ライトノベルは中学生ではなくおじさんおばさんの本

ライトノベルは中学生の読み物みたいに言う人がいますが、調べてみると、出版社側が中学生を対象読者に入れることってあまりないです。基本的にターゲットは高校生以上としてる場合が多い。つまり、中学生から見るとライトノベルって「お兄さんお姉さんの読む本」、場合によっては「おじさんおばさんの本」となるわけです。

もちろん、時代やレーベルによって狙うターゲットは異なります。それぞれの年代の代表的なレーベルが、その当時どういう年齢層をターゲットにしてたかをざっくり書くと以下の通り。

  • 1980年代 ソノラマ文庫: 高校生
  • 1990年代 富士見ファンタジア文庫: 小学生高学年~高校生
  • 2000年代 電撃文庫: 高校生、大学生
  • 2010年代 なろう系: 30代以上

電撃文庫は、少なくても2000年代の初めの頃には、高校生や大学生をメインターゲットとしてる旨の記載がみつかります。最近のなろう系、特に四六版などの単行本を扱っているレーベルでは、ターゲットは30代や大人であると謳ってることが多いです。いや、20代社会人をターゲットにしているライト文芸でさえ「高いと買ってくれない」と安い文庫サイズにしてるのに、なろう系は単行本ですよ、単行本。30代だったら主任か課長ぐらいにはなっていて金も持ってるだろうと、余裕で1,000円越えの価格設定。10冊買うと、軽く1万円を超えますよっ。それでもきちんとビジネスとして成功しているので、既存の文庫レーベルまで、次々と文庫よりも単価の高いノベルズや単行本に参入しているのが、最近のライトノベルの状況です。

ただ、1980年代後半から1990年代にかけては、富士見ファンタジア文庫に限らず様々なレーベルが、中学生どころか小学生高学年までターゲットにいれる時代がありました。花井愛子やあかほりさとるの著作でも述べられていますが、戦略的に読書初心者を狙った、漫画のように読める軽い小説が登場し、それにより、読書に興味がなかった高校生だけでなく、中学生や小学生高学年まで広く読まれるようになります。「ライトノベル」という呼び名がパソコン通信「NIFTY-Serve」で生まれたのもちょうどこの頃です。しかし、1990年代後半にはそのブームも落ち着き、そうすると、年々読者の年齢は上昇、それに伴い出版社側も想定するターゲット層を試行錯誤しながら上げていって今に至るという形です。

ちなみに、今、「ライトノベル」と呼ばれているのも、この読者の年齢上昇によるものです。「ライトノベル」という名称が広く定着したのは2000年代前半。それまでは、「ヤングアダルト小説」「ジュブナイル小説」「ジュニア小説」「ティーンズノベル」と主に10代向けの小説を意味する名前で呼ばれていたのですが、読者層の上昇に伴いこれらの10代向けを表す呼び方は廃れ、少しづつ「ライトノベル」という名前を聞く機会が増えていきました。当時いろいろあった呼び方の中で「ライトノベル」だけが唯一年齢層を表さない呼び方だったんですよね。そして、2004年に日経から刊行された『ライトノベル完全読本』がおそらく決定打となって、「ライトノベル」という名称が広く世の中に認知されることになります。

読者の年齢が上昇したので「ライトノベル」と呼ばれるようになったのに、いまだに「ライトノベルは中学生の読み物」という人がいるのは不思議です。それだけ、1990年代前半の『スレイヤーズ』やあかほりさとるが活躍した時代の印象が強いということだと思いますが。

[ 2017.02.01 ]