていて、いい味出してる。おもしろい。

しかし、敵役のカイルは、金を持ってるだけの小物にしか見えなくて、クロノの敵としては、ちょっと物足りないよなぁ。そもそも、軍事で勝っても経済で勝たないと意味がないように思えるのだけど、そこら辺、どうしていくつもりなんだろ?

[ 2019.09.30 ]


小学館 ガガガ文庫
プロペラオペラ2 /犬村小六

決戦! ソロモン海戦、鉄底海峡!!!! それはともかく、イザヤとクロトの自分の気持ちに気づいてない系の恋に未熟な二人の恋愛がくらくらするっ!! 最高っっっ!!

いやー、太平洋戦争を下敷きにした『プロペラオペラ』ですが、今回は、あの激戦に名高いソロモン海戦ですよ、ソロモン海戦っっっ!! 大日本帝国連合艦隊の陣容は、戦艦「大和」「武蔵」「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」「扶桑」「山城」に、空母「瑞鶴」「翔鶴」、重巡「青葉」「加古」「衣笠」「古鷹」、軽巡「阿武隈」、他駆逐艦十六隻。うわっ、この陣容で負けるわけないじゃん。勝ったなガハハっ。対するアメリカ合衆国太平洋艦隊は、戦艦十、空母三、巡洋艦&駆逐艦多数、って、おいっ、アメリカ、前巻で大敗を喫して新造艦投入もまだなのに、この世界でも物量で殴りに来るかっ!! や、この艦隊戦だけでも胸熱なんだけど、さらに、軽巡空艦「飛廉」に載るイザヤが戦うのは、長門級飛行戦艦「ヴェノメナ」、圧倒的に不利な艦格っ!! もう、はじめから計算して組み立てられた軽巡vs長門級戦艦の展開なんだけど、だからこそ、やっぱり熱いっ!! 素晴らしいっ!!

そして、次巻、最新鋭飛行戦艦、竣工。今までは、上官のせいで不利な状況にもかかわらず、駆逐艦や軽巡でジャイアントキリングする展開だったのだけど、ここで戦艦を投入してくるってことは、つまり、次巻からはクロト無双の展開か!? 史実の通り、いまだ、戦艦「大和」、空母「瑞鶴」「翔鶴」も健在だし、もう次巻がめちゃくちゃ楽しみっ!! いつまでも上官に足を引っ張られるようなくだらないハンデ戦ではなく、さっさとクロトには統帥権を握ってもらってガチのアメリカとガチで殴り合う展開が読みたいですっ!!

[ 2020.04.06 ]


小学館 ガガガ文庫
プロペラオペラ3 /犬村小六

うーん、ここら辺でクロト無双がはじまるのかと思ったら、中途半端な苦戦と無駄な犠牲で、ちょっとがっかり。この展開いる? 太平洋戦争を下敷きにした仮想戦記で、何度も物量勝るアメリカ合衆国vs寡兵の大日本帝国連合艦隊を描かれてもワンパターンで飽きてくる。だいたい、仮想戦記の読者は、みんな戦艦大和の大活躍が読みたいんですよ!!<をい

「適正なインフレ率を維持できればいくらでも国債が発行できる」というMMT理論を持ち込んできたのも疑問で、いやー、太平洋戦争当時は史実として、MMT理論を持ち出すまでもなく国債刷りまくってたし、FRBも国債の買い取りとかやってたわけよ。そもそも、当時は国債を発行すればきちんとインフレしてた時代なので、MMT理論はむしろ国債発行の足かせでしかない。……カイル側の自滅のためのフラグなのかもしれないけど、戦時中に国債をガンガン刷ってインフレするのは常識だと思うので、そんな手法を魔法のように話すカイルはアホにしか見えない。あまりにアホすぎて大統領選まで持つとは思えないんだけど、そんな自滅待ったなしの状況で、苦戦するクロトと連合艦隊を描かれてもなー。ここは、クロトは太平洋で無双して、本国ではカイルが自滅するのがセオリーじゃないの? マジがっかりだ。

[ 2021.01.02 ]


小学館 ガガガ文庫
プロペラオペラ4 /犬村小六

最終決戦前のひと時の休息……。たぶん次巻で最終決戦ということで、戦闘なしのラブでコミカルな内容。また中途半端な逆転劇だったら嫌だなぁと思っていたので、この最終決戦を前にした静かな展開は期待以上に良かったっ!! すげー続きが楽しみすぎるっ!! でも、クロトが統帥権を握る前に最終決戦かよっ。上司が足を引っ張るハンデ戦なんか見たくないんだよなぁ。いい加減、100%のクロトが無双する展開がみたいんだけどっ!!

今回は、次巻に向けたタメみたいな話なので、あくまで問題は次巻か。ほんと、次こそは、クロトが無双する展開を期待していますっ!!

[ 2021.07.12 ]


小学館 ガガガ文庫
プロペラオペラ5 /犬村小六

昔、ノベルスでたくさん出てた架空戦記が好きだった頃の感覚を思い出しながら読んでたんだけど、アメリカが工業力にものを言わせて超兵器を出して来たら、出てきたとたん鹵獲されて日本のものになるのがパターンで、しかもそれが空を飛ぶなら、もう、アメリカ本土強襲のお約束のフラグみたいなもんだったんだけど、あれ? あれれ?

軍事だけでなく経済でも、戦時国債ではなくわざわざMMTを持ち出したのも伏線で、クロトがなにか手を打っていてアメリカ経済が崩壊して戦争継続が不可能になる、みたいな展開になるかと思ったらそういうこともなくて、いやいや、ちょっと待て、カイルを叩きのめすんじゃなかったんかいっ、クロトがっ、自分でっ。お前が叩きのめしたのは、カイルではなくキリングだっ!!

通信室のやり取りからあの演説を経て、東京決戦の決着までの一連の展開は、もう、これ以上なく素晴らしいのだけど、でも、クロトさん、ちゃんとカイル失脚の道筋をつけてから退場しようよ。振り返ると、クロトとカイルの因縁の決着はあの通信室ですでに終わっていて、あの素晴らしい東京決戦の見せ場の数々は、あくまで決着がついたあとの物語なんだよなぁ。そう思うと、めちゃくちゃ素晴らしいだけに、素晴らしいだけに、やっぱりちょっともったいないなぁ。

[ 2021.09.11 ]